マネジメント

スタッフの離職率を減らすチャンスとなる、時短勤務制度の導入

2018.03.28

今や医院にとって必須となっている「時短勤務制度」とはどんな制度か

現在の世の中では子育てを積極的に支援しようとする風潮が強まっています。もともと医療機関は、看護師やクラークをはじめ女性のスタッフがたくさん勤務する職場です。歯科医院であれば、歯科衛生士や歯科助手の役割はたいていの場合、女性の手で支えられています。したがって育児しやすい労働環境を整備することは、あらゆる医療機関に共通する課題でしょう。

近年、日本の社会全体で注目を浴びている子育て支援のための制度に「時短勤務」があります。この制度は医療機関においても各地で導入されています。今後どんどん重視されていくことは間違いないでしょう。そこで今回は、このシステムの詳細やメリットについてお伝えしましょう。

時短勤務という仕組みが設けられた背景

「育児休業法」が成立したのは今から約四半世紀前の平成4年のこと。それから3年後に、「育児・介護休業法」に改正されました。この法令はその後、何度も改正を繰り返してきました。最近、一般企業社会で定着しつつある時短勤務の制度についても、育児・介護休業法にきちんと記載されています。

「育児のための短時間勤務制度」が登場したのは平成21年です。当初は従業員数が100人以下の事業所に限り猶予が与えられていたのですが、平成24年7月からすべての事業所で適用されることになりました。この短時間勤務制度は、もちろん医療機関にも適用されます。

短時間勤務制度の概要

3歳未満の子供を育てている職員がいるなら、毎日の勤務時間を短縮することを認めないといけません。具体的な所定勤務時間は、1日あたり6時間と規定されています。職員が時短勤務を希望したときは、医療機関側はその願いを受け入れて、午前9時から午後4時まで勤務したら帰宅できるように配慮しないといけないのです(もっともこれはあくまでも「所定勤務時間」を6時間にする必要があるという意味です。職員が望むなら、6時間より少し長めに働かせてもかまいません)。

また、職員から残業を免除してほしいといった希望があれば、原則として承諾する必要も発生します。

この制度は、女性に限定されているわけではありません。早い話、男性の職員に3歳未満の子供がいるなら、やはり利用を認める必要があります。ただし、女性と男性の違いがゼロというわけではありません。たとえば女性の職員に限り、1歳未満の子供がいるなら30分の育児時間を2度請求してよいことになっています。

短時間勤務制度が認められないケースについて

この制度は基本的に正社員を中心に考えられています。いわゆるパート勤務で勤務時間が6時間以下の場合や、日雇い従業員の場合は適用しなくてかまいません。

また、労使協定を利用するなら入社1年未満の職員や週に1~2日しか勤務しない職員は対象外にすることができます。

そのほか、短時間勤務制度の大事なポイント

短時間勤務制度は、ただ法の定めに従って実行に移すだけではいけません。就業規則の中ではっきりと、どのように時短勤務制度を運用してくのか記載することが要求されているのです。

なお、時短勤務の要望を拒否できないとはいえ、職員がいきなり申し出てきた場合なら承諾する必要はありません。この制度では、ひと月前までに書面を用いて申し出ることを職員に義務付けています。時短勤務をする期間も最初にはっきり決めておくことになっています。したがって医療機関側には、職員の時短勤務に備えて必要な対処をとる時間が与えられるのです。

日看協が熱い視線を送る「短時間正職員制度」は離職率の低下に成功しています

さて、短時間勤務制度と同様にかなりの注目を受けているのが「短時間正職員制度」です。「短時間正社員制度」と表記されることもあります。日本看護協会はこの制度の導入を推奨しながら、結婚や出産を機に退職することが多い看護師の状況を変えようとしています。

短時間正職員制度は短時間勤務制度の強い影響を受けて設けられた制度ですが、違っている点もみられます。たとえばこの制度では、勤務日数や勤務時間を制限しながらも、正社員としての待遇を保証します。

育児のための短時間勤務制度では労働時間が短縮される分、給与や賞与等は控除してよいことになっています。しかし短時間正職員制度では賃金はもちろんのこと、昇進や昇給、社会保険等の内容が制限されることはありません。

時短勤務のシステム導入で、スタッフの離職率が低下することがすでに証明されています

短時間正職員制度は、まだ全国の医療機関に定着しているとはいえません。しかし導入された現場において、はっきりとした成果が確認されています。

日看協が平成24年に発表したレポートによると、短時間正職員制度をはじめとした多様な勤務形態を推進した結果、2008年から3年連続で常勤看護職員の離職率が低下しているのです。2007年の離職率は12.6%でしたが、3年後に11.0%に落ちました。ゆっくりとではありますが、1年ずつ着実に常勤の看護師は職場を辞めようと思わなくなっているのです。

実際に時短勤務を取り入れて、職員の待遇を改善していくには

短時間勤務制度と短時間正職員制度はともに厚生労働省が普及を進めています。特に短時間正職員制度の導入については、厚生労働省は導入をサポートするWebサイト(https://part-tanjikan.mhlw.go.jp/navi/)や資料を準備しておおいに奨励しています。このような媒体を利用して少しずつ情報を集めていくことが大切でしょう。

そして時短勤務制度に関しては、就業規則内での明文化が必須です。その点で見ても、時短勤務制度の整備においては社会保険労務士の手を借りて実施することが妥当でしょう。うまくいけば、いつまでも働いてくれるスタッフを増やすきっかけとなりますので、スタッフの意見もヒアリングした上で、院内の状況にマッチする導入方法を見つけてみてください。

執筆者:DR’S WEALTH MEDIA編集部
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