最愛の妻を弔うために作られた豪華な墓廟
2017.06.09
【今月の絶景】インド・タージマハル
タージ・マハルが着工したのは1632年。まだこの地域がムガール帝国と呼ばれていた時代、第5代皇帝シャー・ジャハーンが、最愛の妻ムムタージ・マハルの死を悼んで建てました。つまり、宮殿のように見えるタージ・マハルは、墓廟なのです。建築には22年もの歳月が費やされ、完成したのは1653年。設計や建物の細工には一流の建築家・工芸家が呼び寄せられました。また、完成に至るまでには常時2万人の労働者が携わるなど、莫大な費用がかかり、それはムガール帝国の財政をひっ迫するほどだったとか。
そんなタージ・マハルですが、実際にその姿を見にした時に圧倒されるのが左右対称に作られた優美な姿でしょう。建物だけでなく、庭も緻密な計算の下、完璧な対称性を維持しています。その中で唯一、左右異なる場所とされているのが棺の安置室。皇帝と妻の棺が並べておいてあるためですが、これは2人の深い愛を表すものと言えるでしょう。
大理石で造られた建物は、遠くから見ると白一色のようですが、実は壁に素晴らしい細工が施されています。黒大理石で作られた、イスラム教の経典・コーランが文様化されてはめ込まれ、さらに中国やスリランカ、アラビアなど世界中から集められた、28種類の宝石や鉱石も使われています。
広大な敷地に、妻への愛情をこめて造られたタージ・マハル。皇帝はこの対岸に、自分の墓廟を黒大理石で建設したいと願っていましたが、財政難と後継者争いに巻き込まれ、叶えることができなかったということです。
早朝には朝日に輝く姿が、そして満月の夜には月明かりに照らされた神秘的な様子が見られるタージ・マハル。インドを訪れる機会があれば、その圧巻の美しさをぜひ目に焼き付けたいものです。
■ タージ・マハル
http://www.tajmahal.gov.in/index.html