継承の基本である暦年課税(生前贈与)と相続時精算課税
2016.01.18
医院継承と相続Vol.1 暦年課税(生前贈与)と相続時精算課税
「まだ気の早い話だ」という方もいらっしゃるかもしれません。しかし、10年後の医院の姿をイメージしておくことは経営者としての責務です。
財務状況、事業規模、そして自身のコンディション。病気になったり、突発的な事故に巻き込まれたりしたときに、医院は、残されたスタッフはどうなるでしょうか。
縁起でもない話ですが、そうした事態の発生を想定しながら備えておくことも、経営者の役割なのです。
・誰が医院を引き継ぐのか
・財産の処分はどうするのか
・相続税対策はできているのか
これらが明確になっているでしょうか。たとえば、ご子息をはじめとした親族が引き継ぐケース。
そもそも、相続税対策がなされていなければ、税金を支払うために医院の土地や建物を売却せざるを得ないかもしれません。そうなれば、医院継承どころではありません。
そこで考えなければならないのが、『生前贈与』です。院長が存命のうちに、あらかじめご子息へ財産を移転することにより、相続税の対象となる財産を減らしておく、ということです。
生前贈与の非課税枠を活用する
財産を贈与するにも贈与税が発生しますが、1年間の贈与額が110万円以下であれば非課税となります。つまり、110万円以下の資産を複数年に渡って贈与することで、節税効果があるということです。これが、『暦年課税』といわれるものです。
当たり前の話ですが、土地や建物、高額な医療機器などの資産額が多ければ多いほど、対策には時間(年数)がかかりますが、相続開始前3年超の贈与であれば相続財産に含まれないため相続財産を少なくできるメリットがあります。
相続時精算課税のメリットとデメリット
暦年課税の他に、『相続時精算課税』というものもあります。これは暦年課税と違い、2,500万円までの贈与には贈与税がかからず、2,500万円を超える部分に20%の贈与税が課される、というものです。
相続時精算課税を選ぶメリットとしては、1度に多額の贈与ができるため、短期間で財産移転がスムーズにできるという点があります。
また、相続税で再計算されるので必ずしも相続税の節税対策になるとは限りませんが、贈与時の金額が相続時に加算されるため、値上がりする見込みのある財産であれば、値上がり分の相続税対策になります。
ただし相続時精算課税には、贈与者は60歳以上の親または祖父母、受贈者は20歳以上の子または孫という年齢要件があります。さらに、一度相続時精算課税を選ぶと、暦年課税に戻すことはできず、暦年課税のように相続財産を減らす効果もありません。
他に、この制度を利用した不動産の贈与の場合は、相続時に登録免許税が従来の0.4%から2.0%に上がり、不動産取得税も発生するというデメリットもあります。まずは専門家に相談するのが賢明といえるでしょう。
・生前贈与は相続税対策に有効だが時間(年数)がかかること
・『暦年課税』と『相続時精算課税』 のどちらを選ぶにせよ、メリット・デメリットがあること
・専門家の協力が必要不可欠であること
これらを考えると、今の時点で何をしておくべきなのかが見えてきますよね。いざという時に慌てないためにも、家族やスタッフを守るためにも「医院継承」に関して、今から準備を進めていくことをオススメします。
■連載記事
【医院継承と相続Vol.1】継承の基本 暦年課税(生前贈与)と相続時精算課税
【医院継承と相続Vol.2】何を誰に引き継ぐのか
【医院継承と相続Vol.3】いつ、医院継承をしたらいいのか
【医院継承と相続Vol.4】親族に医院を継承する場合に考えておくべきこと
【医院継承と相続Vol.5】親族以外の人に医院継承する場合に気をつけたい4つのポイント
【医院継承と相続Vol.6】法人を継承する場合の期間限定の特例措置