優秀な職員を定着・育成するための秘訣とは?
2016.05.25
人事労務コラム「クリニックの人事マネジメント」Vol.4
職員がクリニックを辞める大きな要因の一つに、「仕事のやりがい」があります。いくら仕事を頑張っても誰も自分のことを見てくれなかったり、上司からの指示が二転三転したりするようなことがあれば、職員は仕事のやりがいを失います。「職員が定着しない」と嘆く先生に限ってこのようなことが疎かにされているようです。
先生は開業すれば医師であるとともに経営者にならなければなりません。ご自分の診療以上に、クリニックで働く職員のことを考えなければならないのです。先生がクリニックの「マネージャー」として、職員を育てるための秘訣を以下の3つのポイントに分けてお伝えします。
①職員の日常の働きぶりをよく観察すること
先生は、診療時間中は患者さんの診察などをしなければならないので、すべての職員の行動をつぶさに観察するのは不可能です。直接自分の目で見ることができない職員であっても診察の合間をみるなどして、先生の方から仕事の進捗状況や困りごとなどがないか声を掛けて下さい。定期的に朝礼や全体ミーティングを開くなどして、報・連・相やコミュニケーションの促進を図るのも大切です。
②職員からの相談などは親身になってよく聴くこと
職員から相談を受けても忙しいと、ついつい聞き流したり、後回しにしてしまったりしがちですが、これではいけません。相談を受けた時が手を離せない状況だったとしても、例えば「30分後に時間をとります」とか期限を決めて相談に乗ると相手も安心するでしょう。
また、相談を受けても、相手の話を聞かずに一方的にご自分の話をしたり、ましてや説教を始めたりするのはNGです。まずは傾聴の姿勢で職員の話をよく聞いて、出来ればその場で適切なアドバイスをしてあげましょう。
③上司としての知識・見識を磨くこと
部下は尊敬できる上司でなければついてきてくれません。医師としてだけでなく、上司としての知識・見識を磨くことも大切です。仕事の指示が二転三転してしまう、職員の人間性を尊重しないなどの言動があると、職員からの信頼を失ってしまうでしょう。
■真剣に考えたい、クリニック開業時の職員雇用
昨今、クリニックにおける労務トラブルが増加していることを受けてか、開業時の職員雇用の仕方を積極的に学んでおられる先生が増えています。事実、私の事務所にも開業希望の先生方からのご相談がたくさん寄せられていて、具体的なご相談内容としては、職員募集や面接の仕方、勤務時間・給与水準の決め方、雇用契約の結び方などが多くなっています。また、開業当初から職場環境を良くするため、社会保険*に加入したり、就業規則を作成したりされる先生も増えています。
*社会保険(健康保険・厚生年金保険)は、個人事業主として開業した場合、職員4人以下であれば任意加入、5人以上で強制加入という制度になっています。
患者さんに選ばれる良いクリニックを作るには、職員の協力が成否を握るといっても過言ではありません。しかし、最近は法律や権利関係に関心が高い職員も多いので、雇用条件をあいまいにしたまま見切り発車でスタートして、痛い目をみた先生方もたくさんいらっしゃいます。職員雇用に不安がある場合は専門家にきちんと相談して、スタート時に雇用体制をしっかり固めておくのが賢明だと思います。
本コラムが先生方のより良いクリニック経営の一助となることを願い、結びの言葉とさせていただきます。
執筆者:社会保険労務士 長友秀樹
●社会保険労務士・人事コンサルタント
長友社会保険労務士事務所代表。大学卒業後、大手食品メーカーにて医療施設専門向け商品の営業を担当。2009年に社労士資格を取得すると会計事務所などで就業規則作成などに従事。そして2012年、医療に特化した社労士事務所を設立。「人」を中心に据えたコンサルタントに定評がある。
長友社会保険労務士事務所:nagatomo-office.com