夏のモスクワへ出かけてみませんか？800年以上の歴史を誇るモスクワは、ロシアの芸術・文化・交通・政治・経済の中心地です。モスクワの輝かしい鮮やかな彩色を施された建造物は見る人を圧倒し、赤の広場に堂々と鎮座し、世界遺産に認定されている聖ワシリイ大聖堂は、私たちの想像力をかきたてる魅力を持っています。
今回はそんなロシアの人々に古くから夏の楽しみとして愛されているダーチャとアイスクリームについてご紹介します。

迷路のような回廊でつながる聖ワシリイ大聖堂

初めて正式にツァーリと呼称したイワン雷帝が、16世紀に建築を命じたことでその基礎が築かれた聖ワシリイ大聖堂は、複数の小さな教会の集合体です。
メインの聖堂を8つの小ぶりな聖堂が取り巻くように建てられ、それぞれ回廊でつながっています。
特筆すべきはその外観で、テトリスでも採用されたその外観は、おもちゃ箱から飛び出したかのようでもあり、マジパンで細工をしたお菓子の建物のようにもみえます。
独特の彩色とクーポルと呼ばれる玉ねぎのような丸屋根が印象的な外観は、赤の広場でも独特の存在感を示しています。
恐怖政治で知られたイワン雷帝が命令した彩色や装飾ということではなく、17世紀以降に徐々にカラフルな外観になっていったようです。
また、イワン雷帝が、この美しい大聖堂を超える建物を作ることができないようにと、建設に関わった二人の匠の目を潰すように命じたとか、ナポレオンがパリに移築できないのであればと爆破を試みたとか、ソヴィエト政権が邪魔に思い撤去しようとしたなど、美しい聖ワシリイ大聖堂には、様々な伝説が残っています。
ワシリイの名前は、16世紀に起きたモスクワの大火災を予言した聖愚者ワシリイをまつる小さな聖堂が加えられたことに由来しています。

ボロトフ・ダーチャホテル

ロシア人の心の拠り所、ダーチャを体験できる『ボロトフ・ダーチャホテル』というエコ・リゾートがモスクワ郊外にあります。ダーチャとは、農園付きの田舎の邸宅のことで、英語ではサマー・コテージと訳されます。
トゥーラ州に位置するボロトフ・ダーチャホテルまでは、モスクワから南西に約110キロ、車で約1時間半の道程で、特急とタクシーを使っても行くことができます。このホテルの3つのコンセプトは、“庭園のように手をつけていない自然”、“快適さ”、“文化”で、環境への影響を最小限に抑えたエコ・リゾートで、18世紀に建てられたアンドレイ・ボロトフのダーチャを復元し、現代風にアレンジを加えて宿泊施設として営業しています。
このダーチャは、“ビッグ・ダーチャ”としてアイコン的な役割を果たしているもので、1階は共用のリビングルーム、ベランダ、サマーテラスがあり、2階には宿泊用の4つの部屋が用意されています。
北欧風納屋をイメージした、7つの部屋をもつホステル“オランジェリー”、4棟の独立したコテージ、そして近隣のボロトフ村にあるヴィラもレンタルすることも可能です。
ボロトフ・ダーチャホテルでは3食ともゲストみんなで大家族のようにいただきます。もちろん材料は、地元の新鮮な食べ物を使っています。
新鮮な空気を吸い、静寂を楽しみ、ただそこに居る喜びを感じる場所、ここにあるのは誰もがくつろげる田園風景なのです。ロシア人の詩人、サムイル・マルシャークの戯曲『森はいきている』を口ずさんでしまいそうな、森や小川に囲まれたボロトフ・ダーチャホテルへお出かけになってはいかがでしょうか。

ソヴィエト・アイスクリーム

モスクワは北緯55度（日本の最北端より10度北でスコットランド東部のエディンバラや北アイルランドのベルファストとよく似た緯度）に位置していますが、意外にも真夏に30度を超える日が稀にあります。
エアコンの設置があまり一般的ではないロシアでは、緑の木陰を見つけたり、郊外のダーチャへエスケープしたり、アイスクリームを食べて体温を少し下げて夏の暑さをしのぐのが一般的です。　
ソヴィエト時代の1941年に、アイスクリームの品質管理基準が定められ、「天然の材料のみを使うこと」と決められていました。このように、ソヴィエト時代には私たちが知らない究極の贅沢があったのです。
90年代にソヴィエト連邦は解体され、輸入物のアイスクリームが市場に入ってきましたが、最近ではソヴィエト時代から続くレシピで製造されたアイスクリームの人気が再燃しています。

まとめ：ロシア文化の魅力に触れ、シンプルで深い喜びを感じる旅

その広大な国土を持つことから、日本から近いようで遠い国、ロシア。モスクワの世界遺産、聖ワシリイ大聖堂を訪れ、国民的な心の拠り所であるダーチャの体験や天然の材料だけで作られたアイスクリームを食べて夏のロシアを堪能してみませんか？
モスクワでは知的好奇心も刺激され、田園風景のダーチャではシンプルで深い喜びが湧いてくることでしょう。