開業医の相続、医院継承を円滑に進めるには?
2016.06.27
開業医の相続、医院継承の際に必ず確認したいポイント
・相続放棄はできないケースがほとんど
・医療法人の相続で問題になる“株式”
・自社株の相続問題の解決方法
・借入金の返済を急に求められるケースのために、適した生命保険への加入を
・定期保険を選ぶか、終身保険を選ぶか
相続放棄はできないケースがほとんど
開業医に限ったことではありませんが、事業の相続は必ずしもプラスの財産だけだとは限りません。銀行からの借入金が残っている場合もあるでしょう。
相続対策の書籍などには、相続放棄について解説されています。相続ではプラスの財産とマイナスの財産を比較し、マイナスの財産のほうが多ければ、相続放棄が有利だというのです。
しかし現実には、相続放棄はできないケースが少なくありません。
事業で借入をしている場合には、親族に連帯保証を依頼していることが多くあります。相続人が相続放棄をすれば、連帯保証人に返済義務が生じてしまいます。
実際問題として、相続放棄はそう簡単にはできないのです。
医療法人の相続で問題になる“株式”
相続を行う場合、個人の相続では、被相続人(亡くなった人)の金融資産や不動産などを直接、相続人が引き継ぎます。
しかし、事業を医療法人化している場合や資産管理会社(プライベートカンパニー)を設立し、不動産投資をしている場合などは、その法人の株式(自社株)を後継者が相続することになります。
そこで問題になるのが株価です。医療法人など中小企業の株価は高く評価されがちで、その分、相続税が高額になることもあります。
事業が順調であればあるほど、株価も高く評価されるのが悩ましいところです。上場している株式であれば、その一部を売却して納税資金を調達することができますが、上場していない中小企業の株式は、それもできません。評価が高いうえに売却できないという二重苦を抱えているのが自社株だといえるのです。
自社株の相続問題の解決方法
個人の相続では、子どもはすべて平等の相続権をもっていますが、これは自社株相続でも同じです。後継者の子どもであっても、後継者ではない子どもであっても権利は変わりません。相続人が子ども2人であれば、2分の1ずつの相続権を保有しているのです。
たとえば、長男が後継者であるにもかかわらず、長男と次男で2分の1ずつ自社株を相続してしまったらどうでしょう。弟が何かと経営に口出しをしてくる可能性があります。
場合によっては経営権争いになり、事業の継続自体が危うくなってしまうかもしれません。
このような場合、後継者が自社株を相続し、その代わりに他の兄弟には現金を渡せるようにしておくと安心です。これを代償分割といいます。
たとえば、後継者を受取人にして生命保険に加入しておきます。生命保険は、受取人固有の財産として認められているので、分割の対象となりません。後継者はその保険金を代償分割の資金に活用すれば、自社株を後継者に集中させることができます。
続けて、事業継続のために必要な生命保険の活用法を考えてみましょう。
借入金の返済を急に求められるケースのために、適した生命保険への加入を
経営者に万が一のことがあると、銀行が借入金の返済を求めることがあります。急に返済を求められれば、資金繰りが難しくなり、事業に悪影響を与えかねません。
借入金がある場合には、返済資金を準備しておく必要があるのです。
生命保険は、“相続が発生したときに現金が受け取れる”というのが最大の特徴です。借入金の返済資金として生命保険に加入しておくことは有効です。
死亡保障という点では、“終身保険”が基本ですが、保険料負担は大きくなります。保険料負担を抑えながら、死亡保障を得る方法として長期の“定期保険”を活用する方法があります。
保険会社の中には、解約返戻金をなくすことで保険料を割安にした商品を扱っている場合もあります。
定期保険を選ぶか、終身保険を選ぶか
たとえば、50歳男性が保険金額5,000万円でA社の定期保険に90歳満期で加入した場合の保険料は月額約1万4,000円です。
同じ保険金額で終身保険(低解約返戻金型)に加入すると、保険料は6万7,000円(60歳払込満了)ほどですから、保険料負担を大幅に軽くすることができます。
しかし、終身保険であれば、元気に引退を迎えたときには、解約返戻金を退職金に利用することもできます。解約返戻金がないタイプの保険では、そのような活用はできません。
保険の最終目的を考えた上で、商品選択をすることが重要となるでしょう。
ちなみに相続放棄をした場合でも、保険金は受け取ることができます。
定期保険と終身保険の比較については、こちらの記事もご参照ください。
⇒開業医におすすめの生命保険活用法