まずはコレから!最低限行っておきたい確定申告の準備
2019.01.18
若手医師のための確定申告入門 vol.2
インターネット上にも既に多くの解説記事がありますが、多くは実際に確定申告作業を行うための記事のようです。この記事では、確定申告作業のずっと前、新たにお仕事を始めたばかりの方に、最低限これだけは知っておいていただきたいことをお知らせします。
この記事に書いてあることさえ行っていただければ、確定申告作業を税理士にすべてお願いすることも可能です。どんなにお忙しくても、ぜひこの作業だけは忘れないでください。
1 事業用の銀行口座を作成しよう!
新たに事業を始めるにあたり、ぜひとも専用の銀行口座を開設しましょう。可能であれば、事業用のクレジットカードも新たに申し込んでおくと大変便利です。
専用の銀行口座やクレジットカードと言っても、巷で言われる「事業用サービス」でなくてもかまいません。個人向けの銀行口座やクレジットカードをもうひとつ準備し、事業(確定申告が必要なもの)に関係する入出金や支払いをそちらで行えば十分です。
事業が軌道に乗ってから準備すれば十分ではないかとおっしゃる先生がいらっしゃいますが、ぜひ最初から準備されることをお勧めします。事業を始めたばかりの頃は経理処理にも不慣れであるため、ついヌケ・モレが生じてしまうことが多いからです。また、領収書や請求書などを保管していたつもりでも、つい紛失してしまったというお話もよくお聞きします。
そのようなときに、すべての入出金は事業用の銀行口座を経由するということさえ守っていれば、銀行預金の入出金履歴と会計帳簿を付け合わせることでヌケ・モレを防止することができ、万一書類を紛失してしまっていたとしても原因を調べることが可能になります。
2 領収書の保管と整理を忘れずに!
当然のことではありますが、領収書の保管と整理を忘れないようにしましょう。領収書の保管については皆様きちんと行っていただいているようですが、整理までは手がまわっていないという先生も見受けられます。
整理といっても難しいことではありません。A5やB5のコピー用紙を準備して領収書を貼り付け、日付順にファイルに閉じておくだけです。その際、数年後に見直したとしても使途がわかるようにメモを残しておきましょう。
例えば、「〜という場所で〜についての講演会の際、講演会担当者~氏と会食」のように記載すれば、誰がどう見ても内容を把握することができます。つい忙しくて数ヶ月後に経理処理を行うことになってしまった場合はもちろん、どうしても経理処理には手が回らずに税理士に外注をする際や税務調査の際にはとても役立つ情報となります。
特に、急遽税理士に外注することとなった際、領収書があったとしてもどのような理由で何に使ったのか理解できなければ税理士は対応することができず、逐一内容を先生に確認しなければならなくなります。忙しい中で、その対応は困難となることも多いため、経費を使った際の一手間を惜しまないようにしましょう。
なお、領収書を受け取ることを失念してしまったり、紛失してしまったりした場合には経費として処理することができないと思われている先生がいらっしゃるようですが、そんなことはありません。「いつ、どのような相手に、どのような理由で、いくら支払ったのか」きちんと記録されていれば、経費として処理することができます。万一領収書を受け取ることを忘れてしまった場合には、上記の内容をメモして領収書代わりとし、領収書の綴りに挟んでおきましょう。
会計処理を行ったり外注したりするためには、領収書の他にも最低限以下のものを保管しておきましょう。
<受け取った領収書>
その支払いに関する請求書・見積書が発行されている場合には、領収書と一緒にホチキス留めし、領収書の日付順にファイリングしておきましょう。特に年末年始近くに支払った費用の会計処理には請求書の日付が重要です。また、請求書・見積書に詳しいサービス内容が記載されていることもありますから、セットにして保管しておきましょう。
<発行した請求書>
入金された日付を忘れずにメモし、発行した見積書があれば一緒にホチキス留めし、入金された日付順にファイリングしておきましょう。受け取った収益についても、年末年始近くに請求した場合には請求書の日付が会計処理上重要です。
<事業用の銀行口座の取引履歴・クレジットカードの明細書>
WEB上で参照できるからと安心してはいけません。一定期間経過後は確認できなくなることがありますから、定期的に保存・印刷しておきましょう。
以前は文具店などで販売されている領収書の冊子を利用するのが当然でしたので、その冊子を別途保管しておくようにお勧めしていました。しかし、最近ではテンプレートを利用してPCで印刷する方も増えています。その場合には、2部印刷して1部を控えとし、発行した請求書と一緒に保管しておくと良いでしょう。
また、水道光熱費や家賃、携帯電話代やインターネット代などの通信費についても経費として計上できる可能性がありますから、いつ、どれほどの金額を支払ったのか整理しておくと良いでしょう。
3 節税商品に要注意
事業を営みはじめると、節税に効果があると謳う様々な金融商品が目につきます。また、医師の先生方は高収入というイメージが強いことから、節税商品を扱う営業マンが訪問してくることと思います。
その商品の内容を気に入って購入するなら良いのですが、税負担の軽減のみを目的としてそのような商品を購入することは、事業を営み始めた時点ではお勧めできません。
それらの商品の多くは支払った費用を経費とできることを前提としていますが、営んでいる事業の内容によってはそれらの商品は事業との関連性が薄く、経費とすることができない可能性があります。そうなってしまった場合、多くの節税商品を購入することでかえって損をしてしまうこととなった事例も多く存在しますので注意が必要です。また、それらの商品の多くは特定の場合にのみ効果を発揮することが多いため、事業の経理内容や将来の見通しを慎重に検討してから導入したほうが良いでしょう。事業の状態が安定し、税理士と顧問契約を結んだ頃に、税理士と相談の上で検討しても遅くありません。
まとめ
今回の記事では、インターネット上に既に多く存在している確定申告の手引きではなく、いわば確定申告の準備の手引きとなるような情報をご紹介しました。
医師の先生方は一般のサラリーマンと異なり、金銭的には余裕がある分、時間的な余裕がない方が多く、最初は税金の申告もご自身で行おうと思っていても、いざお仕事を始めてみたら本来の業務以外のお仕事を手がけるだけで精一杯、税務申告は税理士に当面任せたいというケースもあることと思います。
お忙しい中でも、今回ご紹介した最低限の準備を行うようにしていただければ、申告前にご自身で処理する際にはもちろん、税理士に申告を外注する際にもスムーズに処理を行うことができ、お手を煩わせるのは最小限となるはずです。
先生方の事業のご発展をお祈りしております。