マネジメント

『勝つこと』よりも大切なもの

FCバルセロナに学ぶ『人材育成』

2017.05.03

FCバルセロナに学ぶ『人材育成』Vol.1

スペインのプロサッカーリーグ、リーガ・エスパニョーラにおいて、レアル・マドリードと並んで圧倒的な強さと人気を誇るチーム、FCバルセロナ。サッカーに詳しくない方でも、その名を耳にしたとはあるでしょう。

世界中から注目を集めるこのチームでは、実力と人気を兼ね備えた選手がピッチで躍動し、明日のスタープレイヤーを目指す少年たちへ夢を、そして多くのファンへ感動を与えています。

「FCバルセロナとは、選ばれしスタープレイヤーが集う、夢のチームだ」と考える方もう少なくないでしょう。

FCバルセロナの強さを支える、本当の理由をご存知でしょうか? サッカーに限らず、プロのスポーツチームに求められのはただ1つ。『勝利』です。故に、多くのチームが求める選手とは、勝つための『即戦力』となる選手であり、観客を集めるための『スター』となる選手です。実力と人気を兼ね備えた選手をそろえて、『勝利』という結果を提供することで資金を集め、更なるスタープレイヤーの獲得に投資する。このくり返しです。

そしてその結果、スター選手の寄せ集めのようなチームが現れ、どこのチームも『生え抜きの選手』が育たない…これが、プロスポーツチームの現状と言われています。

そんな中で、ある試合では、ピッチに立つ11人全員が『生え抜きの選手』で構成されたこともあるほど、下部組織の選手の育成に心血を注いでいるチームがあります。それが、FCバルセロナです。

現に2013年当時、登録されていた選手のうち、およそ7割が『カンテラ』と呼ばれる下部組織出身の選手で占められていたというデータもあるほどです。これは、勝利を前提として運営されるプロスポーツチームにおいては、驚異的な数字といえます。特に、短気で勝利至上主義といわれるスペインのサッカーリーグにおいては、なおさらです。一体、FCバルセロナでは、どのようにしてチームを育てているのでしょうか?

『FCバルセロナの人材育成術』の著者であり、かつて同チームの下部組織(カンテラ)に深く携わっていた、アルベルト・プッチ・オルトネーダ氏はこう言っています。

「我々の目的は、サッカー選手を育てるという以前に、子どもの人格を健全に発達させることにある」

これは、FCバルセロナというチームに根付いている考え方でもあります。人間として大切なことを教えた上で、一流のサッカー選手に育てる。この考えが、長い歴史を持つこのチームに、深く浸透しているのです。

実際に、監督やコーチ陣が力を注いでいるのは、以下のようなことです。

・単なる勝利ではなく、『競争して勝つ』強さを知ることで、努力することを教える
・選手と真摯に向き合い、誤魔化さずに思うところを伝え、信頼関係を育てる
・家庭を大切にする環境を整備する

まだ、あどけなさが残る少年であっても、実力が及ばなければチームを去る…。スポーツというのは実力がモノをいう世界ですから、これは仕方のないことです。その点においてはFCバルセロナも例外ではありません。とはいえ、体格が良いというだけの選手を起用し、目先の勝利だけを求めていたのでは、選手を育てることも、将来のチームを育てることも出来ない。この考え方が、軸となっているのです。

アルベルト氏は、こうも言っています。

「教育するとは、子どもを社会に送り出す準備をすることだ」

サッカー選手としての『スキル』よりも、人間としての『マインド』を育てることが、圧倒的に優先されているのです。この考えがチームにあるからこそ、FCバルセロナは強く、成長を続け、多くの人々を魅了し続けているのでしょう。

即戦力を求めて資本と労力を消費し続けるのか、それとも1人の人間として大切なことを教え、やがてチームの柱となる人材を育てるのか。あなたなら、どちらを大切にしますか?

▼参考文献
・「FCバルセロナの人材育成術」アルベルト・プッチ・オルトネーダ著/アチーブメント出版
執筆者:DR’S WEALTH MEDIA編集部
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