世界遺産の保有数が世界一で、訪れる人を決して退屈させない国。それがイタリアです。
ローマ、ヴェニス、ミラノ、フィレンツェなどの人気のある都市は、世界中からの観光客で一年を通して賑わいを見せています。
これらの都市滞在の旅行では、歴史的な建造物の見学、有名な美術館巡り、オペラ鑑賞、ブランド店でのショッピング…と、いくら時間があっても足りないというのが本音でしょう。
しかし、はるばるイタリアまでやって来て、３０分刻みのスケジュールに追われて過ごすのはちょっと残念な気がしませんか？
そこでいくつもの観光名所を巡る慌ただしい旅ではなく、農家に滞在して、地元のスローフードや自然を満喫するイタリア旅行について紹介します。

ガイドブックは閉じてその日の気分で予定を決める

鳥のさえずりと、イタリアンエスプレッソの深く芳ばしい香りの中で目覚める朝。
朝食をとった後は、ぶどう畑が広がる丘を一望できるテラスに座り、ずっと読みたかった本のページを開く。
採れたての野菜と手打ちパスタを使ったシンプルで優しいイタリア版「お袋の味」の昼食。
ぽっかりと空いた時間にサイクリングで近くの村まで行き、夕食用のパン、チーズ、生ハム、そして極上のワインを調達。

こんなリラックスしたイタリア滞在を約束してくれるのが「アグリツーリズモ」です。

アグリツーリズモとは

アグリツーリズモとは、イタリア語のアグリクルトゥーラ（農業）とツーリズモ（観光）の２つの単語を組み合わせた言葉です。トスカーナ州で1960年代に農村の過疎化を食い止めるのと、田園環境保護を目的に考案されました。
当初は農家がツーリストに宿泊場所を提供し、ツーリストが宿泊代の代わりに農作業を手伝うというシステムでしたが、近年では地元に根ざした食文化、自然の中でのアクティビティー、そして趣味を楽しめる宿泊施設として、イタリア全土に普及しています。
現在アグリツーリズモとしてツーリストに宿泊施設を提供するためには、以下の条件を満たすことが義務付けられています。

• 農業に従事していること
• 自家製の生産物、地元の伝統農業生産物の供給
• 農業、林業、動物飼育に関連したアクティビティー
の提供
• 地域の田園遺産の価値を高めるトレッキング、乗馬、マウンテンバイクなどのアクティビティーの提供

アグリツーリズモの最大の魅力は、このように地元の食文化や自然を通じ、その土地の文化と人々の生活に触れられることです。

地域色を生かしたアグリツーリズモ

南北に長いイタリアは、地域により気候、自然の風景、農産物、名産品が大きく異なります。
アグリツーリズモ発祥の地で、イタリア中部に位置するトスカーナ州は、ぶどう栽培が盛んで「キャンティ」を代表とする美味しいワインが数多くあります。ワイン好きならここでのワインセラー巡りは外せません。

太陽が降り注ぐ南イタリアでは、レモンやオリーブの栽培が盛んです。紺碧の海岸線が美しいカンパニア州のアマルフィ海岸で育ったレモンを使用したリキュール「リモンチェッロ」や、高品質の「エクストラバージンオリーブオイル」は、日本へのお土産としてお勧めです。

アルプス山脈の麓の北イタリアに位置するピエモント州は「スローフード」の運動が始まった場所です。ここの名産物はトリュフで、特に白トリュフは高級食材として高値がついています。香りの高いトリュフ入りリゾットは、お米好きの日本人の口にも合うはずです。
山が近く自然に恵まれたこの地は、夏はトレッキング、冬はウィンタースポーツが楽しめます。

簡素な部屋から豪華なヴィラ（一戸建て）まで

農家の母屋内にある簡素な部屋から、プール付きの高級ヴィラ、レストラン併設のところまで、宿泊施設のタイプは多種多様です。
母屋内の宿泊ならオーナー家族との交流の機会も多くなり、イタリア農家の暮らしをより体験できるでしょう。また「誰にも気兼ねせずにゆっくりとプライベートな時間を過ごしたい」といった希望をお持ちの方には、離れの一軒家タイプがお勧めです。

魅力的なアクティビティー

農作業体験、ワインセラー巡り、チーズ作り体験、料理教室、トレッキングツアー、陶芸教室、乗馬、サイクリング、ヨット、パラグライダー、ヨガ、イタリア語教室など、アグリツーリズモではバラエティ豊かなアクティビティーが用意されています。
イタリア語は話せないという方でも、多少の英語ができる場合には、アクティビティーの選択肢も広がります。

予約方法

イタリアを専門に扱う旅行会社では、アグリツーリズモに宿泊するプランを取り扱っています。
しかし「こだわりのアグリツーリズモを自分で探したい」、または「語学に自信がある」という方は、直接予約できるサイトにアクセスするのも良いでしょう。
行きたい場所、期間、人数、食事の有無、予算、アクティビティーなどを入力し検索すると、条件にあったアグリツーリズモがリストアップされます。

「時間に追われる旅ではなく、時間を楽しむ旅をしたい」
そう思ったら、次の休暇はイタリアで農家滞在をしてみませんか？

参考
https://www.agriturismo.it/en/
http://en.agriturismo.com