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遠隔治療の時代が到来!? 未来の技術5G

2019.07.06

5GでIoTが加速する、医療現場での活用事例

自動運転・遠隔手術などの未来的な技術や、米中衝突の問題で日々注目を集めている「5G」。日本でも2020年春には5Gのサービスが順次開始する予定です。
5Gは第5世代移動通信システムの略で、これまでも3Gになれば速くなる、4Gでスマホが使えるようになって便利になる、というように時代とともに移動通信システムの世代が進んできました。
世代が進めば通信速度が早くなるという理解しやすいメリットがありますが、5Gはどのような技術革新をもたらしてくれるのでしょうか。

4Gから5Gへ

まず、5Gは「超高速」「超低遅延」「多数同時接続」を特徴としています。5Gは4Gと比較すると100倍の実効速度を実現しているため、医療分野でも大きく注目されています。
2010年に4Gが開始してから約10年が経過し、「IoT」という言葉を耳にするようになって久しいですが、この10年間でネットワークにつながる機器の数が非常に増え、IoTが普及したことで低遅延な通信の必要性が増してきているのです。
4Gでは10ms(0.01秒)ほどの遅延がありましたが、5Gでは1ms(0.001秒)ほどの超低遅延となっています。低遅延だと、どのようなメリットがあるのでしょうか。
たとえば、自動運転車が高速道路を時速100kmで走ったとします。自動運転の仕組みは走行中の映像をもとに、コンピュータの遠隔操作により実現しています。
時速100kmにおいて、自動車は1秒間に約27.8m進みますので、通信遅延によって、4Gは約27.8cm、5Gは約2.8cmの誤差が生じる計算になります。これは、平時であればどちらも問題のない誤差ですが、前方の車の急停車や急な割り込み、飛び出しが発生した場合、この誤差の違いが重大な事故を引き起こす原因になってしまいます。
このように遠隔操作の実現を目指す場合、低遅延な通信が必須なため、IoTの分野で5Gへの注目が高まってきているのです。

次世代通信「5G」実効速度100倍の秘密

4Gまでのアンテナは「MIMO」(マイモ)という技術が利用されています。これに対して、5GではMIMOを発展させた「Massive MIMO」(マッシブマイモ)という技術が利用されています。
実効速度100倍の秘密は、電波を送信するためのアンテナ数がMIMOでは2~8本に対し、Massive MIMOでは最大128本と大幅に増加しているからという理由です。
アンテナ数の増加に一定方向に指向性の高いビームフォーミングという技術を組み合わせることで、スマホやタブレットなどの受信機器がより正確な信号を受けることが可能になっているのです。
素晴らしい技術に見える5Gですがデメリットもあります。5Gは28GHz帯の電波を利用しているため、4Gの周波数帯よりも直進性が強く、建物内や社内では電波が弱まる傾向があります。
この弱点に対して、ドコモ・AGC・エリクソン3社の共同で開発された「ガラス一体型5Gアンテナ」は、小型・薄型の透明ガラスアンテナのため、景観を損ねることなく利用できるという特徴があります。
2019年4月~5月、時速30kmで走行する車両の窓ガラスにガラス一体型5Gアンテナを貼り付け実証実験を行った結果、基地局から半径約100mのエリアで、平均1.3Gbpsという高速な5G通信に成功しました。

5Gが医療技術の革新をもたらす

5Gの活用事例にはどのようなものがあるのでしょうか。
東京女子医科大学とNTTドコモが共同で、スマート治療室「SCOT」(Smart Cyber Operating Theater)と5Gを組み合わせた「モバイルSCOT」というシステム構築の研究を進めています。SCOTとは治療室内の様々な医療機器をネットワークでつなぎ、病院内の管理システムや治療室外の医師との連携ができるシステムです。
このSCOTに5Gを組み合わせたモバイルSCOTは遠隔治療が実現可能で、いつどこにいても高水準で安全な医療が受けられるようになります。たとえば、モバイルSCOTと車で移動中の手術の名医が持つタブレット端末を5Gで繋ぐことで、名医がタブレットでモバイル治療室のデータを見ながら遠隔で、実際手術を行う執刀医に支持を出すということが可能になるのです。

また、手術支援ロボット「ダ・ヴィンチ」(da-Vinci)に5Gの低遅延通信が組み合わされば、遠隔手術が可能となります。5Gが普及し、通信環境さえ整っている地域であればどこにいても、手術の名医の執刀を受けることができるようになる未来も近いかもしれません。

遠隔治療では高精細な画像が求められ、通信遅延によるタイムラグが許されません。5Gによる超高速・超低遅延の通信は遠隔治療において必須の技術といえるでしょう。
今後、遠隔治療の発展により僻地医療や災害医療に対しても、高水準な医療を提供可能になることが期待されています。

未来の医療現場における5Gの役割

最後に海外の事例ですが、すでに5Gによってもたらされた成果をご紹介します。
・スペイン・バルセロナにて2019年2月、世界初5Gによる手術の遠隔指示に成功
・中国海南省にて2019年3月、世界初5Gによる世界初の遠隔脳外科手術に成功(患者は3,000km離れた北京で手術を受けた)
・中国広東省にて2019年4月、世界初5G遠隔心臓内視鏡手術に成功

世界で次々と成果を出している5Gが普及するにつれ、日本の医療現場に様々な変化をもたらすことが予想されます。日本国内でも5Gの今後の展開、とりわけ医療分野に影響する技術革新への期待は高まるばかりです。

執筆者:DR’S WEALTH MEDIA編集部
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