弱者が強者に勝つために知っておきたい5つの戦略
2021.03.30
「ランチェスター戦略」をクリニック経営に活かそう
ランチェスター戦略とは
ランチェスター戦略は、フレデリック・ランチェスターが発表した軍事法則「ランチェスターの法則」を、田岡信夫氏が経営戦略として広めたもので、その「ランチェスターの法則」には2つの軍事法則があります。
1つ目の法則は『弱者の戦略』と呼ばれるもので、「一騎打ち」・「局地戦(狭い範囲)」・「接近戦(近距離)」という昔ながらの戦い方を前提とし、戦闘力(持っている武器)が同じであれば、兵士の多い方が勝つというものです。つまり、規模の小さいクリニックが勝つためには、戦闘力を上げる戦略が必要となります。
一方で、2つ目の法則は『強者の戦略』と呼ばれ、「確率戦(機関銃のように複数の敵に対応できる武器を使う)」・「広域戦(広い範囲)」・「遠隔戦(遠い距離)」という近代的な戦い方を想定とし、攻撃力は兵力数の2乗に比例するというものです。
ランチェスター戦略を医院経営に取り入れよう
先述の法則のように、兵力で劣る小規模クリニック(弱者)が、大規模クリニックや病院(強者)に対して大きな組織が行っているのと同じ戦い方で真っ向勝負を挑んでも負けてしまうのは明らかです。
弱者が強者に勝つためには、例えば『徒歩20分圏内』や『ある最先端の治療法』など、どんな小さな範囲であっても、ある分野・グループの中でナンバー1になることが肝となります。いかに他者との差別化を図るかが鍵となるのです。
その戦略には、以下の『局地戦』『接近戦』『一騎打ち』『一点集中』『陽動戦』の5つがあります。それらは『弱者の5大戦略』と呼ばれています。
・局地戦
経営における局地戦とは、ビジネスの領域を限定することを意味します。
例えば、内科開業医の方が呼吸器内科、胃腸科、認知症専門、アレルギー専門などとあえて診療範囲を絞り、専門性を打ち出すことで、その領域における地域ナンバー1を目指すのも一手です。
・接近戦
接近戦とは、敵(他の競合するクリニック)との距離を詰めるのではなく、顧客(患者様)との距離感を詰める戦略です。
例えば、クリニックに通い始めるきっかけとして、口コミや紹介の力は強いので、地域に密着し、親近感を持ってもらったり、信頼してもらったりすることは重要です。
親近感を持ってもらう方法としては、院長先生やスタッフの人柄を知ってもらえるよう、自己紹介をクリニック内に掲示したり、定期的にメールマガジンやクリニックオリジナルの新聞を作って配布したり、クリニックのホームページやフェイスブック、ブログ、YouTubeなどで近況報告して、患者様と交流を図る方法などがあります。
・一騎打ち
ライバルが沢山いる場所ではなく、敵が1人しかいない場所で戦うという戦略です。立地的に同じ診療科の少ない場所を選ぶことはもちろんのこと、専門性や診療時間などでも他院と差別化を図り、『○○の治療をするなら◇◇クリニック!』『日曜でも診療しているのは◆◆医院』と言われる医院が複数存在しない領域を狙うことで勝算が高まります。
・一点集中
特に開業間もない頃には、利益を確保するために、できる限り多くの患者様を診たいと考えがちですが、そのような場合でも敢えて得意な治療のみに絞って診療を行うことにより、●●クリニックと言えば■■と言われるようになった事例も複数報告されています。
例えば、下北沢病院は、2016年に足の病気と糖尿病に特化するクリニックに業態変更することで、全国的に知名度が上げています。
・陽動作戦(ゲリラ戦法)
陽動戦は、本来の目的を隠して、相手をかく乱させるような、予想外のことをする戦法です。
例えば、通信会社が行うモデムの無料配布などが有名です。ここで重要なのは大手が真似できないことを行うことで、ナンバー1を目指すということです。
大手に真似されにくいことで言うと、年に数回、手書きのはがきで季節のお便りを出す方法など手間がかかるものがあります。ロバート・ザイオンスが提唱したザイオンス効果 (単純接触効果)によると、人は接する機会が多ければ多いほど、好印象を抱くといわれていますので、定期的にはがきを出すことで、何かあった時はあのクリニックに再び行ってみよう、というきっかけ作りになるはずです。
ライバルの懐に入り込んで情報を教えてもらったり、近隣のクリニックと提携したりするのも、陽動作戦と言えるでしょう。
まとめ
有名な経営戦略は複数ありますが、ランチェスター戦略を理解することで、日本で約99%を占める中小企業(診療所・クリニック)が兵力で上回る大企業(病院)に勝つ方法を見出すことがきっとできるはずです。ぜひ皆様の医院経営にもランチェスター戦略の考え方を取り入れてみてはいかがでしょうか。