組織の安定と成長を図るため会社に合ったルールを提案します
2015.01.28
社会保険労務士 上殿浩司氏インタビュー
えびす労務管理事務所 所長、特定社会保険労務士。企業の未病を防ぐ労務管理を中心に、組織力、業績向上のコンサルティングとして、社員研修にも多く取り組む。攻めと守りの労務管理を得意とする。
会社の仕組みを作ることが私の仕事です
上殿浩司氏(以下、上殿):会社の中の人に関する仕組みを作ることが多いです。就業規則を作ったり、あとは、新しく入ってきた人の人材育成の仕組みを作ったりなどですね。また、入退社の手続きなどもやっています。
上殿:確かにそういうケースは多いですね。しかし、大きく組織化するならある程度の規則は必要です。学校の校則のように、就業規則もそれぞれの会社に合わせて変えられます。また、ルールを作り、労働条件通知書できちんと契約を交わしていた方が本当は楽なんです。
上殿:はい。もし今何かあったら一千万単位でお金が飛びそうな状態です。また、労働トラブルが起こるタイミングで多いのは、結婚・出産、そしてご両親の介入です。従業員の方の出産や結婚のタイミングで、ご両親が“この会社おかしいんじゃないか”と監督署に行って、サービス残業などを訴えるケースが非常に多いです。
上殿:そうですね。ヤフー知恵袋など質問サイトとか、他でも何か調べようと思って検索すると、全ての情報がドワーっと手に入る時代になってしまったんですよね。なので従業員の権利意識も昔とは比べようもないくらい強くなっています。でも、社長はというと昔のままで、情報から隔離されて疎い状態なんですね。
上殿:最近は退職時の情報漏洩トラブルの相談も増えています。そのような事態を未然に防ぐため、僕らがやっているのは、ルール作りと、そのルールを周知させるための研修制度作り、そして研修実施ですね。情報漏洩は社内の財産を持っていく犯罪なんですよ、というのを、研修できちんと社員教育するわけです。
上殿:はい。医療保険と似ていて、自分だけは病気にならないと思っているから、保険に入ってリスク回避をしない。ほとんどの方が、実際にリスクが訪れてお金を払ってからでないと気付かないんです。実際、従業員が辞めて数ヶ月後に不当解雇の請求が来たらしく、700万くらい会社が払ったケースもあります。しかし、きちんと書類を作ったり履歴を残しておけば、裁判になっても勝てるんです。払う前に備える方がよっぽどいいですよね。
大切なのはルール作りと、それを周知させること
上殿:究極は、働きやすいルールを作ることです。僕がいつも言うのは、10対1か、9対1、もしくは99対1で考えてくださいということ。
ちゃんと真面目に働いている人が99人。でも、1人だけ悪いことをしていた。ついこの1人にフォーカスして厳しいルール作りをしてしまいそうになりますが、そのせいで真面目な99人まで働きにくくなったら、その人たちまで抜けていってしまう。なので、この悪い1人を生じさせない。もしくは生じても退場させることができ、なおかつ99人にとっても働きやすいルールを作ることが重要になります。
上殿:従業員目線で考える事です。実例では、有給休暇取得率100%という制度を導入し、従業員満足度が上がったことがあります。「ワークもライフもどちらも充実させる」といった経営者のメッセージを伝え、しっかり働いてもらうことも可能です。
他社との差別化ができて人が集まり易くもなりました。現在は深刻な人手不足の状況が続いていますので、お客様も喜ばれています。
人材作りのポイントは「採用」「教育」そして「評価」
上殿:そうですね。僕らができることというのは、ルールを作って、ルールを周知させること。従業員説明会なども開催します。そして研修を実施し、従業員の意識を高める。このルールを作ることと、研修の2つは国が求めていることなので、しっかりやると助成金が貰えたりします。結果、コストをかけずに労働環境がどんどん良くなり、他の医院と差別化していくことになります。
上殿:起こることもありますが、ルールを乱す人というのは、会社は本当は留まってほしくないんですよ。組織に悪い部分が蔓延する前に、ガンになるような人を早く見つけて矯正する必要があるんです。矯正できなかった場合には退場してもらうしかないんです。これをやるために、まずはルール作りが必要なのです。組織の中で、ルーズな緩みが風土として育ってしまう前に、厳しく取り組む方がいいですね。
上殿:そうですね。就業規則を作る時、1回2時間を6回行うのが、うちのベースです。内訳は3ヶ月で就業規則を作って、3ヶ月は運用サポートをするシステム。ですので、就業規則を実施する時は6ヶ月のお付き合いです。
上殿:人材戦略も重要です。人材戦略としてポイントにしているのが、採用と教育と評価の3つです。その三大戦略を会社の中に根付かせ、よい従業員を差別化して生き残らせる会社づくりというのを心がけています。
採用に関して言えば、結構医院とか小さな会社はあまり中身を見ずに採用していることが多いのですが、このような点も採用システム作りをすることで、採用の精度をあげ、人材のミスマッチを防ぐことができます。
上殿:いえ、本来は社労士の分野なのですが、実際にここまでやっている社労士は少ないです。僕たちは自らの差別化のためにも人材戦略を考えて提案しているのです。
上殿:そうですね。例えば評価制度。年次が上がるにつれてスタッフたちの給料が上がるとします。でもA子さんとB子さんとC子さんのどこが違うからそれぞれいくら上がるかという根拠がないと困りますよね。10人超えると評価が難しくなるのが現実ですが、評価が適当だと従業員も頑張るのが馬鹿らしくなってしまいます。しっかりルールを決めておくことが大切です。
上殿:僕らが皆さんからお付き合いして良かったと思ってもらえることの1つに、同業他社の成功事例・失敗事例をいろいろな会社さんに還元してるという点もありますね。なかなか他社の生の情報は手に入らないものだと思うので…。
上殿:僕たち社労士は、従業員が10人位集まってから利用されやすいのですが、従業員が5人しかいなくても今後のために有効なアイデアをご提案できます。今後組織を大きくしようとか、長く続けようと思うのでしたら、早いうちにしっかり組織作りをしておいた方が絶対にいいです。10人の時と5人の時では、何か変えるときの労力が全然違います。かかる期間も数週間で済みますしね。虫歯の治療と似ていて、軽い治療で済む間に早く対処することが大切なのです。