庶民も相続税の対象に?だが、影響が大きいのは富裕層
2014.10.28
富裕層に影響の大きい相続税の基礎控除の縮小
今回の改正の目玉は基礎控除の縮小。基礎控除とは、相続税を計算する際に相続財産から差し引くことができる金額。つまり、相続財産が基礎控除の範囲内であれば、相続税はかからないわけです。この基礎控除が4割の引き下げになるため、相続税の課税対象が一気に増加するといわれています。
基礎控除の額は法定相続人の数によって決まっています。改正前と後の計算式は以下。
●改正前(2014年12月末まで)の基礎控除
5,000万円+(1,000万円×法定相続人の数)
●改正後(2015年1月から)の基礎控除
3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
仮に法定相続人が配偶者と子ども2人の場合、現在は
「5,000万円+(3×1,000万円)=8,000万円」
となり、相続財産が8,000万円以下であれば、相続税はかかりません。
では、15年1月以降はどうでしょうか。
「3,000万円+(3×600万円)=4,800万円」
となり、相続財産が4,800万円を超えると、相続税がかかります。
確かに相続税のハードルが下がり、都市部に一戸建ての自宅を持っているだけでも課税対象になるケースが増えそうですが、負担はそれほど重くはありません。
たとえば相続財産の総額が5,000万円で法定相続人が子ども2人の場合、現在では基礎控除の範囲内なので、相続税はかかりませんが、15年1月以降は80万円の相続税がかかることになります。負担増には違いありませんが、相続した金融資産の中から十分に支払える額だと思います。
ところが、同じ条件で相続財産の総額が3億円になると、現在の税額は5,800万円ですが、15年1月以降は6,920万円となります。実に1,120万円の増税です。つまり基礎控除の縮小は、富裕層ほど影響が大きいということになります。
次回は富裕層にとってさらに影響が大きい、相続税の税率の引上げについて解説します。
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