昼寝が与える『脳』への影響
2017.06.28
脳力マネジメントVol.1
スタッフにとっては、これが当然なのかもしれません。しかし経営者である院長の仕事を、タイムカードで区切ることはできません。診察や治療に関することだけでなく、経営方針の見直しやスタッフの育成計画、キャッシュフローや税金の問題など、処理しなければならないことは次から次へと出てきます。休む暇もない、とはこのことです。
そうなれば、嫌でも疲労やストレスは蓄積されていきます。どこかでリセットしないことには、仕事のパフォーマンスに悪影響を及ぼします。集中できない、イライラする、判断力が低下する…。こうしたパフォーマンスの低下を防ぐためには、何よりも適度な睡眠によって『脳』を休めることです。ありきたりと思われるかもしれませんが、充実した睡眠をとることが、最も効果的で重要なことなのです。
一般的に、人間は1日に7~9時間の睡眠時間が必要だと言われています。ハーバード大学で行われた研究では、5晩続けて平均4時間の睡眠では、記憶力や注意力、そして思考速度が法的に酩酊状態とされるときと同程度まで低下する、という結果が出ています。また、同大学による別の研究では、24時間シフトで働く研修医は、16時間シフトで働く研修医よりも医療ミスを犯す確率が36%も高く、診断を間違える回数が5倍にまで上がることが確認されたそうです。
こうしたリスクを回避するためにも、充分な睡眠をとって『脳』を休めることが必要なのです。とはいえ、経営者という立場の人間には、毎日欠かさず7~9時間の睡眠時間を確保するのは難しいというのも、また事実です。
そこで今回は、不足した睡眠時間を補う方法をお伝えします。それは、『昼寝』です。
日本ではあまり一般的ではありませんが、スペインやイタリア、エジプトなどでは『シエスタ』と呼ばれる昼寝の習慣があります。昼に60~90分の昼寝をすると、夜に8時間の睡眠をとったときと同等の休息効果が得られると言われています。もちろん、休日ならともかく、仕事中にこれだけの時間を昼寝に充てるのは、現実的ではありません。しかし実は、15~30分程度の昼寝をするだけでも、午前中に使ったエネルギーを回復するだけの効果が得られるのです。
NASAと連邦航空局がパイロットに対して行った実験では、平均26分の昼寝をしたパイロット達は、昼寝をしなかったパイロット達に比べて認知能力が34%高くなり、注意力も54%上がったそうです。アメリカでも昼寝の重要性は認知されており、海兵隊でパトロール前に昼寝を義務付けているほどです。
余談になりますが、週に3回以上、1日30分の昼寝をする人は死亡率が37%も低く、心臓病での死亡率に至っては64%も低い、という研究結果もあります。
診察や治療には、ただでさえ相当な集中力が求められます。極度の集中力をもって何十人という患者さんを診た後に、経営者としての仕事もあるのです。そして院長のパフォーマンスは、そのまま医院のパフォーマンスでもあります。医院とは、鏡に映った院長の姿なのです。
業務の効率化を図ることも大切ですが、充分な休息をとり、その高いパフォーマンスを維持するのはもっと大切です。
充実した睡眠により『脳』を休め、高いパフォーマンスと健康状態を維持すること。これも、医院と大切な人たちを守るための、経営者の仕事と言えます。
理想は7時間以上の睡眠時間を確保することですが、それが難しいのであれば、せめて30分程度の昼寝をする習慣をつけてみてはいかがでしょうか。