残された家族を守るためにできること
2016.08.25
受ける側の立場から医院の相続を考えるVol.1
今回は、万が一の際、残された家族を守るために、生前に家族のためにできる医院の相続対策についてお伝えします。
①医院に多額の借金がある
事業のための借り入れであれば、医院を続けることで返済が可能であったり、医院を売却したりすることによって精算が可能な場合も多く、個人的な借り入れに比べて相続でもめることは少ないのですが、事業借入は団信(団体信用生命保険)なしで組まれている方も多いため注意が必要です。
個人的な借り入れも含めて、自身に万が一のことがあった場合に、返済義務が残るのか否かを確認し、残された家族に借り入れの負担が行かないよう対策を講じましょう。
団信の代わりに借り入れ相当額の生命保険に加入する方法が一般的ですが、現在マイナス金利の影響で銀行の貸し出し金利も非常に低くなっていますので、この機会に団信ありのものに借り換えるのも有効です。
②知人などの連帯保証人になっている
連帯保証人は借りた本人とほぼ同等の責任を負うため、いきなり債権者から支払いを求められても、まず借りた本人への請求を求める権利(=催告の抗弁権)も、主たる債務者の財産差し押さえを求める権利(=検索の抗弁権)も有しません。
上記2つの権利を有する(単純)保証人とは全くの別物なのですが、名前が似ていることで混同されている方も多いため、この機会にその違いを押さえておきましょう。
注意すべきは、連帯保証人が亡くなっても返済をしなくて済むようにはならないということです。その債務は、相続人に引き継がれます。
借金も連帯保証人も家族に知らせておらず、本人しか知らないことが多いため、亡くなった後で、わかるケースも多く見受けられます。
金額が多額であれば相続財産が減るだけでなく、相続放棄が必要になります。ただし、その相続放棄には自身が相続人であることを知ってから3ヶ月という期限もあるのです。
すべての相続が終わった後に連帯債務が発覚したり、期限の3ヶ月を過ぎてしまったりして、相続放棄が認められなければ、残された家族の人生を狂わせることにもなりかねません。
相続を受ける側の立場から考えると、多額の借金や連帯保証債務の存在が死後に発覚してしまうと、何の対策も心構えもできませんので、言いにくくても事前に伝えてもらえた方が、自身で準備もでき、万が一のことがあっても慌てふためくことも回避できるものです。
もし今回の内容に心当たりのある方がいらっしゃれば、万が一の際、残された家族を守るために、医院の相続についてどのようにしたらいいのか、いつどのように伝えるべきか、これを機会に考えてみることをおすすめします。