医療機関におけるコンプライアンスとは?
2020.04.10
病院も無関係ではない!コンプライアンスの重要性
「コンプライアンス」という言葉が世に広く知られるようになって久しいですが、近年はより一層、企業活動に対するインパクトを増しつつあります。今回は医療機関におけるコンプライアンスについて考えてみましょう。
(※医療現場においては、コンプライアンスが「正しく服薬すること」という意味で用いられることもありますが、本記事では社会一般的に用いられるコンプライアンスについて論じています。)
コンプライアンス=社会から見た「あるべき姿」
「コンプライアンスは法令遵守を意味する」としばしば説明されることがありますが、現代の企業活動におけるコンプライアンスというものを正確に捉えるに当たっては、この説明は十分ではありません。
コンプライアンスを規定するのは、一言でいえば「社会通念」と呼ばれるものです。
その時点の時代背景を前提として、社会が考える「企業としてのあるべき姿」に対して真摯であり続けることが、コンプライアンスの本質であると言っても過言ではありません。
「企業としてのあるべき姿」には、当然ながら法令を遵守することも含まれます。
しかし、それにとどまらず、厳密には法令に違反しているとは言えないものの、世間が眉をひそめてしまうであろう行為についても厳に慎むことが、コンプライアンスの観点からは要求されるのです。
たとえばハラスメント行為や、従業員に劣悪な労働環境を強いることなどはその典型例と言えるでしょう。
医療機関においても、このコンプライアンスの問題と無関係ではいられません。病院も一般企業と同様に、社会の人々を顧客として成り立っている法人であるからです。
深刻化するコンプライアンス違反のインパクト
コンプライアンス違反を犯し、それが世間に発覚した場合の、企業イメージ・評判(reputation)の低下がもたらす甚大な影響については、既に世間に広く知られているところでしょう。
近年ではインターネット・メディアの発達による情報拡散速度の飛躍的な向上により、コンプライアンス違反は瞬く間に全国へ知れ渡り、その企業の売上に直接的かつ壊滅的な打撃を与えてしまいます。
注意すべき点として、コンプライアンスの問題は、通常時には些細な問題として見過ごされがちであるのに、有事が発生すると、それまでのツケを一挙に払うかのように甚大なインパクトを被ってしまうということがあります。
だからこそ、普段からコンプライアンスを意識した企業経営を行う必要があります。
医療機関にとっても、こうしたコンプライアンスの問題は他人事ではないのです。
医療機関におけるコンプライアンスとは?
では、実際の医療現場において、コンプライアンス遵守を徹底するためには、どのような取り組みを行うべきでしょうか。
まず最低限、法令が確実に遵守されているという状態を確保する必要があります。
たとえば、カルテは医師法により5年間の保存が義務付けられていますし、看護師等の職員の労働については労働基準法の適用があります。
日常のオペレーションの中で、こうした法令に違反する部分がないかをチェックし、問題があれば速やかに是正しなければなりません。定期的に法律の専門家に助言を求めることも有効でしょう。
そして、直ちに法令違反に繋がるものではないとしても、世間の耳目に触れた場合に問題があると思われる事象については、自浄作用が働くようにしておく必要があります。その典型例として、医療ミスの問題が挙げられます。
仮に医療ミスが深刻な結果に繋がらず、患者や医療機関自身に損害を与えることがなかったとしても、それを見過ごすのではなく、現場のチームで徹底して再発防止に努め、また必要であれば医療ミスの事実を世間に自主的に公表し、医療機関としてさらなる研鑽・改善を進めていくという決意を表明する。
このような行動こそが、社会が「医療機関のあるべき姿」として思い描いているものではないでしょうか。こうした行動は、長期的な視点で社会からの信頼を勝ち得ることに繋がるでしょう。
社会に対して誠実に向き合うということ
以上に見てきたように、コンプライアンス遵守とは、まさに社会に対して誠実に向き合うということにほかなりません。
医療機関もまた社会的な存在として、自らの社会に対する誠実な有り様というものを不断に考え続けることが、何より医療機関自身のために大切なのです。
ご自身の経営する医院が、社会に対してどうあるべきかについて、この機会に考えてみてはいかがでしょうか。