マネジメント

開業したら避けて通れない「ヒト」のマネジメントとは?

クリニックの人事マネジメント

2016.05.04

人事労務コラム「クリニックの人事マネジメントVol.1

以前、当HPの「スペシャリストインタビュー」に登場いただいた、医療系人事コンサルタントの長友秀樹氏。今回から4回に渡って「クリニックの人事マネジメント」をテーマに短期集中連載を執筆いただきました。ぜひ、ご一読ください。

「ヒト」のマネジメント

 経営の3要素といえば「ヒト」・「モノ」・「カネ」と言われます。実際、先生方が開業時に時間をかけて考えることといえば、主に土地・建物などの物件や医療機器、銀行融資などが挙げられます。ところが、「ヒト」つまり職員の雇用に関して開業前に真剣に考え取り組んでいる先生はどのくらいいらっしゃるでしょうか。職員雇用は、経営の3要素の中でも最初に挙げられる程とても大切な「ヒト」に関することですが、開業準備期間の中ではそれほど時間が割かれていないのが実情です。
 
それは、開業前の先生方は、人事マネジメント経験が少ない、あるいは苦手にされている方が多いからです。事業を始めるにあたって人事マネジメントを軽視してしまうのは、必ずしも医師に限るものではありませんが、医師は一般企業勤務を経て起業する人と比べると、以下の点においてその特徴が顕著です。

■ 職業上、職人気質が強く、部下のマネジメントにはあまり関心を払っていなかった。

■ 勤務医時代に直属部下として、医師以外の職員(開業したら実際に雇うことになる看護師や事務員)をマネジメントしたことがない。

■ 勤務医時代は管理的立場であったとしても、病院で管理職研修や評価者研修などを定期的に受けたことがない。

このため、人事マネジメントに失敗した場合に起こる損害への認識が甘く、職員の採用からその後の労務管理については、「やってみなきゃ分からない」という見切り発車や、「問題が起きたら考えよう」という後手後手の対応に陥りがちです。

クリニックの人事マネジメントで気を付けたい
3つのポイント

患者さんに選ばれる良いクリニックを作るには、優秀な人材を集めて育成することが不可欠です。ところが、人事マネジメントは、これから開業される先生にとって容易なことではありません。特にクリニックの人事マネジメントは、他の業種と比べて特殊です。以下の3点を特に大切なポイントとして挙げましたので、ご参考にして下さい。

1. クリニックは女性の職場、女性特有のマネジメントが必要

人事マネジメントで失敗しないための秘訣は、女性職員のマネジメントといっても過言ではないでしょう。特に男性の先生は、女性職員に振り回されてしまわないよう気を付けて下さい。女性を雇うということは、女性特有の平等・横並び意識があったり、妊娠・結婚・出産といったライフステージの変化があったりするものです。また、最近は対応を誤ると、マタニティ・ハラスメント(通称:マタハラ)だと訴えられることもあるのでご注意下さい。

2. 最近の職員は権利意識が強い

クリニックの女性職員は、他業種で働くひとたちと比べて、自分たちの持つ権利意識が強い傾向にあります。勤務時間給与・賞与、有給休暇、社会保険など、働くひとの権利法律関係に関心が高く、こういった女性職員には、開業時だから多少権利が制限されても許してくれるだろう、今のクリニックの状況を分かってくれるだろう、といった考え方は通用しませんのでご注意下さい。

3. クリニックの職員は離職率が高い

クリニックの採用市場は働く側が有利な状況がしばらく続いています。辞めてもすぐに次の職場が見つかるため、職場に不満があれば、ちょっとしたことですぐに辞めてしまう職員も後を絶たないのです。このため、人員数は平常時から多少余裕をもった体制にしておくのが理想です。人員数に余裕があれば一人あたりの業務負担が軽くなり、定着率の向上にも寄与するというメリットも得られるでしょう。

ただ、人員数を持て余してしまい、職員の士気が緩み過ぎてしまうと逆効果になるので、業務の配分などにはご注意下さい。

執筆者:社会保険労務士 長友秀樹

●社会保険労務士・人事コンサルタント
長友社会保険労務士事務所代表。大学卒業後、大手食品メーカーにて医療施設専門向け商品の営業を担当。2009年に社労士資格を取得すると会計事務所などで就業規則作成などに従事。そして2012年、医療に特化した社労士事務所を設立。「人」を中心に据えたコンサルタントに定評がある。

長友社会保険労務士事務所:nagatomo-office.com

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