開業医のミカタ

手元にお金を残せてこそ節税

2018.11.01

節税の仕組み

紅葉も見頃を終え、多くの医師が税金対策を考え始める季節がやってきました。
思った以上に売上が上がったり、収入が増えたりすることは世間一般的には喜ばしい話ですが、高所得な医師にとっては納税という問題もあり、頭が痛い時期でしょう。
学会や忘年会に忙しく、毎年ギリギリの時期に税金対策に追われてしまっているという方も多いのではないでしょうか。
そんな忙しい医師の為に今回は所得税の節税についての重要なポイントを2つわかりやすく解説していきたいと思います。
 

ポイントその1 「節税」と「課税の繰り延べ」の違い

勘違いされやすいのですが、「節税」と「課税の繰り延べ」は全くの別物です。
「節税」とは税法上、その後も課税をされない事がポイントとなります。

例えば、「確定拠出型年金制度(iDeco、401k)」は拠出、運用、受取のどの場合にも非課税枠があります。
他にも「小規模企業共済」「国民年金基金」「生命保険料控除」などが挙げられます。
とてもいい制度ではありますがこれらは非課税枠に上限が設けられており(100%非課税ではない)、年間に数百万から数千万単位で納税をされている医師にとっては焼け石に水でしょう。

「課税の繰り延べ」とはその年の課税所得を下げ、下げた分を翌年以降に繰り越すことを言います。
太陽光発電やコンテナルームなどの減価償却資産を活用したものや経営セーフティ共済、法人保険などが代表的な物でしょう。
ただ、受取りや投資回収をする際には益金となり課税されてしまうので、出口戦略が重要となります。

経営セーフティ共済は分かりやすい一例です。
月額20万円、年間240万円を共済金として支払えば支払った全額が課税所得から控除されます。

詳しくはこちらの経営セーフティ共済サイトをご覧ください。
http://www.smrj.go.jp/kyosai/tkyosai/index.html
 

課税所得1800万円の場合

所得税:440.4万円

セーフティ共済控除後
課税所得1800万円ー控除240万円=1560万円
所得税:361.2万円

※復興特別所得税、源泉徴収、税額控除は除く。
※課税所得は各所得控除後の金額。
 
240万円を拠出することで所得税が79.2万円の減額となります。
税額だけを見れば、大きく下がっているかのように思えますが、実際には240万円を支払っているので、160.8万円が手元から無くなっています。
これを回収して初めて節税となります。経営セーフティ共済は自己都合解約であっても、40ヶ月以上納付していれば掛け金の全額が返ってきます。ただし、受け取りの際には益金となり課税対象となってしまうので、納付時の税率よりも安い税率で受け取らなければ節税にはならず、税率が高い状態で受け取ってしまうと逆に増税となってしまいます。
 

 

解約時に課税所得2500万円となった場合

■課税所得2500万円の場合
所得税:720.4万円

セーフティ共済の解約後
課税所得2500万円 + 解約手当金 240万円 = 2740万円
所得税:816.4万円
 
解約時には96万円増税しているのでトータルで16.8万円の増税となってしまいます。
これは課税の繰り延べの失敗の一例です。
 

解約時に課税所得600万円となった場合

■課税所得600万円の場合
所得税:74.4万円

セーフティ共済の解約後
課税所得600万円 + 解約手当金240万円 = 840万円
所得税:129.6万円
 
解約時に55.2万円税金負担が増えていますが、トータルでは24万円の節税となっています。
 
この様に出口戦略を間違えると節税の為とやった事が仇となるケースもあります。
以前、太陽光発電も特例によって一括償却が認められていた時期もあり、流行りましたが出口戦略のないままにやってしまった為、今になって増税となり困っている話はよく耳にします。
日本の所得税は累進課税制度を採用しているので、稼げば稼ぐほど税率は上がりますが、これを逆に利用する事で税金を抑えることも出来ます。
大事なのは税率の高い所で損金を計上し、税率の低い所で利益を計上することです。
大きな規模になれば個人の所得だけではなく、法人を設立し法人で課税をさせる方法や海外法人を設立し海外の法人で課税させる方法もあります(日本の法人税の法定実効税率は約33%、香港の法人税は16.5%)。
 

ポイントその2 減価償却の罠

世間でよくある節税方法の一つに減価償却資産を活用した節税方法を謳っている業者も多く存在します。
先述した通り、出口戦略さえ整っているならば上手に節税することは可能ですが、これも注意が必要です。

減価償却の方法には定額法と定率法の2種類があります。
定額法とは毎年一定額を経費として計上し減価していく方法で、定率法とは一定の償却率で減価していく方法です。

償却率一覧表

資産毎に違いはありますが、定額法と定率法は初年度に選択する事が出来ます。
定率法の場合には課税の繰り延べをする事が出来ますが、定額法の場合は繰り延べにはなりません(一部償却期間が短い中古資産など除く)。
償却年数が17年の太陽光設備の場合、定額法の償却率は5.9%、定率法の償却率は11.8%となります。
太陽光発電は実質利回りが8%前後ですので、定額法であれば帳簿上の赤字とならず、増税につながりますが、定率法であれば最初の数年間は減価償却費の方が多くなるので減税となります。
 

販売価格が2000万円、実質利回り8%の太陽光発電所の場合

売上:160万円/年
減価償却費(定率法):236万円 → 76万円の赤字
減価償却費(定額法):118万円 → 42万円の黒字
 
ただし、定率法の減価償却費は年々減っていくので、いずれは増税となってしまうのです。
ここで課税所得が下がるタイミングであれば節税となりますが、事業所得や給与所得が下がらない場合には増税になってしまいますので、再度課税所得を繰り延べる、資産管理法人に譲渡するなどの対策が必要となります。
仮に定額法で赤字となる場合は実際の収支も赤字なので投資回収ができていません。

実際に赤字であれば当然に課税所得も下がりますが、その資産を節税目的で持ってしまう事は本末転倒となります。手元にお金を残せてこそ節税なのです。
 

まとめ

節税と言うと多くの方が興味を持つワードであり、多くの業者がセールストークとして採用しています。
それだけに罠の多い言葉であるのも事実です。メリットばかりを強調し、出口のない商品の販売を目的とした業者もいます。
読者の皆様にはぜひ節税と言う甘い罠に引っかかることなく、2つのポイントを押さえて、目的にあった方法で出口を明確にした戦略で上手に対策していただけると幸いです。

■プロフィール
原田 明伸(はらだあきのぶ)

31歳 大阪府松原市出身
[ ●2級ファイナンシャルプランニング技能士 ●宅地建物取引士]
人生設計のパートナーとして、皆さんが豊かで感動的な人生を送る為のサポートを出来るように、これからも良い情報をお伝えしていきます。よろしくお願いします。