目標を達成させるための『勇気づけ』
2017.12.13
アドラー心理学に学ぶ、信頼されるリーダー像vol.2
その『勇気づけ』には、大きく分けて3つの方法があります。
①「ヨイ出し」をする
つまり、従業員の良い点を見つけて伝えるということです。
従業員の行動を改善してもらうために、ついつい悪いところを指摘してしまいがちですが、注目・関心を向けられた行動は、その頻度が増えると言われています。つまり、良い行動に目を向けると、良い行動をする頻度がますます増えていき、悪い行動が減っていくのです。
また、院長先生方は従業員の「行動」について指摘しているつもりでも、度重なると従業員は「人格」を否定されたように感じてしまいます。これでは、従業員はやる気になるどころか、かえってやる気を失ってしまいかねません。
そして、普段行っている行動のほとんどは正しい行動です。
例えば、患者様が席を立たれた後、すぐに使った器具を片付け、次の患者を案内することを任せているスタッフが、ある日片付けをせずに別のスタッフと話をしている姿を見かけたとします。このような従業員に対して、たまたま散らかったままの席を見つけてしまった時だけに「何度言ってもすぐ片付けないのは困るよ」などと言ってしまうこともあるかもしれません。
その出来ていない頻度にもよりますが、例えば100回に1回のペースで忘れてしまうスタッフであれば、100回中99回、つまりほとんどはきちんと仕事をしていると言えます。するべき仕事をせずに他のことをしているスタッフを見つけてしまうと憤りを感じてしまって、つい言葉がきつくなってしまうことがあるかもしれませんが、忘れた時だけ注目するのではなく、きちんと自身の職務を全うしている時にも「いつも気持ちよく患者様を迎えられる状態にしてくれているから、助かっているよ」などと、良い点に注目して従業員に伝えることで、だんだんミスが減っていくのです。
②「プロセス重視」の声かけを行う
仕事ではどうしても目標を達成できたか等、結果を重視してしまいがちですが、結果が出ていない場合であっても従業員は必死に努力しているということもあります。そういった場合に、結果が出ていないことを指摘するのではなく、過程を重視した声かけを行って『勇気づけ』する方法が2つあります。
1つめは、最初からの成果を見て、それを従業員に伝える方法です。
例えば、半年前から1日の患者数を平均50人にするという目標を設定していたのに、現在の平均が40人であったとします。しかし、半年前が平均30人であれば、10人も増えているということになります。この点に注目して、「積極的に患者さんに声かけを行ってくれたことで、1日平均の患者数が10人も増えました。努力してくれているね。」と伝えることで、従業員は努力していることを知ってもらえて嬉しく感じます。
2つめは、現時点では達成できていなくても、このまま続けていれば達成できそうという見込みがある時に、それを従業員に伝える方法です。
先ほどの例において、このまま伸びれば、1日平均50人の目標は達成できそうにも思えます。
「確実に伸びてきているので、このまま患者さんへの声かけを頑張ってくれたら、第1目標である1日平均50人の目標は達成できるから、もう少し頑張ろう。」といった声かけを行うと、従業員は、今までの努力は無駄ではなかったのだから、目標を達成するために、もう少し頑張ろうと思うようになります。
③「失敗から学ぶ」姿勢を身につける
従業員が何か仕事で失敗した時に、従業員に対して「なぜ失敗したのか」と責めたくなってしまうこともあるでしょう。しかし、責められると従業員は頑なになってしまい、ともすればこれまで築いてきた信頼関係も崩れてしまうかもしれません。従業員を責めても失敗してしまったものは元には戻りません。それよりも失敗を次に活かすことが重要です。
例えば、次回の定期検診の予約をすすめる声かけを忘れて、そのまま患者さんを帰してしまったとします。こういった時に、従業員のミスを責めるのではなく、どうすれば次は同じミスをせずに済むかを一緒に考えましょう。改善策を一緒に考えると、従業員からすれば、従業員に任せきりにしない、頼りがいのあるリーダーとして、院長先生方を信頼するようになります。
このように、従業員の言い分をしっかり聞いて一人の人間として尊重することで院長先生方ご自身に対する信頼を得られ、さらに、従業員目線にたった目標設定・管理を行うことでリーダーとしての信頼をも得られるようになります。
そうなれば、従業員が積極的に働いてくれるようになります。是非、試してみては如何でしょうか。
『人を育てるアドラー心理学』 (青春出版社、2016年9月) 岩井俊憲著