本当に、海を超えなければ『人財』はいないのか?
2017.02.08
シェリル・サンドバーグ氏に学ぶ『女性の活用』Vol.2
こうした現状を打破するべく、多くの企業が海外へ人材を求めるようになりました。人手不足による店舗の閉鎖や倒産が年々増加していることを考えれば、当然の成り行きといえます。しかし、何か大事なものを見落としていないでしょうか。
厚生労働省が発表したデータによれば、育児中の無業女性のうち、6割が再就職を望んでいます。ですが現実問題として、彼女たちが活躍できる環境は極めて少ないと言わざるを得ません。長時間労働の慣習や保育施設の不足といった問題が、足かせとなっているのです。『ワークライフバランス』という言葉がもてはやされていますが、彼女たちが抱えているのはもっと深刻な悩みです。
『生活のために働きたいけど、受け入れてくれる環境がない』
これが、彼女たちの本音であり、現実です。好き好んで、アルバイトで不安定な収入を得ているわけではないのです。
「本当に平等な世界とは、女性たちが国家や企業の半分を運営し、男性たちが家庭の半分を運営するという世界」
こう語るのはfacebookのCOOであり、ジェンダー問題などの講演も行うシェリル・サンドバーグ氏です。彼女もまた2児の母であり、育児と仕事の両立に悩まされてきました。彼女は著書『LEAN IN(リーン・イン)』の中でこう綴っています。
「とにかく時間が足りない。それに、忍耐心も。まだ子どもに翌日の服を着せて寝かせたことはないが、そうしておけば良かったと思った朝は何度でもある。朝の貴重な15分を節約するために」
15分という時間を必死にやりくりしている母親は、彼女だけではありません。そしてそれは、毎日のことなのです。それでも働かなければ子供たちを食べさせていけないし、仕事ばかりになっては子供たちを育てることはできません。
お分かりでしょうか。彼女たちが安心して働き、子育てのできる環境を作ることができれば、多少なりとも人材不足の解消につながるはずです。そして長い目で見れば、それは少子化対策にもつながります。
時間とコストをかけて海を渡るのも、大切なことかも知れません。しかし、すぐ側に有能な人財がいることを忘れていませんか? それに気付き、彼女たちが最大限力を発揮できるような環境をつくっていかなければ、男性女性問わず協力して家庭を守ることができなければ、日本の経済はこのまま縮小の一途を辿ることになるでしょう。それを止めるのが、経営者としての役目ではないでしょうか。