スタッフの不満と本音を引き出すテクニック
2016.06.29
みんなにやさしい歯科医院Vol.2 -スタッフのストレスを理解する-
そもそも現場のスタッフにとって、何がストレスになっているのか?院長自身が正しく原因を知ることが大切です。
院長の「つもり」より、スタッフの「実感」
長いこと歯科医院を経営していると、「うちの医院は患者さんも固定し、スタッフも長く勤めているから、それなりに満足してくれているということだろう」と考えますが、実際にスタッフがどう感じているかは、別の問題です。
院長は勤務医時代があったとしても、衛生士や技工士を経験したことはありませんよね。また、相手が経営者となると、雇われている側の人間は、よほどの立場でない限り、不満やストレスを訴えることはしにくいものです。
そのため、スタッフがどんなことにストレスを感じているか、退職希望を聞くまで気づかなかったということも少なくありません。つまり、院長は意識して努力をしない限り、スタッフのストレスに気付きにくいといえます。
歯科衛生士の退職理由
調査によると、歯科衛生士が勤めていた歯科医院を退職する理由は、以下の通りです。
1位 結婚・出産・転居
2位 業務内容・勤務条件・給与など
3位 人間関係
1位の結婚や転居などのライフイベントは、スタッフ側の事情であり、ほぼ全員が女性である衛生士ならではの特徴です。
3位の人間関係は様々なケースがあるため、一概に解決できる方法がありません。
しかし、2位の業務内容や勤務条件は、一人のスタッフのストレスが、勤務する全員にとっても共通のストレスである可能性があります。ここを見直すことで、優秀な人材の流出を防ぎ、業務効率を上げることもできると考えられます。
業務内容のストレスを聞き出す方法
そうはいっても、トップの人間に「どこが不満ですか」と聞かれても、ストレートには答えづらいものですし、言われる方もムッとしてしまって、ついカドが立ってしまう場合もあります。
ある歯科医院で行っている、スタッフの本音の引き出し方をご紹介しましょう。
(1)他院の見学・実習・レポート・話し合い
まず、研修として、スタッフに他院の見学や実習をしてもらい、レポートを書いて、勉強会として、みんなで話し合うのです。自分の経験と比較して、自院よりよい点、悪い点、取り入れたい方法など、意見を交わすことで、間接的に現状の不満を引き出すことができるのです。
この内容は、就労条件、被ばく・感染予防など、物品の管理方法や、技術的な問題など、多岐にわたるでしょう。こうして具体的にスタッフの意見を聞くことができますし、意見が出ない場合も、院長から「申し送りのやり方はどうだっただろう?」など水を向けることもできます。
(2)自院での改善案
(1)の結果、見習って改善したいことを話し合うことで、スタッフ自身が問題を解決することができます。ただ不満を引き出すだけでなく、その不満をどう変えてほしいと思っているのか、スタッフの希望や本音を聞くことができるのです。
(3)院長とのコミュニケーション
もしすぐに解決できない問題があった場合も、院長から、どういう理由で変更できないのか、どのような条件が揃えば解決しそうか、など内情を説明することもできます。そうすることで、漠然と先の見えない不満を抱えるより、院長が意見を受け止め、改善しようとする姿勢を見せてくれるだけでも、スタッフのストレスは軽減されるのです。
このように、業務内容に関するストレスの解決方法は、現場のスタッフの胸の中にあることが多く、院長があれこれと一人で考え込むより、実際に聞いてみる方が有益な情報が得られやすいのです。
院長のビジョンを伝える工夫
また、院長が何を大事にして、どこを目指しているかを、スタッフにわかりやすく伝えることが大切です。院長とスタッフ全員が同じ目標に向かって日々の業務を進めることが大切です。ここが合致していないと、良かれと思ったやり方が他方のストレスになることもあるのです。
「当院のモットー ○か条」など、明文化して、よく見えるところに貼っておくのは、効果的です。小さな判断に迷ったとき、何を優先すべきかが明確になるからです。
アンテナを張って伝える努力を続けること
院長は診察や経営に追われ、ついスタッフ一人ひとりの内面に気を向けることは後回しになってしまうものです。日々の業務でつい忘れて怒鳴ってしまうこともあるかもしれません。定期的に「やさしい歯科医院とは何か」を思い出し、スタッフのストレスに気付くためアンテナを張り、院長の思いを伝える努力を続けることが大切なのです。