組織づくりの第一歩は、スタッフの役割づくりからはじめましょう
2014.11.19
人材と組織の成長がもたらすもの
消火活動の目的は、当たり前ですが人命救助と消火です。現場を指揮する人、現場の状況を確認する人、救助を行う人、延焼を防ぐために建物を壊す人、消火を行う人といったように、一言で消火活動といってもさまざまな役割があり、それぞれが自分の役割を務めることで目的を達成します。
さて、もし役割分担が明確でなかったらどうなるでしょうか。それぞれが思うままに動いて、救助が遅れることはないでしょうか。状況を把握しきれず、延焼してしまうことはないでしょうか。もし救助が遅れたら、もし延焼が止められなかったら…。おそらく目的を達成することはできないでしょう。
医院の組織にも同じことがいえます。役割も明確でないのに、何かを達成することはできません。ここでいう役割とは、誰が助手で、誰が事務スタッフなどという外形的なものではありません。
・リーダーはAさんで、スタッフのシフト作成と診察スケジュールの管理、患者さんの意見を集めることを担当
・サブリーダーはBさんで、毎日の朝礼の進行とAさんの診察スケジュール管理のフォローを担当
・Cさんは設備や器具、備品類の管理と発注業務を担当
このように具体的に進めるものです。それを、作業をしながらではなく、休憩時間の雑談のついででもなく、きちんと面談の時間をとってそれぞれスタッフに伝えるのです。そのためにはもちろん、事前にスタッフの考えや意向も確認しておくべきです。
例えば、スタッフの中で年長者だからといって、「リーダーはちょっと…」という方に無理やり頼んでも、欲しい成果は得られないでしょう。それなら別のスタッフがリーダーを務めることになるのを伝えた上で、その方にやって欲しい役割を、なぜその方に頼みたいのかを合わせて伝える必要があります。
また、将来的にリーダーという役割を務めたいという方に、まったく見当違いの役割を押し付けてもモチベーションが下がるばかりです。思い切ってリーダーを任せてみるのもいいでしょうし、まだ早いと判断するなら、最終的なリーダーの役割や業務を確認しながら、ひとつずつ任せていく方法もあります。
役割分担とは、ただ単に業務を振り分けることではありません。同じことを延々とくり返すだけでは、人も組織も成長しませんよね。ですから、ほんの少し先の医院とスタッフの未来に合わせて、任せる役割や業務を変化させていくのです。
消防隊に例えるなら、将来的にリーダーを任せようと考えている人財には、状況の確認、救助活動、延焼阻止の処置、消火活動など、あらゆる役割を全体的に把握できるように経験させていくことです。あるいは消火のスペシャリストを育てる場合であれば、とにかく現場経験を積ませて的確な状況判断ができるようにし、設備や機器の管理や取り扱いの技術も習熟させていく、というイメージです。
どんな役割があって、それにはどんなスキルが必要で、どんな理由で誰に任せるのかを考えるのは簡単なことではありません。時間も労力もかかり、とんとん拍子にうまくはいきません。しかし役割分担を明確にすることで人財も、組織も確実に成長します。
そしてそれは、院長と医院の可能性が広がることを意味します。人財と組織の成長によって負担が軽くなれば、院長は “時間” というかけがえのない財産を手にすることができ、その“時間”を使って医院の未来をデザインすることができるのです。
信頼して、思い切って任せてみてください。