柳井正に学ぶ「チームの作り方」~部下に責任と自覚を持たせる方法~
2018.01.24
柳井正はなぜ最強のチームを作ることができたのか?Vol.2
今回は部下と信頼関係を築いた後、どのようにすれば部下が仕事に責任と自覚を持てるようになるか、柳井氏流のチームの導き方をお伝えしていきましょう。
仕事はチームプレイ
「仕事はチームプレイ」とはよく言いますが、「チームプレイ」という言葉は、医院経営にも通じるところがあるのではないでしょうか。
診察時や事前の準備を行うスタッフ、会計を行うスタッフ、外部の専門機関職員との連携など、どの役割を担う人も欠かせない存在ですよね。
しかし、それぞれの役割を担う人が違う方向を向いていては、いつまで経っても思うような成長が見込めません。
柳井氏によれば、チーム全体で成果を上げていくため、リーダーは次の2つを果たすべきだといいます。
①このチームは一体どのような成果を目指すのかといった目標の共有
部下たちが、「何のために」この仕事をやっているのかを理解できていなければ、その仕事は「仕事」ではなく、単純な「作業」となります。
このように仕事が「作業」となってしまうと、仕事に対する達成も貢献も分からず、張り合いがなくなってしまいます。
そのため、チームの目標を共有する必要があるのです。
②本当にメンバーが分かるまで、「何度も」「同じことを」「しつこく」繰り返す
例えば、年度始めなどに一度だけ目標を共有したとしても、人間は残念ながら物事を忘れていく生き物です。
その瞬間は「分かった」つもりでも、日々の仕事に終われ、忘れていくというのが現実でしょう。
そのため、経営者には日々の中で「何度も」「同じことを」「しつこく」繰り返していくスタンスが大事になるのです。
部下が責任に対して自覚を持つには?
それでは、①②のことをリーダーが果たしていけば、チームは成果を上げることができるのでしょうか。
答えは「NO」です。繰り返しになりますが、仕事はチームプレイです。
柳井氏も「チームプレイの基本は、メンバー一人ひとりが自分の責任を果たすこと」であると述べています。
それぞれが「これが自分の仕事である」と強く自覚することで、目標を明確に理解し、チームの成果が上がるのです。
しかし中には、なかなか仕事に対する責任と自覚を持ってくれないスタッフもいることでしょう。
そんなスタッフには、どのように自覚を持たせれば良いのでしょうか。ここで柳井氏流の部下に責任を持たせる方法をご紹介しましょう。
1.「この仕事は誰の責任なのか」を明確にし、「一つの責任は一人」とする
自覚を持たないスタッフは、「この職場の全員が知っているから」「ひとつの仕事をチームで行ったから」と、とかく団体に物事の責任を押し付けがちです。
そのため、「この仕事はあなた一人が責任者である」という個人の自覚を持たせることが重要です。
2.仕事を考えさせ、責任の根拠と責任感を自覚させる
個人の自覚を持つためには、その仕事について「自ら考えさせること」が何よりも効果的です。
命令された仕事は「作業」になりがちですが、自ら面白みを感じることができれば、その「作業」は「仕事」となり、自然ともっと上手くやろう、真剣にやろうと責任感が生まれます。
3.仕事を任せて、失敗と学習をさせる。
しかし本人にやる気や責任感が生まれても、その方向性がリーダーの考えているものと違うことは度々起こり得ます。
その時、良かれと思って「これをこうやれば良い」とアドバイスしても、本人からしてみれば、「やはり自分の仕事ではなかったんだ」とモチベーション低下に繋がってしまう恐れがあります。
また、人の仕事だと思ってやった失敗には、「言われた通りにやった」という言い訳の弊害が生まれます。
どうせ失敗するのであれば、本人の考えどおりに任せ、早いうちに失敗と学習をさせた方が効果的なのです。
4.期待していることを伝え、長所を伸ばす
リーダーとして任せたのであれば、本人に「期待している」という気持ちと、任せた仕事の結果に対する正当な評価を行うことが重要です。
良かったのであれば、よくやったという気持ちを、違っているのであれば違う、と伝えることが大切です。
このサイクルを回していくことで、部下が自ら成長し、チームに貢献できるようになるのです。
違いを受け止めることの重要性
そして上記4つの観点で部下に接する際、常に根底に考えておくべきポイントがあります。
それは「人間は一人ひとり違う」という点です。
当たり前のように聞こえますが、これこそが、ユニクロをグローバルブランドに成長させた柳井氏が大切にしている、「多様性のマネジメント」というテーマなのです。
ユニクロは現在、世界各国に店舗を持つまでに成長しています。しかしその背景には、様々な人種・性別・国籍を持つ人材が、「同じ目標に向かっていた」から成し遂げたという事実があったことを忘れてはなりません。
柳井氏は本書の中で、「国籍とか人種とか性別とか年齢とかいう前に、もともと人間は個人個人が全部違っていて、誰ひとり同じ人はいないのです。だからグローバルでなくたって、一つ一つの職場には必ず多様性があるわけで、本当の意味でのこの多様性を理解して、積極的に肯定して、チームを運営しない限り、どこでどのような組織を受け持とうが、成果なんて出ないのです。」と説いています。
日本人である私たちは、あるひとつのことだけが正解であるかのように物事を受け止めてしまいがちですが、変化の時代のリーダーとしては、一人ひとりの個性を認め、包容力を身につけていきたいですね。
さて、2回に分けて柳井氏流の「チームの作り方」をお伝えしてきましたが、いかがでしたでしょうか。ぜひ日々の仕事の中にも、実践として取り入れていただければ幸いです。