ファイナンス

先人に学ぶ投資の哲学〜初志を貫く強さ、時代を見抜く鋭さ、必要な変化への柔軟さ〜

資産を守るための哲学を身につける本

2017.11.27

資産を守るための哲学を身につける本 『LIFE SHIFT』『ロックフェラー お金の教え』ほか

少子高齢化が進み、労働力や生産性の観点から、経済成長に大きな疑問符がつく現代。これからの世の中をどう生き、働き、いかに貴重な資産を維持するかは難しい問題です。その指針となる哲学が求められています。先人の生き方や哲学に学ぶため、そのエッセンスがつまった書籍を紹介しましょう。

■『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)——100年時代の人生戦略』

(リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット著、東洋経済新報社、2016年11月3日)

原書の副題に「長寿化時代の生き方と働き方(Living and Working in an Age of Longevity)」とあるように、2007年に日本で生まれた子どもの半分は107年以上生きることが予想される未来において、どのように生きるか、どう変わっていくのかなど、100年ライフに臨むために必要な心構えを学ぶことのできる一冊です。

100年生きる時代では、「教育→仕事→引退」というステージの移行時期が一律に決まっている3ステージの一斉行進型の生き方から脱却し、複数のキャリアを持ったり、余暇の時間の多くを消費ではなく投資に使い、移行期間を設けるための蓄えを準備したりと、年齢とステージが一致しないマルチステージを前提として人生設計と時間の使い方を根本的に見直す必要があると著者たちは提唱しています。

今までも、グローバル化やIT化などが私たちの人生に変化をもたらしてきたように、長寿化も私たちの生き方に大きな変化を生むと予測されています。長く生きる時代では、これまでより長い年数働く必要が出てきます。前述の3ステージの人生を前提とした年金制度等の継続も困難に直面するでしょう。70代、80代まで働く世の中になれば、何歳になっても新しい知識とスキルを身につけるための投資が必要となるでしょう。

これらは、これから起こるであろう変化の極一部にすぎませんが、本書は、平均寿命の上昇が進んでいる今、世の中に何が起こっているかを知り、今後起こるであろう変化を予期して行動するために、何ができるのか考えるきっかけとなるでしょう。

長寿化の恩恵を受け、自らの望む人生を築いていくためには、早い段階から貯蓄と投資を始めて、金融リテラシーを高めていくことが必要なのです。

■『ロックフェラー お金の教え——成功と幸福と豊かさへの道』

(ジョン・D・ロックフェラー著、中島早苗訳、サンマーク出版、2016年6月15日)

お金やビジネスに関するジョン・D・ロックフェラーの言葉を集めた一冊です。数回読んだだけでは、どれもありきたりな教訓としか思えないかもしれません。しかし、彼の自伝Random Reminiscences of Men and Events(邦訳未刊)やロン・チャーナウの伝記『タイタン——ロックフェラー帝国を創った男(上・下)』(日経BP社)を併せて読めば、彼の言葉がにわかに輝きを持つことでしょう。

「私は小銭を残す大切さを学んだ。(中略)お金とは貯めて管理するものなのだ」「投入できる資金を可能な限り広く分配し、最も賢く使う事がいかに大事かを忘れてはならない」「秩序ある暮らしには倹約が欠かせない」「必要に迫られたときではなく、貯められるときに、貯めなさい」

これらの教えはすべて、著者自身の経験に裏打ちされています。

■『私の財産告白』『人生計画の立て方』

(本多静六、実業之日本社、2013年5月25日)
なお『私の生活流儀』を加えた内容を再編集して一冊にまとめた『人生と財産——私の財産告白』(日本経営合理化協会出版局、2000年1月1日)もあります。

日本の「公園の父」と言われる本多静六は、日本を代表する大富豪です。しかし、生まれながら裕福であったわけではなく、貧乏な大学教授であった彼がいかにして巨万の富を築いたのか、「本多式四分の一貯金法」、「二割利食い、十割益半分手放し」という株式投資法「人生即努力・努力即幸福」という人生哲学が『私の財産告白』につづられています。渋沢栄一や安田善次郎らの助言者でもあった本多の節倹と貯蓄の哲学、それを貫く彼の生き方には、学ぶところ大と言えましょう。

ロックフェラーが医学研究所の設立などフィランソロピー活動に熱心だったように、本多もまた、慈善活動や社会貢献活動に積極的に投資し、退職時には財産の大半を匿名で教育等の公共事業に寄付したといわれています。それも本多の『人生計画』の一環でしたが、彼に見習うべきは、老いてなお人生計画を立て直す必要性に気づき、それを実行に移す柔軟さを失わなかった点です。ちなみに彼の人生計画も、3ステージではなく、「教練期」「勤労期」「奉仕期」「楽老期」の4ステージからなっていました。

■過去のロールモデルには捨てるべきところと生かすべきところがある

『ライフ・シフト』の著者たちは、過去のロールモデルを捨てよと言います。それが長寿化社会を生きるうえで足かせとなるからでしょう。

しかし過去のモデルにもくみ取るべきものがあるはずです。事実、伝統的価値観とのバランスが大事なことは著者たちも認めています。ロックフェラーと本多が語る「倹約」と「貯蓄」の哲学は、時代を貫いて通用する資産管理の要諦です。

初志を貫く強さ、時代を見抜く鋭さ、必要な変化への柔軟さ。これらは、「100年ライフ」を堅実かつ快活に生きていくための叡智にほかなりません。

執筆者:DR’S WEALTH MEDIA編集部
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