「医業継続に係る相続税・贈与税の納税猶予等の特例措置」とは
2016.02.29
医院継承と相続Vol.6 -法人の継承方法-
その際に、平成26年度税制改正により、平成26年10月~平成29年9月までの期間限定で適用されている「医業継続に係る相続税・贈与税の納税猶予等の特例措置」がありますので、そちらをご紹介しましょう。
出資持分のない医療法人へ移行する場合の特例ですが、そもそもどのような特例措置なのでしょうか。
まず、今回の特例措置はあくまでも任意の選択であり、強制力はありません。
一般的に持分ありの旧医療法人の方が有利と耳にされたことがあるかと思いますが、そんな中で、今回の特例を利用するメリットとは何なのか解説していきます。
特例が医療法人の相続に役立つ可能性がある
前提として、持分ありの旧医療法人には、特に出資持分が増加している場合、相続時又は出資持分の払い戻し請求権が行使された時に、支払い余力がなく、医院経営そのものの継続を困難にしてしまう可能性があります。
その原因として、医院資産の大半が医院の土地や建物、医療機器であり、流動資産が少ないケースが多いということが挙げられます。
それをふまえた上で考えると、理事長が突然亡くなってしまった場合などは、今回の特例を使うことで、相続税支払いの猶予や、持ち分のすべてを放棄した場合の猶予税額免除、出資分を払い戻すための融資制度などのメリットがあります。
相続税を支払う金銭的余裕がある場合は問題ありませんが、払うために相続人が持分の払戻請求をしたときには、法人経営に支障をきたすこともあるからです。
今回の特例のメリットと注意点
このようなケースにおいては、移行前に理事長が亡くなった場合でも、相続税の申告期限までに、移行計画の認定を受け、相続人が持分の相続税の納税猶予の手続きをしていれば、最大3年(移行計画の認定日から3年以内)の納税猶予期間がもらえ、相続持分を移行期限までに放棄すれば、猶予分を支払わなくてもよくなるのです。
ただし、相続発生から10ヶ月という申告期限や持分を持っている社員の持分放棄により、法人に贈与税が掛かったり、退社する社員からの持分払い戻し請求が来たりする可能性があるなどのネックもある上に、そもそも持分なしの新医療法人に移行させると、解散時の残余財産分配請求権もなくなります。
平成29年9月30日までの期間限定とはいえ、あせらずに税理士などの税務の専門家と相談の上、検討されることをお勧めいたします。
■連載記事
【医院継承と相続Vol.1】継承の基本 暦年課税(生前贈与)と相続時精算課税
【医院継承と相続Vol.2】何を誰に引き継ぐのか
【医院継承と相続Vol.3】いつ、医院継承をしたらいいのか
【医院継承と相続Vol.4】親族に医院を継承する場合に考えておくべきこと
【医院継承と相続Vol.5】親族以外の人に医院継承する場合に気をつけたい4つのポイント
【医院継承と相続Vol.6】法人を継承する場合の期間限定の特例措置