開業医のミカタ

相続税を下げる為には生前に贈与してしまうのが手っ取り早いです。

2018.09.21

人生最後のイベント ~遺産相続~

 
「あらゆる生あるものの目指すところは死である」。
このフロイト博士の名言のように人は誰しもが人生の閉幕を迎えることになります。
最近は、終活やエンディングノートといった言葉を良く耳にするように相続人、被相続人双方にとって「相続対策」は大きな課題となっています。
遺産相続における課題は「相続税」と「遺産分割」の大きく2つに分かれます。
平成27年の税制改正で、相続税制度に大きく2点の変更がされました。

基礎控除額の引き下げと納税率の引き上げで、これにより相続税の納税対象が拡大し、その納税額も増えました。
今回は相続にかかる税金についてお話しします。

 

相続は2回ある

相続の課題を解決するには、一次相続(配偶者とお子様に対する相続)と二次相続(相続を受けた配偶者からお子様への相続)の2度の相続に対応させる必要があります。
一次相続の場合は配偶者特別控除として1.6億円までは非課税となりますが、二次相続の場合は基礎控除だけとなり、課税対象額が一気に増えます。基礎控除額の計算式は以下の通りです。

基礎控除額=3000万円+(600万円×法定相続人の数)

例えとして、二次相続の場合にお子様が2人で相続した場合の相続税を計算してみましょう。
仮に現金が1億円、死亡保険金が1億円、有価証券が1億円で遺産総額が3億円あったとします。死亡保険金には非課税枠が1000万円(500万円×法定相続人2人)あるので、9000万円が課税対象です。現金と有価証券は原則時価になりますので、おおよそ2億9000万円が相続資産となり、そこから基礎控除の4200万円(3000万円+600万円×法定相続人2人)を差し引いた2億4800万円が課税対象額となります。これを以下の相続税率の速算表に当てはめると1億1133万円もの相続税がかかる事になります。

 

 

家や土地の相続での注意点

先ほどの事例のように、現金や有価証券など比較的分割しやすい物であれば兄弟で分割してから現金で納付することが可能ですが、実際には先祖代々残された家や土地など分割しにくい物も相続資産には含まれています。ご実家は小規模宅地の特例が適用されますが、相続人が居住していない場合には適用要件を外れる場合があるので、注意が必要です。

保険屋さんが相続税対策で保険を勧めることもありますが、そもそもその保険が相続税の課税対象になりますし、所得税を払った後のお金で保険に入って相続資産が増えてしまうのであれば本末転倒だと私は思っています。

 

不動産を使った相続税対策

 
最近よく、大手の不動産デベロッパーが相続税対策で賃貸アパートの建設を進めています。確かに、不動産で相続税の対策は出来ます。
ただ、不動産ならなんでもいいのかというとそうではありません。相続税対策をする為のポイントは以下の2つです。

①実勢価格と相続税評価額に乖離がある場合
②建物が建築されていて賃貸されている場合

①不動産の相続税評価額は土地と建物で評価の方法が違います。土地については路線価を基準とし、建物は固定資産税評価額を基準に算出します。
実勢価格に対して路線価は約8割、固定資産税評価額は約7割と評価が低くなる傾向にあります。今は法改正がなされましたが、少し前に流行ったタワマン節税はこの評価額の乖離を上手に活用したスキームの一つです。

②賃貸に出している場合にも借地借家法に基づき、評価額を一定割合で減額出来ます。借地権は地域毎に30%〜90%、借家権割合は30%と決められています。

 
このように不動産を活用する事で相続税評価額を現金と比べて半分以下にする事も可能です。
しかし、稀に実勢価格よりも相続税評価額が高くなる逆転現象が起こる場合がありますし、そもそも将来的に入居が見込めない不動産であれば、いくら相続税が下がったとしても資産の実際の価値すらも下がってしまうので意味はありません。立地や物件の選び方に注意が必要です。

 

借金してまで買うの?

 
「団体信用生命保険(以下、団信)がついているので安心です」というセールストークで不動産を買う方もいらっしゃいますが、相続においては保険金がおりてしまうと相続税は増えます。相続税を圧縮したければ、現金を不動産に持ち変えるのが理想です。
ただ、終身保険などで高額の死亡保障を準備されている方に限っては不動産を団信無しで借入して買う方が借入残高の分だけ相続税の課税対象額が圧縮されるというメリットがあります。50代以上の方ですと若い頃にお宝保険と呼ばれる予定利率の高い保険に加入されていることもあるでしょう。

死亡保険金の非課税枠はさほど大きくないため、課税対象額が高額になってしまう場合は、それを減らす為に敢えて借入をする事も選択肢の一つとなります。

 

一番の対策は生前贈与

そもそも相続税を下げる為には生前に贈与してしまうのが手っ取り早いです。暦年贈与の非課税枠で1人あたり年間110万円までが非課税となるため、計画的に贈与していくのがいいでしょう。
ただ、暦年贈与の非課税枠だけでは贈与しきれなかったり、不動産の占める割合が多い場合は法人を活用したスキームの出番です。相続対策で法人を設立する時は株式会社を設立し、株式を贈与していくと、相続資産をキレイに分割することが可能となります。その時の株価は「純資産価格評価方式」により評価されますので、そのまま贈与したのであれば相続税評価額は下がらないため、相続税を下げる為には株価を下げる必要があります。

法人保険への加入や不動産の所有、役員報酬の増額など方法は様々ですが、ポイントは法人の純資産を減らすことです。極端な話ですが、帳簿上で債務超過の状態を作ってしまえば、純資産価格評価はマイナスですので株価は0円になります。価値の無いものを贈与しても贈与税はかからず、無税で贈与する事も理論上は可能です。
ただし、税制の改正などにより出来なくなる場合もあるため、顧問の税理士などの専門家と打ち合わせしながら進めましょう。

 

まとめ

高所得者、富裕層に対する課税は年々厳しさを増しています。
特に所得税と相続税は顕著で、稼げば稼ぐほど、残せば残すほど税金を払うことになるため、やり残しのない人生を生きる上でも相続税対策はとても重要な要素となります。
相続が争族にならない様にしっかりと準備していただければ幸いです。

■プロフィール
原田 明伸(はらだあきのぶ)

31歳 大阪府松原市出身
[ ●2級ファイナンシャルプランニング技能士 ●宅地建物取引士]
人生設計のパートナーとして、皆さんが豊かで感動的な人生を送る為のサポートを出来るように、これからも良い情報をお伝えしていきます。よろしくお願いします。