ファイナンス

長期にわたり富を蓄えるもっともシンプルで効果的な投資戦略

2019.06.09

投資のバイブル「インデックス投資は勝者のゲーム」

本書は世界最大級の投資信託会社バンガード・グループの創業者であり、インデックス運用のパイオニア的存在であるジョン・C・ボーグル氏が、長期間に亘り富を蓄積する最もシンプルで効果的な投資手法を解説したものです。ボーグル氏の提唱する投資戦略は、世界の三大投資家の一人であるウォーレン・バフェット氏にも支持されています。本書は2007年に初版が出版されて以降、既に第10版を重ね世界的なベストセラー書籍であり、資産形成を図る医師の先生方にとっても実践できる手法が数多く詰まった投資のバイブルになるといえるでしょう。

ローコストのインデックスファンドを保有し続ける

まず本書のハイライトであるボーグル氏の投資戦略をお伝えすると、株式や債券市場において全ての銘柄を有するインデックスファンドを極めて低いコストで保有するという非常にシンプルなコンセプトです。極めて低いコストとは、最小限の費用で運用され、投資顧問料もかからず、なおかつファンドで保有する証券の売買を頻繁に行わないことで高い節税効果を発揮するものを指します。

このシンプルな投資戦略が最も効果的であることを実証するデータとして、2001年から2016年までの間に、運用成績を比較する際に用いる代表的な指標であるS&P500に負けたアクティブ運用の株式投資信託の割合を示したものがあります。結果は、成長型や割安型など様々な投資戦略に応じて分類されたアクティブ運用ファンドにおいて、全体平均で実に90%の投資信託がS&P500のリターンを下回っており、インデックスファンドの圧倒的優位性が証明されています。また同様の期間において、S&P500に負けたアクティブ運用の債券投資信託の割合も示されており、こちらは米国債もしくは投資適格社債で分類した短期・中期・長期の債券投資信託の全体平均で85%がS&Pがあげたリターンを下回る結果となっています。つまり株式投資信託同様に債券タイプの投資信託も、広範にわたる分散、低いコスト、規律あるポートフォリオ運用、節税効果のある投資信託こそ投資家にリターンを十分なもたらすことが証明されています。更にバンガードが開発したバランス型インデックスファンド(株式に60%、債券へ40%分散投資する投資信託)に関しても、主に信託報酬の低さがリターンの違いを生み出しており、バランス型投信の運用成績を上回る結果が示されています。

勝者のゲームを敗者のゲームにしてしまう理由

一方でボーグル氏は、アクティブファンドのように、売買が増えるほど金融機関に支払うコストや税金が膨れ上がることで、投資家が最終的に手にするリターンは大きく減少するとも警告しています。つまり、ファンドの購入時手数料や信託報酬、ファンドで保有する証券の入れ替えにかかる費用、証券会社に支払う手数料、広告費、運営コスト、弁護士費用など、これら全てのコストを長年にわたり負担すると十分なリターンを得られないと説いています。

また、ほとんどのファンドの専門家や投資顧問業者、そして投資家自身も注目する過去の運用成績だけに基づいたファンド選択は有効な手法ではないとしています。過去の運用実績から分かることは過去に起きたことで、将来を保証するものではなく、投資信託を保有するコストに焦点を当てるべきであるとのことです。つまり、ファンドの信託報酬と購入時手数料、ファンドに含まれる証券を売買するコストが、投資信託のリターンに差が生じる大きな要因であると強調しています。

更に優れたアクティブ運用ファンドだけを選択することの難しさも伝えています。投資信託の長期的リターンを示す1970年から2016年までの46年間にわたるデータを検証し、1970年当時組成された355本の株式投資信託のうち281本が償還ないし他の投資信託に合併されているとのことです。つまり80%の投資信託が破綻し、比較対象となるS&P500を2%上回った投資信託はたった2本という結果でした。また、典型的な投資信託は25年の間に運用を担うファンドマネージャーが3回は入れ替わる可能性があり、仮に市場よりも高いリターンを短期的にもたらしていたとしても、その継続性に対しては懐疑的になるべきだと主張しています。そのため、枯草の山で針を探すようなことはせず、もっとシンプルな投資戦略として、コストの低いインデックスファンドを保有し続けることを推奨しています。

NISAやiDeCoをローコストなインデックスファンドで運用を

なお、ボーグル氏の投資戦略を支持するウォーレン・バフェット氏は、遺言状で信託財産の90%をコストが非常に低いS&P500インデックスファンドに投資するよう信託管理人に指示していると、ボーグル氏は紹介しています。また本書の締めくくりとして、投資信託で運用を試みる際、長期的にはコストを最小化させることが大切であり、市場に打ち勝つことや市場のタイミングを上手く計ることは多くの者にとっては有効ではないと、ボーグル氏は説いています。医師の先生方も、つみたてNISAやiDeCoなど長期間にわたる投資を実践する際には、ローコストのインデックスファンドへの投資を検討されてみてはいかがでしょうか。

執筆者:DR’S WEALTH MEDIA編集部
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