INTERVIEW

最高の手打ちそばを気軽に食せる店を目指す

2018.12.12

そば処「湧水」二代目 児玉 友輔氏インタビュー

江戸時代より湧き水が豊富だったこともあり、そばで有名な東京都調布市の深大寺周辺。
現在、20店舗以上が軒を連ねる“そば処激戦区”である同エリアにおいて、
1994年開業と比較的歴史の浅い店ながら繁盛期には1日1000杯ものそばを売る人気店が「湧水」だ。
若き2代目である児玉友輔氏に、跡継ぎとしての心構えや今後の展望を聞いた。
 
【プロフィール】
●児玉 友輔 (こだま ゆうすけ)
1978年11月10日生まれ、東京都世田谷区出身。
東京の大学を卒業後、会社員として営業職に就く。1年後、調理師専門学校に入学。
25歳で父親の経営する「湧水」の社員に。2007年に父親の体調不良を機に、29歳にして二代目となる。
深大寺のそば組合にも積極的に参加し、イベントや祭りなどで地域の活性化を目指している。
 

アルバイトから社員、そして二代目へ

-「湧水」の創業の成り立ちをお教えください。

児玉友輔氏(以下、児玉):私が高校生のときに、父親が脱サラして始めたことがきっかけです。
もともと、祖母が深大寺で『深水庵』というそば処を経営していましたので、そこの暖簾分けという形でした。
ちなみに『深水庵』は今、私の叔父が継いでいます。
 

-お父様が脱サラしてそば処を始められたときは、どのように感じられましたか?

児玉:私は祖母のお店を小さいころから手伝っていましたので、昔から生活の中におそばがあるという感じでした。
ですので、父親がこの店を始めたときも、さほど驚かなかったですね。
それよりも、大学受験などを控えている時期でしたので『将来的に継がないといけないのかなぁ…』みたいな、現実的なことを考えていました。
 

-大学ご卒業後は、どのような進路に?

児玉:1年間ほど会社勤めを経験しました。その後、調理師の専門学校に入学したんです。
就職も専門学校も、父親からのアドバイスがきっかけです。一度就職し、外の世界を見たほうがいいということと、父親自身が調理師免許もなく、料理への知識が乏しかったことで苦労したので、同じ思いを私にはさせたくなかったのでしょうね。
結局、私が25歳のときに『湧水』に社員として入ったんです。
 

-親子の関係から、上司・部下、そば打ちに関しては師匠・弟子の関係へと変わりましたが、心境の変化はありましたか?

児玉:高校生のころから『湧水』でアルバイトをしていましたので、親と一緒に働くということへの抵抗はあまり感じずにすっとその環境に入れました。
当時から年末年始の繁盛期は、私も社員と変わらない働きをしていましたし、まだまだオープンから間もない時期でしたので、働きながら感じたことを指摘したりといったこともやっていました。
アルバイトから社員、そして2007年に跡を継いで二代目となりましたが、いろんな目線でお店の成長を見てこられたことはうれしいです。
 

-若くして跡を継がれましたが、プレッシャーなどはあったのでしょうか?

児玉:そのころ、父親の体調が芳しくなく、二代目になるということが急展開で決まりました。正直、プレッシャーを感じる余裕もなかったですね(笑)。
『やらなければ!』という思いで、がむしゃらにそば打ちとお店経営に向き合いました。
幸い、私は昔からおそばも接客も大好きだったので、常に前向きに考えることができたのかもしれません。
もちろん、父親と経営のことなどでぶつかることもありましたが、後で振り返ると、私が突っ走って周りが見えていない状況をたしなめてくれていたのだと気付きました。ありがたかったですね。
 

歴史の浅い店だからこそフットワーク軽く動く

-そば処の激戦区・深大寺エリアで営業されていますが、他店との差別化に関してこだわっていらっしゃることはありますか?

児玉:以前から”お客様のニーズに応える”ということを大事にしています。深大寺は観光地ですので常に人は多く訪れます。
ありがたいことに『湧水』にも多くの方に来ていただけていますが、その方たちにいかにリピーターになってもらえるかというのが重要だと思い、父親の代からポイントカードを発行したり、ホームページもいち早く作ってクーポンサービスを行ったりと試行錯誤してきました。
また、うちは他店と比べても圧倒的にメニュー数とお酒の種類が多いのが特徴です。
お客様に『あそこに行けば、いろいろなものが食べられるし、飲める』という印象を持っていただけるように努力を重ねています。
うちは”歴史”では他店と勝負しても勝てませんが、その分、いろいろなことが試せるフットワークの軽さ、今から伝統を作っていくんだという気構えは、負けていないつもりです。
 

-お父様の時代からの常連様たちは、児玉さんが継がれてからどのようにおっしゃっていますか?

児玉:昔からの常連様から『良くなった』と言われることもありますし、その逆もあります。おそばは好みが分かれる食べ物ですので難しいですね。
私は”味を引き継ぐ”ということは大事だと思っていますので、極力常連様たちの声には耳を傾けるようにしてきました。
しかし、当時と今とでは流通のシステムや情報量も違いますから、自分で調べて食材など良いものはどんどん取り入れていくというスタイルを徹底しています。
時代が変わればお客様も変わる。それを見極めて変化していかないと取り残されてしまいますから。
 

-今後の夢や展望をお聞かせください。

児玉:いつもそこにあり、当たり前のように最高の手打ちそばが気軽に食べられるお店というのが理想です。
私は、車や熱帯魚など多趣味なのですが、中でも気心の知れた仲間と食べて、飲んでという時間を大切にしています。
その過程で、『このお酒は美味しいのでうちでも扱いたい』『こんな料理を酒の肴として提供したい』と、たくさんの気付きを得られています。
要するに、趣味で得たことをお店に戻しているだけなんですよ(笑)。本当に恵まれた環境だと思います。その積み重ねで、理想像に近付ければうれしいですね。
また、中学二年の長男が『店を継ぎたい』と言ってくれています。”来ていただいたお客様を決して裏切らず、満足して帰ってもらう”ということを日々繰り返し、いずれいい状態で息子に引き継げればと思っています。
 

そば処 湧水(ゆうすい)
http://www.yusui.co.jp/

住所:東京都調布市深大寺元町5-9-1
電話:042-498-1323
時間:3月~11月 10:30~18:00(土日 ~19:00)
   12月~2月 10:30~17:00(土日 ~18:00)
   (前後あり。年末年始は変更あり)
休み:木曜