職員の雇用は“入口”が重要です
2016.05.11
人事労務コラム「クリニックの人事マネジメント」Vol.2
職員の人事マネジメントで特に重要といわれるのが “入口”と“出口”です。入口とは入職時、出口とは退職時のことですが、このように言われるのは、職員とのトラブルの多くがこの2つの時期に起こるからです。
入口の段階で最初のボタンの掛け違えがあると、職員は不満を抱えながら働くことになります。そうなると、次第にモチベーションは下がり、酷いときには周囲の職員へ悪影響をまき散らすこともあります。そうなってしまわないよう、お互いに大事なことは最初のうちに確認し合うことが大切です。ここでは入職時に、職員に対して伝えておくべき5つのポイントを整理してお伝えします。
職員の入職時に伝えてほしい5つのポイント
【1】クリニックの診療方針
クリニックの理念や治療方針、地域医療への取り組みなどを伝えて下さい。クリニックで医療従事者としてモチベーションを高く持って働いてもらうために、先生の考え方に共感していただくことは非常に大切なことです。
【2】担当する業務内容
先生からすれば「やって当たり前」と思うことでも、人によって認識は様々です。また、同じ看護業務、医療事務業務でも、職員が過去に働いてきたクリニックによって、やり方はそれぞれ違ったりします。出来れば、クリニックの業務内容を分担表や、フローに落とすなど書面にし、説明しておくと誤解がなくなるでしょう。
【3】職員の就業体制
試用期間はいつまでなのか、診療開始前のカルテや機材等の準備時間は早出残業に当たるのか(その時間も含めた始業時刻なのか)、残業時間や有給休暇の取扱いや申請方法など、必ず書面にして職員に伝えましょう。非常にトラブルが多い分野ですので、これらを就業規則として作成するのもよいでしょう。
【4】就業上のルール・遵守事項
挨拶や言葉使いなどのビジネスマナー、報・連・相や身だしなみといった社会人としての当たり前のルールから、秘密漏えい禁止や兼業禁止、セクハラ・パワハラの禁止といった禁止事項まで、職員に守ってほしいルールをまとめておき、朝礼やミーティングなどの時間に職員に伝えましょう。
【5】給与の体系
基本給や諸手当、交通費の金額を文書で通知するのはもちろんですが、昇給や賞与、退職金の有無についても曖昧にせず、きちんと伝えておきましょう。特に昇給・賞与については、クリニックの業績や本人の勤務成績が良ければするが、それは必ずしも約束されたものではないということを、きちんと伝えておきましょう。
入職時に「渡すもの」と「もらうもの」を整理
入職時については、新しく入った職員に安心して気持ちよく働いてもらうため、「渡すもの」と「もらうもの」を整理しておくとよいでしょう。
職員が入職すると、労働条件によっては雇用保険・社会保険、税務上の手続きが発生します。これらの手続きは、職員から情報提供を受けないと進められませんので、もれなく必要な書類を提出してもらいましょう。また、入職後のリスク管理のため、誓約書や身元保証書を提出してもらうとよいでしょう。
【渡すものの例】
【もらうものの例】
マイナンバーって何をすればいいの?
本年1月から施行され、ニュースやCMでもよく登場するマイナンバー制度。既に昨年10月から企業や個人に固有の番号が配布され、本格運用が始まっています。でも、マイナンバー制度が始まって何が変わったの?と未だ疑問をお持ちの先生も多いかと思います。
個人の生活でみると、一つの番号に住民票や税金、社会保険関係の情報が紐づけられるので、今まで役所で手続きをするのに色んな窓口にいって、何枚もの書類を集めて、といった労力が減り、行政の効率化にもつながるメリットが期待されています。
一方で、事業主にとっては、源泉徴収票の発行や社会保険関係の手続きのために、職員とその家族のマイナンバーを収集、保管しなければならなくなりました。また、そのためのシステム変更や情報管理のためのコスト増・事務負担増が心配になりますし、今から具体的にどんな準備をしておかなければならないのか、ということも気になります。以下に、クリニックがマイナンバーを取り扱う際に準備することの概要をまとめておりますので、ご参考にして下さい。
【マイナンバーに関する準備事項】
○取扱い規程の策定
○組織体制の整備(役割分担表、連絡体制、情報漏洩時の対応など)
○取扱い担当者の教育
○取扱い場所の明確化
○機器、媒体、書類等の盗難防止
○電子媒体等持ち出し時の漏洩防止
○マイナンバーの管理、削除
○システム利用時のアクセス制御
執筆者:社会保険労務士 長友秀樹
●社会保険労務士・人事コンサルタント
長友社会保険労務士事務所代表。大学卒業後、大手食品メーカーにて医療施設専門向け商品の営業を担当。2009年に社労士資格を取得すると会計事務所などで就業規則作成などに従事。そして2012年、医療に特化した社労士事務所を設立。「人」を中心に据えたコンサルタントに定評がある。
長友社会保険労務士事務所:nagatomo-office.com