ただ“仕事”だけを教えるのではなく、“人生”を伝える
2015.04.15
連載:あの企業に学ぶVol.2
飲食店といえば離職率の高い業種として有名ですが、そのお店のスタッフは学生なら卒業まで、フリーターや正社員も、店で学んだことをカバンにつめこんで自分の新しい道を進みはじめるまで、在籍する方がほとんどです。10年以上在籍したスタッフも1人や2人ではありません。そのほとんどがアルバイトスタッフであるということを考えると、一般的には考えにくいほどですが、これはまぎれもない事実です。
なぜでしょうか?お店を卒業したスタッフたちに話を聞くと、みんな口をそろえて、こう言います。
『いろんなことを教わりました。本当に…』
オーナーにも話を聞きました。そして、その理由がわかったのです。オーナーが彼らに教えていたのは、仕事ではありませんでした。では何を教えたのか。それは、【彼らが今後生きていく中で大切なこと】でした。
大切なこと…それは一般論ではありません。ですから、相手一人ひとりに対して教えることも違います。たとえば、キャベツの扱い方を教える場合。結婚を控えた女性スタッフには、『家庭でキャベツを丸ごと使うことはあまりない。だから、日持ちさせるには…』と教えます。そして将来自分の店を持ちたいと考えているスタッフには、『このキャベツは水気が少ない。仕入れの時に見極めるには…』と教えるのです。
同じことを教えるのにも、相手によって伝え方や内容が違うんですね。
経営者でない限り、誰もがいつかは辞めていきます。卒業、就職、結婚、独立、家庭の事情、年齢の問題…きっかけは様々です。世の中の99%の経営者や企業は、スタッフに仕事そのものを教えます。もちろんそれは間違いではありません。しかし、このオーナーは仕事を通じて “辞めていくことを前提に”、相手にとって必要なことを教えていたのです。
もちろん、反論もあるでしょう。『仕事は仕事だよ。報酬も受け取るわけだし』『辞めた後のことまで気にしなければいけないの?』などなど。確かにそうかもしれません。ただ、30席にも満たない小さな創作料理店から、何十人ものスタッフが卒業し、その後も家族ぐるみで付き合いが続き、お客様も巻き込んで繁盛しているのは事実なのです。
どうでしょう?スタッフからこんなふうに思われる医院も、悪くないのではないでしょうか。
■バックナンバー記事
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