『チャレンジ』 と 『自己責任』
2017.05.31
ホセ・ムヒカに学ぶ『ルールの定め方』Vol.2
そう語ったのは、尊敬を込めて『世界で一番貧しい大統領』と評された、元ウルグアイ大統領、ホセ・ムヒカ氏です。
誤解のないようにお伝えしておきますが、これは日本人に対する『失意』の言葉でも、『侮辱』でもありません。幼い頃、日本からの移民が近所に住んでいたこともあり、彼は日本に対して親近感を持ち、日本の映画、特に黒澤明監督の映画が好きだといいます。日本の文化が大好きで、日本の歴史を学び、「ペリーの黒船来航で開国を決断した日本の選択に、感銘を受けた」と語っているほどの親日家です。
このムヒカ氏の言葉は、日本の将来を案じたものだったのです。
それを証明する逸話をご紹介しましょう。彼が2016年に来日した際、東京外国語大学で講演を行ったときのことです。
「将来、世界のいろいろな所へ行き貢献したいが、学生時代をどのように過ごすべきか」と質問を投げた学生に向かって、彼は、「あなた自身がどうすべきかの答えは、あなた自身が見つけなければならない」と答えました。この時、日本の若者に対して、自分の考えをハッキリ言うことを恐れている、と感じたようです。かつて開国を決断した時のような覚悟を、見出せなかったからかもしれません。
たしかに私達には、周りからのバッシングを恐れて無難な意見しか口にせず、自分の発言や行動を抑制しているようなところがあります。型にはまらなければならない、周りと同じでなくてはならないと感じている若者も多いように思います。そしてその現実を、『ルール』という建前でごまかしているように感じることもあります。
その背景には、規律を重んじる文化や過程を重視する風土などがあるのですが、それ故に自分で考えチャレンジすることを避け、誰かに指示されなければ何もできない人が増えるのは不思議な流れではありません。
しかしこのままでは、次世代のリーダーは育ちません。いつか第二のペリーがやってきたとき、開国も鎖国も決断できないまま支配されてしまう、そんな社会になってしまいます。あなたの指示がなければ何も行動を起こすことができず、結果として、あなたの代でビジネスが途絶えてしまうのです。
それでいいはずは、ありませんよね?
自分の意見を持ち、それを相手に真っすぐ投げることができる。次に何をすべきか、自分で答えを探すことができる。経営者には、そうした人材を育てる必要があり、義務があるのではないでしょうか。
何のためにルールがあるのか。
誰のためにルールがあるのか。
あなたのビジネス、そして日本の将来を考えたとき、私たちが為すべきことは『いかにルールを守らせるか』ではなく、『ルールを定める自由を与えること』なのです。
・「世界でもっとも貧しい大統領 ホセ・ムヒカの言葉」佐藤美由紀著/双葉社
・「世界でもっとも貧しい大統領ホセ・ムヒカ 日本人へ贈る言葉」佐藤美由紀著/双葉社