どのように変わったのか?-「かかりつけ機能」の強化
2016.11.14
開業医が押さえておきたい診療報酬改定Vol.2
今回は、「かかりつけ機能」という観点から診療報酬改定を解説していきます。2016年度の診療報酬改定により、乳幼児や認知症の高齢者などをきめ細やかに診る「かかりつけ医」や、患者の薬を管理する「かかりつけ薬剤師」に対する報酬が引き上げられ、それにより今後、「かかりつけ医」や「かかりつけ薬剤師」の役割がより重視されるようになるものと、診療報酬改定から想定されています。
■医師編
具体的には、「小児かかりつけ診療料」が新設され、乳幼児(3歳未満)を診察し、小学校就学前まで継続的にアドバイスや予防接種などの指導を行うことで、報酬が引き上げられることになりました。他にも、電話などの問い合わせに常時対応すること、必要に応じた専門医の紹介、施設基準として初期小児救急への参加や小児在宅医療の提供などの一定要件を満たすことなども規定されています。
また、認知症の高齢者で、他の病気も抱える場合には、在宅による治療や服薬管理(24時間対応)を行うことにより、認知症地域包括診療料1515点(月1回)が、認知症地域包括診療加算30点(再診料1回につき加算)として評価されるようになりました。
■歯科医師編
今後予測されている超高齢化に備えて、歯科が他の診療科の医院と連携し、地域住民の健康を守るために今回設けられたのが「かかりつけ歯科医」制度です。かかりつけ歯科医には、定期的な口腔管理を行うことによって、むし歯や歯周疾患の重症化を抑制し、歯の喪失リスクを軽減する役割が求められています。
具体的には、エナメル質初期う蝕管理加算260点(月1回)、歯周病安定期治療(II)(月1回)、在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料の加算100点が新設されるなどの変更がありました。
■薬剤師編
医師だけではありません。医師以上にかかりつけ機能が強化されることになったのが薬剤師です。現在、複数の病院で治療を行い、市販薬やサプリメント等を含む様々な薬を多用する患者さんは増えています。
すべての医療機関・薬局が、その患者さんの服用する薬がどういったものがあるのか理解していればよいものの、なかなかそうはいかないこともあり、服用する薬の種類によっては副作用が起きるといったことも考えられます。
そこで、かかりつけ薬剤師として患者さんが受診する全ての医療機関と服用する薬を一元的・継続的に管理し、こうした副作用を防ぐ役割を担う薬局には診療報酬が手厚くされることになりました。かかりつけ薬剤師には調剤後も服薬状況や指導内容を医師に提供したり、患者さんからの相談に24時間応じられるようにしたり、訪問し服用薬の整理を行ったりすることも、必要に応じて求められています。かかりつけ薬剤師になると、現行の薬剤服用歴管理指導料の代わりにかかりつけ薬剤師指導料70点が、包括診療を行う場合はかかりつけ薬剤師包括管理料270点が算定できるようになりました。
逆に、主に大病院の前に集中する大型門前薬局の調剤基本料は引き下げとなり、門前薬局からかかりつけ薬局への移行を促す狙いもあるようです。
このように、「かかりつけ機能」の強化された背景には、今後予想されている超高齢社会とそれによる在宅医療の需要や医療機関の連携を強化する必要性が増していることが挙げられます。今回強化された「かかりつけ機能」により、患者にとってより安心でより安全な医療の実現が求められているのです。