悩みの90%は弁護士に相談すると大抵解決の道筋が見えます
2014.12.25
弁護士 嵩原安三郎氏インタビュー
京都大学卒業後、29歳で司法試験に合格。協和綜合法律事務所に勤務し労働問題を専門的に扱う。2006年から裁判員裁判の実務対応研究チームに参加し広報の一環として日本テレビ「情報ライブ ミヤネ屋」に出演することに。同時期にフォーゲル綜合法律事務所を開所。現在8名の弁護士事務所に成長し、代表弁護士として労働問題をはじめとした様々な問題に携わる。
スタッフとのトラブルに関する相談が多いですね
嵩原安三郎氏(以下、嵩原):高度な法律問題がからむ依頼からかなりプライベートな依頼まで関わりますからね。僕ら弁護士には、法律で守秘義務がありますから、そういう意味では安心して利用できるんだと思います。愛人さんが絡む財産問題などもあるのですが、僕はそういう依頼も引き受けていますよ。
嵩原:今のところはご紹介いただいたり、あとは僕、労働問題が得意なのですが、そういうセミナーや講演会に呼ばれて、そこでお声掛けいただいたりとかですね。
嵩原:あと、お医者さんが集まる会みたいなところに参加できれば知り合う機会ももっと増えると思うのですが、残念ながら今のところそのような会には異業種である私たちはなかなか参加させてもらえませんね。
嵩原:そうですね。外国と違い、日本では弁護士はあまり好かれてはいないようですね(笑)。また、弁護士のフィーが高いことも原因でしょう。もっと使い勝手のよい弁護士費用の保険などがあれば、みなさんいろいろなトラブルを弁護士に頼みやすくなるはずです。近いうちにどうにかして実現したいと思い、現在構想中です。
嵩原:医療事故や相続関係のトラブルまでいくと、協会の顧問弁護士に依頼するパターンが多いようです。しかし、もうちょっと身近なトラブル、例えばスタッフとのトラブルなどについては一人で抱え込んでおられるようです。
例えば、男性医師は女性スタッフに総スカンくらうと太刀打ちできません。以前、ベテランの女性スタッフが男性医師に反発して突然退職したとき、自分のパソコンのデータを全部消してしまうというトラブルがありました。慌てて業者を呼んでデータを復旧したのですが、2割は戻らなかったとか。
また、あるスタッフが大きな問題を起こしても、就業規則を定めていなかったために解雇できなかった例もあり…悩まれる方が多いです。
嵩原:『弁護士は裁判のときだけ』という誤解はよく聞きますね(笑)。僕らには守秘義務があるのだから、基本的には何でも言ってほしい。例えば「自分に突然何かあったときに愛人さんに連絡して欲しい」とか、「突然死したときに家族にどうしても見られたくない段ボール箱がある」というときに、予め遺言書を作成して、もしもの時に僕らが処分したり…。
もっと弁護士が「できること」を発信すべきだと思っています。僕も現在、「私たちはこういうことができますよ」という「メニュー表」のようなものを作り、また料金も「お試し料金」や「本格依頼」などに分けておくという風にして、相談する側から利用しやすくするための用意をしています。
また、お医者さんは忙しいので、通う時間がないのならご要望に応じてこちらから伺うこともさせていただいています。
弁護士をうまく使えるように用意しておくことも大事
嵩原:よく相談を受けるのは、お子さんについてのトラブルですね。例えばやんちゃなお子さんがお友達と3人で何か物を壊して300万円損害が出たとする。親としては弁償しなくてはならない。でも他のお友達のご両親は金銭的余裕がなく、結局裕福なお医者さんの家庭だけが弁償金の全額を払う事態になってしまったということもありました。
そういうことが続くと、子供たちの中でも『あいつの親は金を出すぞ』ということが広まり、悪さをするときに必ず医師のお子さんを仲間に混ぜるように企んだりします。これは教育上非常に問題です。
嵩原:その通りです。何でここまで放置したんだろうというケースが多いですね。やはり面倒くさいとか忙しいとかいうこともあるのだと思います。それを解決するためには、例えば弁護士が定期的にご家庭や職場に立ち寄って30分雑談する体制があってもいいし、代わりに税理士やコンサルタントなど定期的に立ち寄る人が、何かあったら弁護士につなげてくれたりしてもいい。あとは内輪のブログなど情報プラットホームを作ったりして、トラブルがこじれる前に早期発見・早期治療ができる体制作りが重要になってくると思います。
