マネジメント

雇用契約に必要な『本音』と『建前』

2015.11.11

トラブルを防ぐ雇用契約とはVol.2

「院長、あとで少しお時間を頂きたいのですが…」

スタッフが神妙な面持ちで、こう切り出してきたとき。私の経験上、9割以上が退職に関する申し出・相談です。その原因は様々ですが、その多くは 『人間関係』、 そして 『労働条件・環境』 です。

今回のテーマは【トラブルを防ぐ雇用契約】ですから、労働条件・環境の問題にフォーカスして考えていきましょう。

労働条件や環境が原因で退職する。

さて、何か違和感がありませんか?

環境については、実際に勤務してみなければ分からない部分もありますが、労働条件が不満なら、そもそも入社しなければいいだけの話です。条件を受け入れたからこそ入社したのではないでしょうか。ところが現実問題として、労働条件を理由に退職するケースは後を絶たない。しかも、採用時に雇用契約書をきちんと取り交わしている会社ほど多いというのです。突き詰めると、1つの答えが浮かび上がってきました。

「聞いた話と違う…」

労働条件に不満があったのではなく、契約内容と実情がかけ離れているのが不満、ということだったのです。

・実際にはサービス残業が多い
・実際には休日出勤もある
・実際には休憩時間もほとんどない

だからといって、いきなり退職を決意することはありません。

休日出勤にしても、はじめは「仕事だから、たまにはこういうこともあるだろう」と受け流す方がほとんどです。しかし、数回続くと「大丈夫かな?」と不安を感じるようになります。そして何度も続くと、不安が不満に変わります。やがて耐えきれなくなり、不満は不信感へと変わるのです。

前回もお伝えしましたが、雇用契約書を取り交わすことは大切です。しかし、実情とかけ離れては意味がありません。トラブル回避にもならず、大切なスタッフを手放す結果にしかつながりません。

「契約書に、休日出勤も発生しますとでも書け、というのか!」

こんな声も聞こえてきそうですが、そうではありません。

「現状は休日出勤もある。ただ、休日出勤をゼロにしたいというのが私の考え方です。少なくとも半年以内には改善したい。改善するために、あなたの力を貸してほしい」

経営者から直接こう言われたら、その方はどう思うでしょうか。休日出勤をして、「話がちがう!」 と思うでしょうか。それを理由にすぐさま退職してしまうでしょうか。

契約書の内容はもちろん守るべきです。ですが、契約書の内容に対して問題や課題を抱えることもあるでしょう。この表現が正しいかどうかは分かりませんが、契約書の内容は 『建前』 です。建前とは、実現するべき目標のことです。それに対して、実情は 『本音』 です。

本音を語らずして、建前を実現することはできません。医院の『本音』と『建前』を見せ、それに納得して入ったスタッフは、あなたが建前の実現を目指すかぎり、またとない協力者となるでしょう。

執筆者:DR’S WEALTH MEDIA編集部
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