マネジメント

スタッフの家族にまで細やかに配慮する優しさが、強さにつながる

2015.02.11

連載:星野監督に学ぶチーム運営 Vol.1

中日、阪神、楽天。プロ野球3球団の指揮官として、すべての球団でリーグ優勝を果たし、楽天では日本一を達成。東日本大震災で傷ついた東北の地に明るい光をもたらした名将、星野監督。彼が率いたチームは、いずれも固い結束力で結ばれていました。それは “チームマネジメント” という言葉が安っぽく感じてしまうほど、熱いものでした。

星野監督は、時には選手に厳しく接することもありましたが、チームに貢献した選手を思い切り抱きしめる姿をファンは何度も見てきました。その時の、子どものよう喜ぶ選手の表情が、監督と選手との関係を物語っていたのです。

『思いが強ければ強いほど、勝利に近づいていく。オレは優勝して、選手を泣かせてやりたいんだ』

『まだまだ被災者のみなさん、ご苦労をなさっています。(この日本一で)ほんの少しでも、雀の涙ほどでもいいから、癒してあげたいといつも考えていました』

これらの言葉に込められた想いが、星野監督のすべてではないでしょうか。まっすぐで熱いプロとしての自覚と、人に対する激しいほどの優しさは、それぞれのチームを退任した際、教え子である選手や大勢のファンが流した、感謝と寂しさの涙となって表れました。

チームマネジメントに必用なのは “知識” や “テクニック” ではありません。阪神の監督に就任したとき、星野監督はこう言っています。

『自分ひとりでは何もできないことは自覚している』

だからこそ星野監督は、一人ひとりをとても大切にしました。選手やコーチだけではありません。ときには球場整備を行う大勢のスタッフを食事に誘い、一人ひとりにねぎらいの言葉をかけました。そしてスポーツ紙の取材の際には、『球場を整備してくれるスタッフのおかげで今日も試合ができる。ありがたいことだ』とコメントしています。また、選手や球団スタッフの奥さんの誕生日には監督から花束が届き、『私はいつも○○さん(選手・スタッフ)に支えられていますが、その○○さんの支えはご家族です。感謝しております』といったメッセージカードが添えられていたそうです。

鉄拳制裁と批判されることもありましたが、こうした細かな気づかいと大きな優しさが選手、スタッフ、そのご家族までをも巻き込んだ一体感を生み出し、結果としてリーグ優勝、日本一へとつながったのではないでしょうか。

『自分のためだけじゃなく、誰かのために。誰でもいい、嫁さんでも、子どもでも。誰かのためにと思えば勇気も出るし、前に進める!』

選手や球団関係者だけではなく、ファンも大切にし、ファンが好きだとストレートに伝えました。阪神を退団する際、星野監督は自費で新聞に全面広告を掲載しました。

~ライトスタンドにノーベル賞を~

(ライトスタンドとは、甲子園で熱狂的な阪神ファンが陣取るライト側、つまり1塁側の外野スタンドのことで、この場合は “阪神ファン” と置きかえれば、自ずと星野監督の人柄もわかることでしょう)

こんな方だからこそ、どこのチームに行っても愛されたのでしょう。そして星野監督が言っているのは、「スタッフの存在に感謝し、大切さを認めること。それがなければチームをつくることさえできない」ということなのではないでしょうか。

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【連載:星野監督に学ぶチーム運営 Vol.1】スタッフの家族にまで細やかに配慮する優しさが、強さにつながる

執筆者:DR’S WEALTH MEDIA編集部
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