開業医のミカタ

〜節税「キホンのキ」〜

2019.02.13

医療法人化や資産管理会社の設立、法人保険、償却資産の活用、不動産投資などのスキーム

新年明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い致します。2月に入ると多くの方が確定申告に向けて準備をされる時期ということもあり、節税に関するご相談が増えてきます。医療法人化や資産管理会社の設立、法人保険、償却資産の活用、不動産投資などの若干テクニカルなスキームについて教えて欲しい、やってみたいと言うお声も耳にしますが、実際に申告書や決算書を拝見すると意外にも基本的な節税をやっていないという方が多くいらっしゃいます。前回の記事では資産形成の基礎についてお伝えしましたが、今回は節税の基礎、「キホンのキ」をお伝えしたいと思います。

公的制度の活用

冒頭でお伝えした様に節税を考える時にテクニカルな節税スキームの導入から検討される方がいらっしゃいます。確かに法人化などの節税スキームを活用すれば大きな金額を節税することが可能ではありますが、そういったスキームというのはホームランのようなもので誰でも簡単に取り組めるものではありません。皆さん、色々と情報を収集しているかと思いますが、いきなりホームランを狙うよりもまずは公的制度の活用を検討されることを私はお勧めします。最近拝見したある開業医の方の申告書を見ると小規模企業共済に未加入の方や確定拠出年金を検討したことがないという方がいらっしゃいました。この様に公的制度に加入していないという方は、意外と多くいらっしゃいます。公的制度を活用した節税は国が認めている方法であるため、加入も簡単で効果も高く、導入しないのはもったいないお話です。加入していない方に理由を尋ねると以下の2つの理由が出てきます。

・制度自体がよくわからない。
・税理士が教えてくれず、知らなかった。

確かによくわからないことを始めるのはお勧めできませんが、意外と簡単ですので、しっかり学びましょう。税理士が教えてくれないのはむしろ当たり前だと思ってください。税理士は節税のプロではなく、税金を納めさせるプロなのです。中には経営や節税に強い税理士の方もいらっしゃいますが、皆がそうではありません。今回は公的制度の代表的な4つの制度について簡単に纏めましたので皆様の参考にしていただければ幸いです。

キホンのキ その1
小規模企業共済

小規模企業共済とは個人事業主の為の退職金積立制度です。年収1800万円以上の方の場合は税率が50%(所得税、住民税)ですので、満額積み立てると42万円が還付されます。つまり年間四12万円で84万円を積み立てられるのです。30年間積み立て、運用益がゼロとしても1260万円を拠出し、2520万円の退職金が受け取れる計算になります。リターンを割り戻すと年利4.2%の複利で運用していた場合と同等の利益を得られます。受け取りの際も分離課税の退職所得となり、退職所得控除が適応されるので積み立ててお得、受け取ってお得な制度です。予定利率は1%でさほど運用には期待できませんが、節税効果だけでも非常にお得な制度です。ただし、途中解約になると元本割れする場合もあるので、注意しましょう。

キホンのキ その2
国民年金基金

個人事業主の国民年金の上乗せ年金の制度です。小規模企業共済と同じく掛金全額が所得控除になります。以前は予定利率が5.5%であった時期もあり、その頃に加入されていた方にとってはお得な制度ですが、昨今は運用成績の低下と加入者不足によって、支払う為の責任準備金が不足しています。そのため、新たに加入するのはあまりお勧めしていません。その証拠に最近はテレビCMが増えていて加入者獲得に必死になっているのが見てわかります。さらに途中解約が出来ないというデメリットもあります。

