医院の理念を貫きスタッフの個々を立てれば最高の職場になるでしょう
2015.04.22
経営コンサルタント 井上健一郎氏インタビュー
アカラ・クリエイト株式会社代表。創心究和塾塾長。「リーダー思考養成講座」主催者。慶応義塾大学卒業後、CBSソニー(現ソニーミュージックエンタテインメント)入社。企画から販売までを経験。2010年独立。自由闊達な組織づくりを目指す企業のサポートに特化して活動中。
チーム運営は5人1チームが基本
井上健一郎氏(以下、井上):まずチーム運営の基本を、5人で1チームだとイメージして欲しいんですね。僕は、どんな大企業でもこの5人組の総合であると考えています。そして、この5人の集団の中での主役は、関係性なんです。
一番最小単位の組織を形成しているエネルギーは関係性であり、コミュニケーションが大切です。運営には、個々が立つ運営と、組織のみんなで同じことを言い合えるようにする2つの方向性があると考えています。
スタッフ一人一人が主役になる運営は、歯科医院などの女性の多い職場などに合っていると思います。また、経営者や医院長の理念を形にしていく方法は、みんなでひとつの価値観を共有するというレベルにまで達しないといけないので、単純なコミュニケーションよりも苦労があるかもしれません。
井上:院長の思いをみんなで共有しながら、その上で個人が立つ、というのができたら最高ですよね。そのためには関係性と、さらに目的も大切です。院長自らが目的を持ってブランディングを行なうのはもちろん、医院でも、スタッフの名前を前面に出す工夫というか、演出は必要だと思うんです。一人一人の名前……個が立つような演出をすると、女性は特に頑張る傾向があるので、女性の多い職場では合っていると思います。
井上:医院や企業では反省会をやっていますが、同じことで反省してる所が多い。それはみなさんが日々の作業に追われている状態にあるからです。そうならないためにも作業の効率を上げ、時間カットをしていく。そのカットされた時間の中で、何か考えていく時間を作らなければいけません。
極端ですが、一番有効なのは残業をなくすこと。美容院などで残業をやめることで、その分お客様に丁寧な接客を行なうようになった実例があります。日常活動が時間と実行動、消化しなければならない行動でできていることと理解するのが大事です。
井上:具体的な行動を決めて、それを消化し時間を短縮することに焦点を合わせ、みんなが力を合わせていくと、実はお互いの関係性が良くなる。ベースができるんで、そこに各々の考え方を乗っけてあげるといいかと。
井上:僕はむしろ、スタッフからプレイヤーとして憧れられる存在になった方が良いと考えます。マネジメントをする時間は、月に30分だけでもいいので、スケジュールの中に計画して組み込んでおかなければいけない。その時間だけ経営者としてスタッフと接し、普段は技師、先生の姿でいいと思うんですね。その方が近く感じてもらえますし。
井上:僕の持論はさっき言った5人の単位で背負う。例えば、あなたたちのチームはこの数字を背負いなさい。誰がどう結果を出すかは自分たちで考えなさい。そうすると難しい課題を与えられたチームは、できない人をかばい、全員で乗り越えようとするんです。やさしい問題だけを与えられたチームは、みんながさぼる。前者の方が組織運営として理想的ですし、チームとして達成すべき目標を掲げ、それに対して4〜5人で確認し合うチームプレイが良い気がします。
ゆとり世代は、同じ目線に立つことが大事
井上:今の子たちは、親が関与し過ぎている影響か、反抗期のない子どもたちが多いんです。青年心理学で言うと、他者や公との関わりと、自分と向き合うことの二つがないと心理学的には成長しないそうです。今の子たちは部屋に入っても、裏で自分が陰口を言われている恐怖から常にネットと繋がっていて、自分と向き合う時間が減っているんです。
井上:そう。だからネットなどに正解を求め、答えを知らないと怖くて動けないんですよ。でも、情報処理能力に長けていたりして頭は良いので、そこに動くことの大切さを少し教えてあげないといけない。
井上:若い人が何を言われると安心するかというと、失敗しても良いよと、心から言われることだそうです。ただ、本当に失敗するとそっぽを向く教師がいるみたいで、言葉通りに受け取れないそうです。
井上:ミスをした時に上司、院長などがどう対応するかということでわかるか、と。あと、意外と俺について来い、っていうリーダーシップより、俺も分からないんだけどさ、と言ってもらった方が安心するそうです。これが常識だって言うと引いちゃうみたいですね。
井上:僕はね、先に技術に触れ、極めさせた方がいいと思うんです。例えば美容師なら、美容師として成功したいのか、お店を任せられたいのか聞いてみる。美容師を極めると言ったら、励ましたあとに、チームで作業していることを自覚させる一言を添えてあげると良いかと。更に、技能を教わることで、彼らも自分がプロのレベルにない事を思い知らされる。ダメ出しされながらも回を重ねると、技や知識の吸収力が違ってくるんです。それでチームプレイについても理解するようになる。人を育てる時に、技能を徹底的に教え込むっていうのもいいんですよね。
井上:教わるうちに、素直に、ピュアになるんですかね。本人が一生懸命取り組む姿勢を通して、職場のみんなに対しても態度が良くなっていくような気がします。日常の現場というのは、恐ろしいほどパワーを持ってると感じますね。
SNSなどのツールを使うことも効果的
井上:上が下に歩み寄るしかないですね。僕ら世代が、彼らに教えてあげるしかない。あと僕らからすると、LINEみたいなコミュニケーションツールでの交流は希薄な感じがありますが、彼らは対話をするよりもそっちの方が関係性を感じるみたいです。だから、LINEのグループみたいなものを作って、みんなで感じたことを見られるようにするにはどうでしょう。ネットで繋がりを作った上で、彼らの考えに反応してあげてから会話する方が、交流がスムーズにできるようです。
井上:“チャットワーク”というツールも良いです。チャットワークを使ってる社長やリーダー、病院の院長によると、自分から今日思ったことを発信し、若い子の言葉を拾い、リアクションをするだけでも随分変わるんだそう。週に一回のミーティングよりも、チャットワークでのやりとりの方が反応がいいとか。チャットワークならLINEのように既読など出ないので、プレッシャーがないのもいいようです。
井上:外部の人と安易に使うのは良くないですが、組織のチームとして使うのは良いかもしれないです。院長が若いスタッフのことを理解しようとしてLINEを使うと、若者の上にいる先輩看護師さんたちが反対するらしい。そんなときは院長が、僕がやってみたいんだ。みんなで何を考えてるか分かる様になるからやろう、という風に薦めるのがいいんじゃないかと思いますよ。