マネジメント

仕事の『楽しさ』や『魅力』、いくつ挙げられますか?

人材育成

2016.04.27

教育者に学ぶ人材教育Vol.2

「スタッフには、楽しく仕事をしてほしい」

そう願う経営者の言葉がよく聞かれます。そして、楽しく働くことというは、スタッフ自身と、そのご家族の願いでもあります。仕事が楽しくなければ医院の雰囲気は重くなり、会話も業務上のやり取りだけになります。お互いが何を考えているのかも分からず、やがて笑顔も消えていきます。それでは、どんな事業も長続きしません。

とはいえ、『楽しい』という表現は抽象的です。具体的に何をすれば『楽しく』なるのか、イメージするのは難しいですよね。院長より経験も知識も少ないスタッフであれば尚のことです。

しかし『楽しさ』を伝えることを分かりやすく体系化し、多くの企業に伝える教育者がいます。荒れた中学校の陸上部を再生し、7年間で13度の日本一へと導いたカリスマ教師、原田隆史氏です。

その原田氏も、かつては部活動を辞めたいと申し出る生徒に何を言えばいいのか分からず、自分の無力さに悩んだといいます。

魅力を感じなくなった

日々の練習を辛く感じるようになった

自分にとってどんな意味があるのか分からなくなった

こうして心が離れてしまった生徒を、どうすれば引き留めることができるのか。場合によっては、部活動の経験がまったくないご家族に対しても、熱心に説得しなければならないこともあります。考え抜いて出した1つの答えが、

「自分が陸上の楽しさや魅力を伝えるたくさんの言葉を持つこと」

でした。とにかく陸上の魅力を伝えるため、できる限りの言葉を考えたそうです。その結果、生徒を引き留めるだけでなく、自分自身も陸上の魅力を明確に認識できるようになったといいます。

これを、医院に置き換えてみてください。歯科医院で働く中に感じる楽しさとは何でしょうか? どんな魅力があるのでしょうか? それをノートに1つずつ書き出してみてください。果たして、いくつの言葉が挙げられるでしょうか。院長の頭の中には、たくさんの想いが詰まっているでしょう。でもそれは、形のないものです。漠然とした状態のものを人に伝えることは難しいですよね。

頭の中を整理するために、自身の想いをノートに書きだしてみてはどうでしょう。書き出すことで目に見える『形』になります。誰が見ても明確にイメージできるようになるのです。治療を通じて、元気に成長する子ども達とふれ合う喜び、あるいは、新しい業務を任せられたときの達成感。そうした歯科医院の楽しさと魅力を形にすることができれば、あとは伝えるだけです。

原田氏はそれを伝える手段として、『日誌』を活用しました。生徒に毎日欠かさず日誌を書かせ、一人ひとりに毎日添削をする。その中で陸上の楽しさや魅力を伝え、生徒の気持ちを受け止め続けたのです。原田氏について語られるとき、その日誌の書き方やフォーマットばかりがクローズアップされることがあります。まるで、日誌を書くことそのものが輝かしい成果の条件であるかのように言われることもありますが、それは違います。

『日誌』は単なる手段に過ぎません。一人ひとりの日誌を毎日添削し、陸上の楽しさや魅力を伝え続けたこと。生徒の家庭を知り、考えを知り、その上でおもいっきり褒め、そして叱る。こうして真剣に向き合う姿に、生徒たちは信頼を寄せたのではないでしょうか。

「原田先生に、何としてでも自分の成果を見せたい」その気持ちが、『松虫の奇跡』と称賛された13度の日本一につながったのでしょう。
 
朝礼、共有のホワイトボード、連絡帳、日誌、給与明細にはさんだ手紙。伝える方法はいくらでもあります。あとは伝えるものを用意するだけです。もっと楽しく、もっと魅力のある医院にするためには、あなたは何を伝えたいですか?

執筆者:DR’S WEALTH MEDIA編集部
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