MANAGEMENT

『教育』が果たす、母の役割

FCバルセロナに学ぶ『人材育成』

2017.05.10

FCバルセロナに学ぶ『人材育成』Vol.2

ラ・マシア・デ・カン・プラナスは、18世紀の建築物で、2011年に閉鎖されるまでFCバルセロナの選手寮として使われていました。サッカーファンには、『ラ・マシア』の名で知られています。1979年に開所されて以来、何百人という選手がここで育ちました。ギジェルモ・アモール、アルベルト・フェレール、ジョゼップ・グアルディオラ、ビクトル・バルデスなど、名だたる選手たちが、少年時代を過ごした場所なのです。

選手の移籍やトレードが、年中行事のように行われているプロスポーツ界において、生え抜きの一流選手が多く在籍するFCバルセロナ。そんなチームを支えているのは、この『ラ・マシア』での教育といっても過言ではありません。

かつて『カンテラ』のテクニカル・ディレクターを務めていたアルベルト・プッチ・オルトネーダは、「教育するとは、子どもを社会に送り出すための準備をすることだ」と語っています。

ラ・マシアには、世界中から多くの少年が自分の可能性を信じ、夢を求めて集まります。そしてその門をくぐった瞬間から、言葉や食生活、宗教など、異なる文化を持つ他の選手との共同生活が始まるのです。寮での過ごし方や他の選手との付き合い方は、彼らがその後サッカー選手として成長していくことに大きな影響を与えます。共同生活の中でメンタルを育てながら、競い合うことで技術を磨く。未来のチームを背負って立つための、儀式のようなものです。

とはいえ、12歳や13歳といった年齢の子どもたちが、家族のもとを離れ、こうした環境の中に身を置くことは簡単ではありません。

だからこそラ・マシアの指導者たちは、子どもたちがホームシックにかかれば愛情を注いで乗り越えさせ、チームで抱えた問題を分かち合い、時には監督やコーチ陣との橋渡しをするなどして、彼らを見守っているのです。

一方で、彼らが子どもたちに教えるのは、他人に対する敬意であり、忍耐であり、謙虚の心です。サッカー選手としてだけでなく、人間としての成長を願っているのです。その姿は、離れて暮らす母親の代わりを果たすかのようにも見えます。

4月になり、街では、新入社員と思しき若者の姿を見かけるようになりました。ラ・マシアの門をくぐった少年たちのように、慣れ親しんだ環境や家族から離れ、新たな挑戦に踏み切った者も少なくないでしょう。そんな彼らに、私たちは何を『教える』べきなのでしょうか?

オペレーションや技術をたたき込み、一辺倒の礼儀やマナーを教えることも、確かに必要です。しかしそれだけではなく、人間としての成長を促し、時には愛情をもって接することで、人との関わり方を教える。そうした、母親が子どもに与える愛情のような教育があってもいいのではないか、とも思うのです。

子どもというものは、いつも心の中に、母親から受けた愛情をしまい込んでいるものです。新たなスタートを切ったスタッフにとって、あなたの医院がそんな母親のような存在であったなら、それ以上の教育はないのではないでしょうか

▼参考文献
・「FCバルセロナの人材育成術」アルベルト・プッチ・オルトネーダ著/アチーブメント出版
執筆者:DR’S WEALTH MEDIA編集部