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不動産の管理や相続対策につながる民事信託は、親が元気なうちに!

医師 民事信託

2016.11.21

民事信託の活用法Vol.1

親の相続対策には、認知症等になり判断能力がなくなっている状態で作成した遺言は無効となるため、親が元気なうちに行ってもらうことが必要不可欠です。方法手段としては遺言が一般的ですが、今回は遺言では実現できないことにも対応する信託制度についてお伝えします。

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■信託について

信託とは、不動産などの財産の処分や管理についての制度です。信託には登場人物が3人います。

①委託者(自分の株や不動産などの財産の管理・処分などを受託者に依頼する人)
②受託者(委託者との信託契約の内容に基づいて委託者の資産を管理・処分などを行う人)
③受益者(信託によって給付を受ける人)

信託には、商業信託(信託会社などが行う営利な信託)と民事信託(非営利な信託)があります。

信託できる財産は、金銭、不動産、株や国債などの有価証券、金銭債権、特許権などの知的財産権などです。

どのように使うことができるのかというと、例えば、父親が所有している賃貸マンション1棟を長男名義にして、長男が管理をします。家賃収入は父親が生きているときは父親が受け取るという信託の形にすると、父親が委託者かつ受益者になり、長男が受託者となります。信託契約後に父親が認知症になっても事前に決めておいた計画に基づいた賃貸マンションのメンテナンスや相続対策をすることができます。

さらに、父親が亡くなった後、家賃収入は妻が受け取り、妻が亡くなった後は長男が受け取るという形にするなど、財産の承継先を数代先まで決めておくことができるのも信託の特徴です。

遺言では〇〇を▲▲に相続させるという指定までしかできませんので、信託で財産の相続の順番を決めることができるメリットがあるのです。

■民事信託をする場合の注意点

1.自分の財産の管理や処分などを任せる人(受託者)は信頼できる人に頼みましょう。受託者には委託者に代わって財産を管理するに足る判断力が求められるため、未成年者又は成年被後見人もしくは被保佐人は受託者にはなれません。また、法人を受託者にすることはできますが、その場合は信託をする財産管理を目的とするための法人になりますので、注意が必要です。

家族が受託者になる場合は、信託契約で定めた管理などをきちんと行っているのか分からないことがあります。そこで、受託者の監督をしてもらうために信託監督人を設けることも検討したいところです。

※信託契約書は公正証書で作る方がトラブル防止になり、また証拠能力・信頼性が高まります。

2.信託をする財産は受託者への名義変更が必要になります。上記の事例のように委託者と受益者が同じときには贈与税はかかりません。また、信託財産が不動産で信託設定時に名義変更をした受託者に、不動産取得税や譲渡所得税はかかりません。ただし、不動産を信託する場合の登録免許税は発生し、土地信託は固定資産税評価額の1000分の3(平成29年3月31日まで)。建物は固定資産税評価額の1000分の4です。

3.今回のように財産を信託した委託者と給付を受ける受益者が同じときは、委託者が確定申告をします。つまり、今回の場合は、賃貸マンションの名義は長男に変わっても家賃収入を得ているのは父親なので、父親が今まで通り確定申告をすることになります。

いかがでしょうか。遺言では実現できないことができる民事信託制度。信託の内容は自分で決めることができますが、仕組みが少し複雑です。検討されるときは、税金のことも含めて、信託に詳しい専門家に相談するとよいでしょう。

執筆者:DR’S WEALTH MEDIA編集部
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