ファイナンス

親族に医院継承する場合に考えておくべきこと

事業継承

2016.02.15

医院継承と相続Vol.4 -親族に医院を継承する場合-

院長である自分が引退をする場合の引継ぎの方法は、誰に引き継ぎをするのかによって違ってきます。大きく分けて、子どもを含めた親族か、それ以外の2つになるでしょう。

今回は、子どもや兄弟姉妹などの親族が医院を継承する場合を考えてみましょう。

医院の考え方の伝達、患者さんの引き継ぎ

自分がどのような思いで患者さんと向き合い診療を行ってきたのか、また、経営を行ってきたのかについて、後継者に思いを伝えることはとても大切です。

しかし、それを無理やり押し付けると、後継者の成長を妨げてしまったり、革新や改革につながらなかったりする場合があります。身内だからこそ、お互いを理解して、納得した上で、引き継いでいくことが、今後の関係性を含めて大事になるのです。

例えば、歯科医師が院長のみの場合など、院長のキャラクターが色濃く出ている医院も多く、そんな医院には現院長のファンがたくさんいるはずです。突然の変更では、引き継ぐ先生がどんな人かわからないばかりか、せっかくの後継者の良さが伝わらず、他医院へ離れてしまうことも考えられます。そうなってしまっては、経営が危ぶまれますし、よからぬ噂がたつかもしれません。

「先代の方がよかった」などといわれないように、一緒に診療していく中で少しずつ患者さんの引き継ぎを行い、後継者が医院に馴染んできたと感じた時に引退するなど、ある程度の準備期間が必要です。

医院のシステム面の対策

また、次の世代に引き継ぐときに、設備を新しくしたい、内装や外観も含めてリニューアルしたい、などの希望があるかもしれません。現院長のときに借り入れをして引き継ぐのか、それとも、次の世代に代わってからリフォームやリニューアルの判断を任せるのか、資金面も含めて考えておきたいところです。

さらに、暦年贈与や相続時精算課税制度を利用することで、税務面で有利に立てますので、親族に継承することが決まったのであれば、どう継承してくのか、1年後・3年後・5年後・10年後と段階を区切って、この時どのような状態にしておきたいのか、具体的に考え始めましょう。

そして、治療の技術のみではなく、経営者としての自覚や覚悟などの心の持ち方、経理の等の事務処理能力等も、今後経営を任せていくにおいて合格点に達しているかにも気を配り、経営者として、運営に関することや法律上知っておかなければならないことなどを指導していくことも必要でしょう。

このような事柄も、一度になにもかも引き継ぎをするのではなく、順次任せていく方が後継者にとっての負担が少なくなります。

もし、自分自身が引き継ぐ立場ならどうしてもらうのが一番いいのか、自分自身は開業当初どのようなことに困っていたのかなど、後継者の立場を理解するためのヒントは、既にお持ちのはずです。

それらを活かして、自分自身が退いた後も、医院が地域に愛され続けるためには、今から何ができそうなのか考えてみてはいかがでしょうか。

■連載記事
【医院継承と相続Vol.1】継承の基本 暦年課税(生前贈与)と相続時精算課税
【医院継承と相続Vol.2】何を誰に引き継ぐのか
【医院継承と相続Vol.3】いつ、医院継承をしたらいいのか
【医院継承と相続Vol.4】親族に医院を継承する場合に考えておくべきこと
【医院継承と相続Vol.5】親族以外の人に医院継承する場合に気をつけたい4つのポイント
【医院継承と相続Vol.6】法人を継承する場合の期間限定の特例措置

執筆者:DR’S WEALTH MEDIA編集部
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