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相続税が増税に。相続を意識した保険の活用法とは

相続人である子どもが複数いて、兄弟仲が悪い場合

2014.09.22

開業医が考えておきたい、相続での保険の活用

相続が発生すると、相続人たちは遺産分割協議を行い、誰が何をどのくらい相続するのかを話し合います。

中には話し合いがまとまらないこともあり、家庭裁判所の審判や調停に判断をゆだねるケースも多くなっています。

司法統計によると、このような遺産分割事件の新受件数は、2013年度に1万5,000件を超えています。2000年には、約1万900件だったことを考えると約4割増加しています。

2015年1月に実施される相続税法の改正によって、相続トラブルはさらに増加する可能性があります。

開業医のみなさまの中にも多い、資産家に影響が大きい税率の見直しがあり、最高税率はこれまでの50%から55%へ引き上げられます。何も対策を講じなければ、資産の半分以上を相続税で持って行かれる可能性があるということです。

生命保険を利用した相続税対策を

生命保険を活用した相続対策として、特に効果が期待できるのは、納税資金対策と遺産分割対策です。

資産が不動産などに偏っていて金融資産が少ない場合には、相続が発生した際に「納税資金をねん出するために、不動産を売却しなければならない」ということも起こる可能性があります。申告・納税期限は相続発生から10カ月以内ですので、急いで不動産を処分しなければならず、買い叩かれる恐れもあります。

そんな場合には、亡くなった人(被相続人)を被保険者として生命保険に加入していれば、相続発生と同時に保険金を受け取ることができるので、その資金を納税資金として利用することができます。

ただ、被相続人が高齢になると、持病があるケースも多く、保険に加入できないことも多くなるので、生命保険を相続対策に利用するのではあれば、できるだけ早めに検討しておく必要があるでしょう。

一時払い終身保険などを利用すれば、健康状態が多少悪くても加入しやすくなるが、支払った保険料と受け取る保険金額にあまり差がなくなってしまうので、納税資金対策には向きません。

受取人を特定できる、というのも生命保険のメリット

生命保険には「受取人を特定できる」というメリットもあります。

相続が発生すると、相続人の間で遺産分割協議を行います。それがまとまらなければ、誰も財産を受け取ることはできません。

しかし、保険金は受取人固有の財産として認められているので、遺産分割協議とは関係ありません。

たとえば、長男世帯と親世帯が同居している場合。将来、介護などで長男夫婦に面倒をかけそうであれば、長男を受取人にして生命保険に加入しておくとよいでしょう。

通常の相続では、親の介護をしても相続財産を多く受け取ることは難しくなります。その点、生命保険なら他の相続人に邪魔されることなく、長男が確実に受け取ることができます。長男の親孝行に報いることができるわけです。

資産が不動産などに偏っており、遺産分割が難しい場合にも有効です。たとえば、不動産は長男に相続させ、他の兄弟には保険金を渡すという方法があります。

この場合にも、保険金の受取人を長男にしておいたほうがよいでしょう。最初から次男や長女を受取人にしてしまうと、「保険金はもともと自分のものだから、それとは別に不動産も分けてほしい」と言い出す場合もあるためです。

長男を受取人にしておけば、長男は不動産を相続する代わりに“自分が受け取った保険金を他の兄弟に分ける”という形がとれます。これを代償交付金と言います。それなら次男や長女も納得せざるを得ません。

生命保険は、相続対策に有効ですが、有利に活用するためには加入時期や名義などを工夫する必要があると言えるでしょう。

執筆者:DR’S WEALTH MEDIA編集部
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