財産分与は公平に!
2016.08.29
受ける側の立場から医院の相続を考える Vol.2
今回は、子どもから見た場合の親の遺言と、やってほしくない財産分与についてお伝えします。
⇒開業医が遺言書を作成しておくべき6つのパターンはこちらから
遺言の種類、ご存知ですか?
遺言で一般的なものは、「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2つです。
子どもから見ると遺言は公正証書遺言の方がありがたいものです。なぜなら、公正証書遺言は公証役場で遺言の原本が保管されているので、紛失するおそれがありません。
また、書いた人が亡くなった後に、相続人が公証役場に行き、亡くなった人が公正証書遺言を作っていたかどうかを調べることができます。そして、公正証書遺言は相続人たちが内容に異議がなければ、すぐに内容を実行することができます。
一方、自筆証書遺言は保管場所を探すのに手間と時間がかかることがあり、結局見つからなかったということもあります。また、家庭裁判所に検認の手続きする必要があり、遺言の内容を実行するまでに時間がかかります。
以上の理由により、相続人にとっては、探す手間が少なく、内容をすぐに実行できる点で公正証書遺言の方がありがたいものなのです。
不動産の相続についての遺言
遺言には、誰に何を分けるのかという財産の分け方を書きます。親心としては、子どもたちに平等になるようにしたいもの。それゆえ不動産を共有させる内容を書くことがあります。
例えば、自宅を兄と弟で各々2分の1ずつ相続させるというような内容です。一見、平等のようにみえますが、実は、問題があります。
相続した自宅を売却しようと思ったとき、兄弟が同意しないとできません。また、兄弟で相続した後、弟が亡くなって、その子ども2人が相続した場合、兄と弟の子ども(兄から見ると甥姪)が自宅を共有している状態になります。つまり、売却するときは、この3人の同意がないと売ることができないのです。
このように相続人たちが遺言の内容に納得できないときは、相続人同士で話し合って、親の遺産の分け方を決めることになります。それではせっかく作った遺言の意味が薄れてしまいます。
親は、平等を意識するあまり、相続した後のもめごとまでは想像しにくいことがあります。不動産を複数お持ちの場合は、自宅は長男、賃貸マンションは次男というように不動産を一人ずつに相続させる方が後々のもめごとは回避しやすくなります。
ただ、自宅と賃貸マンションの評価額の差が、兄弟間のもめごとの火種となる場合ありますので、不動産の評価額を含めて、財産全体をどのように分けるのかを考える必要があります。
相続に関する思わぬ火種“生前の援助金額”
相続財産に加えて、親が生前に行った子どもたちへの援助金額に違いがあれば、それも相続の火種になりえます。
例えば、長男の留学費用や医院開業資金を親が出したが、長女は大学卒業後、会社員になったため援助額が極端に少なかった場合です。
この不公平感を親が生きているときは内に秘めていても、親が亡くなった後の相続で露呈することがあります。親は、子どもたちへのお金の使い方にひいきはなかったと思っていても、子どもたちはそうは思っていないことがあるのです。
遺言で財産の分け方を決めるときには、生前の子どもたちへの援助金額を振り返り、考えることが大切になります。そして、不公平感が残る財産の分け方となってしまった場合は、遺言にその理由を書いておくと子どもたちも理解しやすく納得しやすいでしょう。
いかがでしたでしょうか。遺言を書くときは、公正証書遺言にしてもらい、不動産の共有という分け方は避けて、生前の子どもたちの不公平感を想像して財産の分け方を考えてほしいというのが、子どもの本音なのです。