衝動的な怒りをコントロールする『コーピングマントラ』
2017.11.29
アンガーマネジメントVOL.2
ただし、怒りの感情には、時にコントロールできないほどの強いエネルギーがあるため、そう簡単にはいかないのも、また事実です。特に、瞬発的な怒りというのは、コントロールが難しいもので、「ついカッとなってしまって…」という経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
思うままにその感情を相手にぶつけてしまっては、取り返しのつかない場合もあるため、今回は、そのような瞬発的な怒りへの対処法をご紹介します。
激しい怒りを感じた際、瞬間的にその感情を抑え込むのに役に立つのが、『コーピングマントラ』という手法です。ちなみにコーピングとは『切り抜ける』、マントラは『呪文』という意味です。
これは、怒りを感じたときに、ある特定の言葉を唱えることで怒りの感情を抑え込む方法です。
たとえば上司や患者さんから理不尽な発言を受けたとき、ただ怒りに任せて言い返すだけでは事態の悪化を招いてしまうのは容易に想像が付くでしょう。そうならないよう、相手に怒りをぶつける前に、自分を落ち着かせるための言葉を心の中でくり返し唱えることで、気持ちを落ち着かせるのです。
言葉自体は、何でも構いません。「冷静に、冷静に・・・」や、「怒ったら負け、怒ったら負け・・・」のようなものでもいいですし、その状況とまったく関係ないこと…たとえば子どもの名前をくり返し呼ぶとか、前日の夕食を思い出してみることで気を紛らわせるという方法もあります。唱える言葉を、予め決めておくと衝動的な怒りを相手にぶつけてしまうことへのリスクヘッジとなり、正確にその怒りの原因を相手に伝える機会を持つことにつなげることができるでしょう。
怒りを感じた状況から気持ちを一旦離すことで、怒りの感情を和らげる効果もあります。もちろん、怒りを抑え込むというのは簡単ではありませんが、これは技術です。技術ですから、訓練すれば誰にでもできます。
「ついカッとなって・・・」
「思わず口にしてしまった・・・」
「そんなつもりじゃなかったのに…」
人間ですから、誰にでもそんなことはあります。理屈では分かっていても、完全にコントロールできないのが『感情』というものです。コーピングマントラも、100発100中というわけにはいかないでしょう。
ですが『怒り』というのは、見方を変えれば自分の大切なものを守るための感情でもあります。自分の信念や生活環境、あるいは大切な人を守るために、『怒り』という感情は存在しています。
しかし使い方を間違えれば、守ろうとしたものを守れないばかりか、破壊してしまうこともあります。もしかするとあなたは、「コーピングマントラなんて単なる小手先のテクニックじゃないか」と思われるかもしれません。ただ、仮にそうだとしても、あなたの大切なものを守れるなら、その可能性が1%でもあるなら、あなたの大切な医院と家族、そしてスタッフを守るためにも、軽視せずに活用して頂きたいと思うのです。
ご紹介した小手先のテクニックが、ほんの少しでもあなたの大切なものを守ることに役立つのなら、そんな嬉しいこともありません。