嵩原:そうですね。どのような情報プラットホームなら参加しやすいか、また参加者がどこまで相談できるかという実際のニーズを確かめて、まずは関西周辺など目の届く範囲でそういう制度を作り込んでいきたいとも考えています。
嵩原:すぐ弁護士の携帯に電話してくる人ですね(笑)。あまり弁護士を上手く活用していない方の特徴は、まず自分で調べることなんですよ。でも、逆にまずは電話で弁護士に聞いてみて、それから疑問点があれば更に調べる方がはるかに効率的です。弁護士は病気以外ならすべての相談を聞けます。
必要に応じてカウンセリング的なことを行うこともあります。自分の専門外だった場合や、もっと適切な専門家がいると判断した場合には、適切な専門家につなぐこともあります。とにかく、できるだけ一緒に問題解決を目指すよう心がけています。
嵩原:こちらのアドバイスを聞いてくれない人ですね。正確に言うと、1時間黙って僕の話を聞いているんだけど、実際に行動に起こすとき全く違う選択をしてしまう人。分からなかったら説明しますし、疑問があればその場で言ってもらえれば更によい解決を模索できるのですが、『分かってる』『そうしてみます』と言っておいて、結局全く別の行動をしてトラブルになってしまった場合にはとても残念な思いになります。
依頼者の方の“ありがとう”という言葉がうれしいんです
嵩原:そうですね。僕らも、維持経費などの費用は計算してやっていますが、本当はお金のことなんか気にしないでやりたいんですよ。弁護士はいわば「法律職人」ですが、たぶん、「職人」と呼ばれる人はみんなそう考えていると思います。
100万円収入が入るからというより、依頼者の方のありがとうという言葉がうれしかったりしますからね。たとえ相談だけで終わったとしても、お役に立てるならうれしいんです。まあ、経営的には頑張らないといけないですが(笑)。
嵩原:ありますね。それを更に拡大していきたいですね。先ほどもブログとか、情報プラットホーム的なものがあればと言いましたが、税理士さんや他の専門家も参加するLINEやフェイスブック、メーリングリストなどの情報プラットホームをつくり、そこに登録者がちょっと相談したいことや心配事などを書き込み、それに対してそれぞれの専門家がそれぞれの立場でその「心配事」を見て、気になる点を簡単に指摘するなどできる、というような仕組みがあればいいですね。そのような仕組みに賛同してくれる人が多くいるのであれば、実現したいと思います。
嵩原:そのような情報交換の場を作れたら、たとえば僕の目でスルーしていたものを、税理士さんが税理士の立場で問題を指摘したりすることもあるでしょうし、それを見ることで僕も勉強になります。または、税理士さんがスルーしたものにファイナンシャルプランナーの方がストップをかけてきたりとかもあるかもしれませんね。
「参加者の心配事の解決」だけでなく、「回答する専門家」も「他の専門家の視点を学ぶ」ということにもつながる訳ですよ。僕が所属している大阪弁護士会の刑事弁護委員会というグループにはメーリングリストがあって、みんな質問をバンバン出すのですが、そこにそれぞれの弁護士がその問題への対処法や自分の経験談などを書き込むんです。
質問を出した人はもちろん助かるのでしょうが、それ以外のメーリングリスト参加者もただ見ているだけでかなり知識や経験が入ってきます。そのようなものを専門家横断でつくれないかなというイメージです。
嵩原:法律で相談するという概念を捨てて、どこに相談するか迷ったら、とりあえず弁護士に聞いておけば、90%は当たります。あとの10%はちょっと法律の問題とは違ったりするのですが、悩んでいるよりも、とりあえず気楽に相談してください。過去の成功事例などもたくさんご提供できます。
法律は社会のルールなので、解決できないこともありますが、そのルールを知っている僕たちを信用して何でもぶつけてもらえればと思います。