女性マネジメントの第一歩は『一人ひとりと対話すること』
2016.07.27
眞鍋監督に学ぶ女性マネジメントVol.1
この日、全日本女子バレーボールチームは28年ぶりにオリンピックでメダルを獲得しました。監督としてチームを率いていたのは、現在も監督を務める眞鍋政義氏です。
全国から集まった一流の、そして個性的な女性選手をまとめあげ、オリンピックという舞台でメダルを手にするまでに成長させた眞鍋監督。彼は一体どのようにして女性選手をマネジメントし、チームを育て上げたのでしょうか。
著書(『女性マネジメント』:扶桑社)の中で、監督はこう述べています。「女性のマネジメントには、男性に対するとき以上に信頼関係を築くことが必須。そのためには日々コミュニケーションを取り、徐々に距離を縮めていくしかない」と。
姉妹もおらず、高校から大学、そして実業団と男ばかりの環境で過ごしてきたこともあり、初めて女子チームの監督を引き受け選手たちと対面したときのことを、「まさにカルチャーショックだった」と語っています。
慣れ親しんだ男子バレーとはまるで別世界。新任の挨拶で熱弁をふるってもまるで反応がなく、頷くことさえしない。これは著書の中でも語られていますが、男性が肩書きや実績で人を見る傾向が強いのに対し、女性が見るのは人そのものです。
そして、自分の意見を主張して集団の中で目立つことを好みません。つまり相手が誰であれ、初対面の場で熱弁に感情が流されることも、積極的なスタンスを取ることもないのです。医院のスタッフは女性が多いですから、院長先生方も思い当たる部分があるのではないでしょうか。
そんな状況に困り果て、何人もの女子バレーチームの指導者に相談したそうです。そこで受けた多くのアドバイスで得たのは、『一人ひとりと1対1で対話すること』でした。マネジメントの前に信頼関係を築くことが前提で、それには1対1の会話が不可欠。ここにたどり着いた眞鍋監督は、文字通り一人ひとりとの面談を重ねていきました。
全日本チームの監督となった今も、選手を招集してから1週間かけ、一人ずつと面談をしているそうです。目的はコミュニケーションを円滑にすることにあるため、話題は何でもよく、時にはまったくバレーボールの話をしないこともあるのだとか。
ただ、初めて全日本チームに招集された選手など、共通の話題がない場合、話すことがあまり得意ではない選手の場合など、話題に困るケースも多いようです。そんな時は、女性スタッフの力を借りてその選手が好きな食べ物や趣味などを聞きだし、話のネタを仕込んでおくこともあるといいます。むしろバレーボールに関係ない話題の方が、選手の緊張を和らげ、コミュニケーションも取りやすくなるようです。
単に信頼関係を築くためのみではなく、面談を通じて、どんなタイプの選手なのかを知り、メンタルやコンディションの確認もします。それによってチームの状態を把握し、戦力分析もできるというわけです。これは医院にも応用できそうですね。
肩書きや実績といった『権威』ではなく、『人そのもの』で信用できる相手かどうかを判断する。そんな特性を持つ女性だからこそ、1対1の対話でゆっくり信頼関係を築いていくことが大切なのですね。
今どなたかの顔が頭に浮かばれた方は、この機会に是非面談の時間を設けてみてはいかがでしょうか。