リーダーに求められるのは『嫌われること』なのか?
2016.08.31
リーダーシップと組織づくりVol.1
これは、組織におけるリーダーの在り方について語られる際、必ず出てくるフレーズです。たとえ部下に嫌われようとも、正しいと思ったことを貫き通す強い意志。それは確かに、リーダーに備わっているべき資質の1つかもしれません。しかし現実問題として、それほど簡単なことではないというのも、また事実です。
少し伝え方を間違えれば、やれパワハラだ、セクハラだといってリーダーの立場やポジションそのものが脅かされる。そうして部下の言動にふり回されるリーダーも、少なくありません。それに、たとえそれが仕事であれ、「みんなと仲良くやっていきたい」と思うのは、1人の人間としてごく当たり前の欲求です。嫌われることもあるかもしれない。でもなるべくなら、和気あいあいと仕事をしたい。それがリーダー達の本音ではないでしょうか。
『嫌われる勇気』(岸見一郎・古賀史健 著/ダイヤモンド社)が発行部数130万部を超える大ベストセラーとなった背景には、そうしたリーダー達が抱える憤りや悩みの深さがあるのかもしれません。
この『嫌われる勇気』の中では、対人関係という、ともすれば抽象的になりがちなテーマが、哲人と青年の対話という形で極めてロジカルにまとめられています。
例えば『すべての悩みは対人関係の悩みである』という前提のもと、世界はシンプルで誰でも幸せになれるとした上で、『幸福とは貢献感、つまり誰かの役に立っているという思いである』と結論づけています。そしてその過程において、以下の言葉が並びます。
「他者が自分に対して下す評価も、嫌われることも、それは他者の問題である」
「他者の期待など、満たす必要はない」
「自由とは、他者から嫌われることである」
「他者をほめてはいけないし、叱ってもいけない」
「いちばん大切なのは、他者を評価しないということ」
もちろん、これだけを読むと多くの疑問が湧き上がってくるのですが、その疑問を青年が哲人に問いかけることによって1つずつ丁寧に解説され、『幸福とは貢献感』という結論につながっていきます。
読み終えたとき、この物語に対する解釈や感想は人それぞれでしょう。ただ間違いなく考えさせられるのは、組織においてリーダーが求められるものの本質です。それは好かれる・嫌われるという単純なものではなく、何のために存在するのかということ。そして組織をあるべき姿に育てるには、リーダーにどんな行動が求められるのか、ということです。
もちろん、考えたからといってすぐに答えが導きだせるとは限りません。ですが、考える時間を持つこと。それもまたリーダーに求められる行動なのではないでしょうか。