【公的制度一覧表】

制度 小規模企業共済 国民年金基金 確定拠出年金
(401k、iDeCo)
経営セーフティ共済
(倒産防止共済)
掛金上限 84万円/年
(全額が小規模企業共済等掛金控除)
81.6万円/年
(全額が社会保険料控除)
81.6万円/年
(全額が社会保険料控除)
240万円/年
(全額経費)
運用 責任準備金の準備率:約100% 責任準備金が不足
準備率:約80%
加入者自身が運用
運用益については非課税
なし
予定利率 1% 1.5% 各自のポートフォリオ次第 なし
期間 事業の廃止まで 60歳〜65歳まで 60歳まで 上限の800万円を積み立てるまで
受取 一括、分割を選択可 終身年金、確定年金を組み合わせ 一括、分割を選択可 解約手当金、一時貸付
受取時課税 退職所得、公的年金等の雑所得 公的年金等の雑所得 退職所得、公的年金等の雑所得 事業所得
途中解約 可(減額可) 不可(減額可) 不可(減額可) 可(減額可)
概要

キホンのキ その3
確定拠出年金(401k、iDeCo)

前述の国民年金基金に変わる退職金積立の制度です。この制度が始まったことが、先ほどの国民年金基金の加入者が減った要因の1つと考えられています。個人開業医の場合、国民年金基金と両方加入することも出来ますが、同じ控除枠を使っているため合わせて81.6万円までという上限があります。他の制度と違い医療法人で加入できるのも特徴の1つで、運用は自身で投資信託等の商品を選択して積み立てていく形式で、その運用成績に応じて将来受取れる金額が変化します。上手くいけば他の制度と比べて圧倒的に有利になります。運用に自信のない方には元本保証の定期預金なども用意されています。定期預金を選択したとしても小規模企業共済と同じく、節税効果によって十分なメリットを享受できます。掛けてお得、運用してお得、受け取ってお得な三度美味しい制度です。公的制度の中では最強の制度だと考えていいでしょう。ただし、途中解約ができないリスクがあるため手元資金との相談が必要ですが、銀行にお金を眠らせておくくらいなら加入されることをお勧めします。

キホンのキ その4
経営セーフティ共済(倒産防止共済)

他の制度と同じく掛金の全額が所得から差し引かれるので税金は還付されます。他の制度と違うのは運用はされず、受取時は税制優遇もなく、益金として課税される点です。これは、以前ご説明した課税繰り延べ型の代表的な手法です。そのため、所得が高く税率の高い時に支払い、医療法人化などにより所得が下がるタイミングで解約をするといった戦略が必要です。こちらも途中解約すると元本割れする場合がありますので、他の制度以上にしっかりと出口戦略を立てておきましょう。

公的制度は加入も手軽で費用対効果は大きいのですが、掛金に上限があり、大きな金額の節税は出来ません。ただ、いきなり医療法人化や償却資産の活用など大きな変化を伴う取り組みをされる前に一通りの公的制度を検討し、その間に他のスキームを導入する準備をしていければ効果的ではないでしょうか。まずはホームランを打つ前にヒットを積み重ねましょう。

まとめ

節税を考える際には必ず目的を確認してください。小規模企業共済や401kなどは退職金の積立であるという性質上、将来のストック資産を作る目的での活用として有効です。他にリタイアの準備をする際にはフロー収入に着目し、ストックとフローのバランスを考えましょう。目先の節税だけでなく長期で考えることが成功の秘訣です。そして何より節税や退職金の準備もあくまで手段でしかありませんので最良の手段方法を活用し、どの様に人生を豊かに生きるかを考えることこそが真の節税の姿であると私は考えております。2018年は思う様に節税できなかった方も2019年は満足いただける一年となるように今年も良い記事を執筆し続けたいと思っております。

■プロフィール
原田 明伸(はらだあきのぶ)

31歳 大阪府松原市出身
[ ●プライマリー・プライベートバンカー(日本証券アナリスト協会認定) ●宅地建物取引士●2級ファイナンシャルプランニング技能士]
人生設計のパートナーとして、皆さんが豊かで感動的な人生を送る為のサポートを出来るように、これからも良い情報をお伝えしていきます。よろしくお願いします。