マネジメント

現在系の質問で人材流出の悩みを未然に防ぐ

2018.06.06

ゲシュタルト療法を活用した経営術

開業医にとって、患者の治療はもちろんのこと、従業員の育成もまた仕事の一つです。しかしながら、採用したものの若手医師と熟練医師の意見が合わずに衝突したり、看護婦や受付スタッフと医師によるスムーズな連携が取れない事態が起きたり、人材育成で頭を抱えられている開業医の先生方も少なくありません。
特にスタッフ同士の世代差があれば、仕事に対する姿勢が大きく異なることが多くなります。早期改善のために従業員に注意をしたとしても、表面上の返答のみで状況が好転しないケースもあるでしょう。人間同士だからやむを得ないと静観していると、対人関係のこじれから大事な人材が他のクリニックや医院に流れる事態を招くこともあります。今回は真の問題解決するための、心理学のゲシュタルト療法の導入方法をご紹介します。
ゲシュタルト療法とは心理学者のフレデリック・パールズの提唱した心理療法であり、過去ではなく「今ここ」にフォーカスを当て、問題解決に努める方法です。ゲシュタルト療法は物事や問題に対して、部分を見るのではなく全体を俯瞰する力を育みます。現時点の自分や物事に焦点を当てることで、どのように世界や現状を認識するのかを自覚でき、部分ではなく統合して捉えられるようになるのです。
具体的に「今ここ」に焦点を当てる方法について、詳しくお伝えします。まず質問系を「今」にします。「なぜ○○な対応をしたのか」「どうして○○しなかったのか」など、注意を促す際の質問は過去形になることが一般的です。しかし、過去形の質問は視野を狭め、「なぜ失敗をしたのか」「何が原因か」と原因追及の姿勢が強くなりすぎると、原因にのみ囚われ、重要な点を見落としかねません。特に上司や経営者からの指導の際に過去形の質問を用いると、強いストレスから逃れるために、納得させられる言い訳を探し出すことばかりに気がいってしまう人もいるでしょう。これでは状況が好転するどころか、悪化の一途をたどります。

先述の質問をゲシュタルト療法に則って言い換えると「○○な対応をしたことに対して、今どう思っているのか」「○○しなかったことを鑑みて、今どう感じるか」となります。このように質問することで、失敗した理由や原因を追及するのではなく、「失敗に対するどのように感じているのか」「今の自分ならどのような行動を取りたいのか」など今現在の考えや思考を確認し、視野を狭めることなく、現時点を見据えて包括的で主体的な回答をすることができるようになるのです。

しかしながら、急に現在に焦点を当てた質問をするのが難しい場合もあることでしょう。その際には、指導時にワークシートを用いるのも有効な手段です。紙に書くことで思考や感情を整理させることができ、自らの考えや今後の方針を明確に見据えることが可能だからです。心理学において思考を紙に書き出す方法は感情筆記法と言い、心の浄化作用や思考の整理に役立つことで知られています。

ワークシートを用いる場合には、過去の出来事に対する今の自分の感情や学びえたこと、今思い浮かぶ今後の対策と優先順位などを項目別に回答させます。自ら気づきを促進するには、白紙を項目ごとに用意し、ブレーンストーミングの要領で書くように指導することを推奨します。今の感情や思考などを瞬間的に良し悪しで判断させずに、紙に書き出させることで自ら洞察し、答えを導いていくのです。

このように、ゲシュタルト療法を取り入れることで、従業員への注意を促す際に、表面的な回答ではなく主体的な考え方や皆瀬円策などを回答する力を育むことに期待できます。人間同士の不調和や意見の衝突において、今ここに焦点を当てて自ら答えを導き出すことで、広い視野で物事を見る力を育み、短絡的な離職を阻止することにも役立つと考えられます。皆様も、過去に囚われず、「今ここ」に焦点を当てるこの方法を試して見られてはいかがでしょうか?

執筆者:DR’S WEALTH MEDIA編集部
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