インタビュー

伝統的な“ドイツ製法”を頑なに守り、こだわり続ける

2019.02.06

ハム工房ジロー:矢島 二郎氏・矢島 慎介氏インタビュー

先代が大正14年、ソーセージ職人のカール・ブッチングハウス氏(ドイツ)からハム製造のノウハウを伝授され、その伝統的な製法を受け継いだ2代目が、後世に残すべく平成15年「ハム工房ジロー」として独立。
日本はおろか、ドイツでも失われつつある製法で、現在もハムやソーセージを作り続ける2代目とご子息の慎介氏に話を伺った。

 

【プロフィール】
●矢島 二郎 (やじま じろう)
1946年7月26日生まれ、神奈川県出身。先代の父のもとで修業後、平成15年「ハム工房ジロー」を設立。伝統的な製法を守り続ける。
 
●矢島 慎介 (やじま しんすけ)
1983年1月13日生まれ、神奈川県出身。大手ハム会社を退職後、現在は製造主任として、主に営業を担当する長男と共に父を支える。
 

「食」に関して貪欲で破天荒だった創始者

| 二代目はどのような経緯で家業を継がれたのですか?

矢島二郎氏(以下、二代目) 「私は当初、店を継ぐ気があまりなく、実は寿司屋になりたかったんです。しかし、父を知る人たちが『お前の親父はすごい技術を持っている。継がないともったいないぞ』と口々に言うので、それならばと思い、後を継ぐことにしたんです」

| では、すぐにお父様のお店で働きだされたのでしょうか?

二代目「いえ、まずは横浜で精肉店をしていた親戚のもとへ修行に行きました。そこで食肉の解体やスライスなどのノウハウを学んだ後に、父のところで働き始めたんです。当時、父は今でいうスーパーマーケットのような店を営んでおり、そこで自社製のハム・ソーセージの販売もしていました」

| 創始者であるお父様はどんな方だったのですか?

二代目「好奇心旺盛な人でした。大正時代、横浜で精肉店を営んでいた父は、その関係でドイツ人のソーセージ職人、カール・ブッチングハウス氏と知り合ったそうです。当時の日本は、まだハムやソーセージが一般的でない時代でしたが、食に対する探究心が人一倍強かった父は、彼の食肉加工技術に衝撃を受けたそうなんです」

| そこで伝統的なドイツ製法を学ばれたということですね。

二代目「はい。しかし、そこは〝職人気質の世界〟。当然、すぐには教えてもらえなかったそうで…。そこで父は〝盗み見〟するが如く、見よう見まねでなんとか美味しいソーセージを造ろうと試行錯誤を繰り返したそうです。そして、その努力が実り、直接アドバイスをもらえるようになり、ドイツ製法のハム・ソーセージ造りを始めたと聞いています」

長男が営業で次男が製造 二人三脚で歩んでいく

| 手間とコストがかかる伝統的な製法で造り続けるのは大変なご苦労があったのではないでしょうか?

二代目 「実は、自分たちが伝統的な製法で造っているということを最初から知っていたわけではないんです。私が独立して『ハム工房ジロー』を創業した時に偶然、老舗の得意先の方が『あなた方の製法の歴史はすごいですよ。一度調べたほうがいい!』と言われまして…たしかに父の技術はすごいとは思っていましたが、受け継いだ製法で、当たり前のように造っていたので、特別なことをやっているという意識はなかったんです」

矢島慎介氏(以下、慎介) 「私なんて、うちのハムの製造方法はドイツ人から云々…というのも、話半分で聞いていたくらいです(笑)」

二代目 「結果的に、私が独立し昔ながらの製造を続けたため、ドイツでも既に行っていない伝統的な技術が失われずに済みました」

慎介 「父が独立したのは、私も家業のことを考え、とりあえず農業高校に進学した時期でしたが、うちがそんな伝統的な製法で今も造り続けているハム工房だとわかり『しっかり引き継いでいかなくては』という意識が強く芽生えたんです」

| 現在、慎介さんはどのような仕事を担当されてらっしゃるのですか?

慎介 「私は主に製造を担当しています。以前、大手のハムメーカーで3年ほど働いていたのですが、そこの製法とうちの製法の違いは明らかでした。やはり、大手のハムは添加物の量が多いので『この商品を小さい子や、お年寄りが食べるのか…』と思うと怖くなりました。あらためて肉、塩、砂糖のみで造るうちの製法の素晴らしさを実感し、それを極めたいと考えたんです。もちろん、一概に大手の商品が悪いとは思っていません。添加物や保存料のおかげで、現在のように日本人が気軽にハムやソーセージを食べられるようになったという歴史がありますから」

| 今はご長男が営業を担当されているそうですが、「ハム工房ジロー」創設時は大変だったそうですね?

二代目 「はい。いくらすごい製法を行っているといっても、全然知名度がなく、大手に比べて価格も高い。そんなうちの商品を、少しでも多くのお客様の目に触れ、口に届くよう、ドイツ車ディーラーの催事に営業をかけ、そこで無料でふるまったりもしました。今では百貨店の催事も精力的に参加するようになり『茅ヶ崎にこんな伝統的な製法で今も造り続けているハム店がある』ということをみなさんに少しずつ知ってもらえてきています」

慎介 「弟の私が造った商品を兄が売るという二人三脚で、バランスが上手く取れていると思っています」

| 今後の展望などを教えてください。

二代目 「昔の伝統を守り続けることはもちろん大切ですが、人の味覚というのは時代によって変化していきますので、商品開発など新しいこともどんどんチャレンジしていきたいと思っています。そして、私たちのような国産の豚肉を使うハム工房が頑張ることで、国産の食肉の付加価値を高め、日本の畜産業を、もっともっと元気にしていければいいですね」

ハム工房ジロー

住所:神奈川県茅ヶ崎市高田5-2-26(茅ヶ崎青果市場内)
電話:042-498-1323
電話:0467-54-8604
時間:9:00~18:00
休み:日曜(8月、12月は不定休)
HP:http://www.ham-jiro.jp/index.php

 

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