相続税率が引上げに。今後は贈与を使った節税が活発になる!?
2014.11.04
富裕層が贈与を利用した相続税対策をするには
何も対策を講じなければ、財産の半分以上を相続税として、徴収されかねない状況というわけです。では、どの程度の増税になるのかを見てみましょう。
相続税率の引き上げでどの程度の増税になるのか
相続財産の総額が5億円で法定相続人が子ども2人の場合、現在の相続税額は1億3,800万円ですが、15年1月以降は1億5,210万円となります。
前回解説した基礎控除の縮小と税率アップにより、1,410万円の増税になる計算です。今後はますます納税資金の確保と節税対策が必要になります。
相続税が上がる一方で、贈与税は引き下げに
一方で、贈与税の税率も15年1月から変わります。20歳以上の人が父母や祖父母から贈与を受けた場合、通常の贈与と比べて低い税率が適用されるようになるのです。
相続税の税率を引き上げる一方で贈与税の税率を引き下げ、できるだけ早く財産を次世代に移転させようというのが政府の目論見。今後、贈与を利用した節税がさらに活発化する可能性は高いといえます。
現在でも、贈与を利用した節税は比較的簡単な節税法としてよく利用されています。贈与税の基礎控除を利用した方法が定番です。
贈与を利用した富裕層の相続税対策
贈与税を計算する際には、贈与した金額から110万円を差し引くことができます。これが基礎控除。つまり、年間110万円以下の贈与であれば、贈与税はかからないわけです。これを利用して、毎年コツコツ贈与をすれば無税で財産を子どもや孫に継がせることができます。
しかし、毎年110万円以下という縛りがあるため効果には限界があります。特に医師のみなさまなどの富裕層にとっては、大きな効果は期待できません。実は富裕層の場合、110万円の基礎控除にこだわらず、贈与税を支払ってでも、毎年400万円、500万円を贈与したほうが有利なケースが多いのです。
なぜなら400万円の贈与の税率は15%、500万円なら20%で済むからです(税率は15年以降で基礎控除後、20歳以上の人が父母や祖父母から贈与を受けた場合)。
相続時にこれより高い税率が適用される場合には、生前に贈与をしておいたほうが有利となります。10年続ければ4,000万円~5,000万円の相続財産を有利に移転することができるので効果は大きいのです。
どの程度の贈与が最も効果的なのかは相続財産の額によって異なるので、専門家に相談することをおすすめします。
次回は、相続税の額を大きく左右する自宅の相続について解説します。
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