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申請が必須~漏れなく減免を受けるために、まずは確認を!~

2019.07.27

見落としていませんか?保険医療機関に対する固定資産税の減免制度

医師や歯科医師が診療のために使用する固定資産については、原則として固定資産税の課税対象となります。自己が所有する建物で開業している医師の場合、診療に係る経費に加え、固定資産税を支払われている方が多く、現在はテナントビル等の賃貸物件で開業されている場合であっても、将来的な診療用の物件購入を見据え、固定資産税の負担を懸念されている方もいらっしゃるでしょう。
この固定資産税の一部税額について、病院又は診療所が所在する自治体によっては、減免を受けられる場合があることをご存知でしょうか。
今回は、固定資産税の概要と保険医療機関に関する減免制度について、具体例を交えながら解説します。

固定資産税の概要

まずは固定資産税の概要について簡単に確認しましょう。固定資産税は、毎年1月1日に、固定資産(土地・家屋・償却資産)を所有している人が、その固定資産の価格を基に算定された税額を、その固定資産の所在する市町村(東京都23区の場合は東京都)に納める税金です。

税率は1.4%(標準税率)であり、固定資産の価格が免税点(土地:30万円、家屋:20万円、償却資産:150万円)以下の場合は免税されます。税額は、「課税標準額×税率=税額」という計算式で算定されますが、災害や公益など何らかの事由により軽減措置が適用される場合には、この計算式による算定より税額が下がります。

固定資産税の減免制度

法律上、税負担を軽減する措置としては「非課税」「課税免除」「課税標準の特例」「減額」「減免」がありますが、このうち「固定資産税の減免」については、地方税法に以下のとおり規定されています。

地方税法(昭和25年法律第226号)
第367条 市町村長は、天災その他特別の事情がある場合において固定資産税の減免を必要とすると認める者、貧困に因り生活のため公私の扶助を受ける者その他特別の事情がある者に限り、当該市町村の条例の定めるところにより、固定資産税を減免することができる。

すなわち、固定資産税の減免を行うか否か、どのような場合を対象とするかは、各自治体の課税自主権に委ねられています。冒頭において、「自治体によっては、減免を受けられる場合がある」と説明したのは、このためです。地方税法第367条を根拠に、各自治体では、税条例に当該自治体における減免制度について規定した上で、細目を税規則、通達等に定めています。

保険医療機関への減免制度

前述したとおり、固定資産税の減免については制度の有無や内容が自治体によって異なりますが、保険医療機関(健康保険法第65条の規定に基づき厚生労働大臣の指定を受けた保険医療機関)に対する減免制度については複数の自治体が設けています。
制度を設けている自治体の多くは家屋のみを減免対象としているようですが、一部の自治体では償却資産も対象としている例が見受けられます。

ここで、減免制度を設けている自治体の例を3つ紹介します。

■例1:東京都23区(区ではなく東京都が所管)
減免対象:家屋のみ
減免割合:ホームページ等に記載なし(各区の都税事務所へ要問合せ)
【参考】東京都主税局ホームページ(固定資産税・都市計画税(土地・家屋))
http://www.tax.metro.tokyo.jp/shisan/kotei_tosi.html

■例2:東京都小平市
減免対象:家屋のみ
減免割合:2分の1
【参考】小平市固定資産税及び都市計画税減免取扱要領
https://www.city.kodaira.tokyo.jp/reiki/reiki_honbun/g135RG00000566.html

■例3:神奈川県川崎市
減免対象:家屋及び償却資産
減免割合:家屋=2分の1 償却資産=10分の3
【参考】川崎市ホームページ(市税の減免と納税の猶予制度)
http://www.city.kawasaki.jp/230/page/0000016998.html

例1と例2では家屋のみを対象としていますが、例3の川崎市は償却資産も対象に含まれていることからも、「減免制度の内容は自治体ごとに異なる」ことがお分かりいただけるかと思います。
減免対象となる「家屋」や「償却資産」が何を指すかも自治体ごとの取り決めによりますが、例3の川崎市の場合は、以下のとおりとされています(以下、上記の川崎市ホームページより引用)。
“直接診療の用に供する診療室、処置室、手術室、準備室、検査室、レントゲン室、薬剤室、技工室、分娩(処置)室等の家屋”
“診療の補助施設の用に供する玄関、待合室、受付事務室、外来患者用便所及びこれらに付随する廊下、病室(ただし、病室の床面積算定は、許可病床数に1床当たり4.3平方メートルを乗じたものとし、20床を限度とする。)等の家屋”
“診療の用に供する治療用機械器具、診療用機械器具等の償却資産”

減免を受けるために知っておくべき留意事項

開業している病院又は診療所が所在している自治体に減免制度があったとしても、自動的に減免が適用される訳ではありません。
漏れなく減免を受けるために留意すべき事項をいくつかお伝えします。

■固定資産の所有者自らが市町村(東京都23区内は東京都)に減免申請を行うこと
減免は原則として申請主義のため、要件に該当していても申請しなければ減免が適用されません。また、減免申請が遅れた場合、減免額が減ってしまう可能性もあります。自治体によっては、開業等の情報に基づき自治体側から申請の案内をしてくれる場合もありますが、確実に減免を受けるためには所有者自らが意識して減免申請に備えなければなりません。

■減免を受けられる納税者の要件が自治体によって異なること
診療に使用している固定資産の所有者が、診療に従事する医師又は歯科医師本人ではない場合、減免が適用されないことがあります。例えば、先に紹介した小平市では、「診療の用に供する家屋の所有者が当該家屋を医師又は歯科医師に単に貸与している場合には減免の適用がない」とされています。この場合に、所有者が医師又は歯科医師の同居親族の場合も適用されないのか、夫婦の共有資産の場合はどうなのかといった細かい事項については、各自治体における個別判断になります。ホームページなどで確認するだけでなく、自治体に直接確認することが望ましいでしょう。

まとめ

固定資産税は、不動産取得税や相続税などのように単発ではなく、毎年負担しなければならない税金です。漏れなく減免制度を活用するために、まずは、「現在減免の適用を受けているかどうか」を確認しましょう。減免の適用を受けていない場合は、自治体に制度の有無、減免要件、減免割合、手続きなどについて確認・相談されることをお勧めします。

執筆者:DR’S WEALTH MEDIA編集部
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